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メコン圏に関する英語書籍 第6回「THE CAMBODIA LESS TRAVELED」(Ray Zepp 著)(3)
- 2000/6/10
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メコン圏に関する英語書籍 第6回「THE CAMBODIA LESS TRAVELED」(Ray Zepp 著) (3)
「THE CAMBODIA LESS TRAVELED」【英語】(Ray Zepp 著、BERT’s BOOKS(プノンペン)、1996年10月発行) (3)
前々回のカンボジア南部、 前回のカンボジア東北部・東部に続いて、今回は本書よりカンボジア中央部を紹介する。
ほとんどの旅行者にとって、カンボジアといえば、首都プノンペンとシアムリアップのアンコールワットであり、その他の地域に関心が向けられることはほとんどなく、当然カンボジアの地域情報も非常に偏ったものになっている古都から本書が書かれていると先に述べた。が、加えて本書の著者は、在プノンペンの外国人居住者があまりにプノンペン市街の一部しか徘徊しておらずプノンペンの郊外ですらあまり出かけていないことに対し、カンボジアにもっと違った形で触れて欲しいという気持ちを持っているようだ。そうしたことからプノンペンから週末や3連休などで気軽に行けるカンボジア中央部やプノンペン郊外の土地の紹介にも力を入れている。
本書は全部で16章からなるが、序文の後、一番先に紹介されているのが、チュロイチュンワー地区である。チュロイチュンワーと言ってもあまり知られていない地名かもしれないが、プノンペン市北方のトンレサップ川にかかる通称「日本橋」の正式名がチュロイチュンワーであるように、チュロイチュンワーは、プノンペン市街中心部のトンレサップ川対岸の、メコン河とにはさまれた地区である。メコン河沿いのレストラン街に行かれるために日本橋を渡られた方は非常に多いと思うが、プノンペン市街中心部から舟でも渡れるその対岸地区は観光客がほとんど訪れない地区であろう。かつてポルポト時代以前には富裕層が住んでいたこの地区には今も荒れ果てた邸宅の跡が無惨にも残っているが、チャム族が多く住んでいる地区でもある。本書は1996年に書かれており、現在では変わってしまった記述もいくつかあるが、それでも桜小学校やBOAT寺などがあるこの地区に関心を持つには、手ごろなガイドブックと言えよう。
メコンアイランドもプノンペンからの手軽な行楽場所として紹介されているが、これはパッケージツアーとして多少知られていると思うので、ここではあまり触れないが、1992年10月にフランスの民間会社経営でオープンしたクメール料理や手工芸・民族舞踊などを楽しめる「民族村」でメコン河を船で遡行してプノンペン市街から約1時間程度の距離にあるところだ。プノンペンからのメコン河対岸の地域であるカンダル州も、メコン河沿いのTameakから12km奥に入ったVihear Suorを経て、11km悪路を南下したところにあるKompong Popoelを訪れ、さらに先の非常な悪路をメコン河岸まで走っている。
プノンペンからバッタンバンに通じる国道5号線を約90kmほど北上したところにあるコンポンチュナンは、トンレサップ川に臨む町であり、プノンペンからシエムリアップに行くフェリー・ボートの途中寄港地にもなるところである。コンポンチュナンの町や郊外、さらにはプノンペンからのルート途上の見所が紹介されている。プノンペンからシエムリアップに向かう国道6号線上のトンレセン川(カンボジア北部のプリヤヴィヒヤ州からトンレサップ湖に流れる川)沿いにあるコンポントムの町については、町についてよりも、コンポントム州北東部にある真臘の都であったプレイコック遺跡を訪ねるところが参考になる。さらにこの省ではカンボジアのNGOや国際機関についての活動に触れており、地方住民の利益より私腹を肥したり、本当に地域にとって必要な活動よりプノンペンで目に見えやすい活動に偏りがちとと批判的な地元のガイドとのやりとりも注目に値する。(このガイドは、WorldFoodProgramの活動だけには好意的)
更にプノンペンから近いにもかかわらずほとんど紹介されることのないプレイベンについても、プノンペンからベトナムに向かう道路から途中で北上してプレイベンに入りそこで1泊、更にコンポンチャムで1泊してプノンペンに戻るという2泊3日コースの旅で、十分に紹介している。
尚、余談ではあるが、本書はクメールルージュの活動もまだ続いていた1996年に、Bert’s Booksから出版されたわけだが、既にこの発行者はプノンペンには居ない。本書以外にもカンボジアに関する面白い英文書籍を発行していたが、プノンペン中心部のワットプノン近くのトンレサップ川沿いにあった本屋兼ゲストハウスであった。1991年に国連ボランティアでカンボジアに来て以来、カンボジアに住んでいたオーナーのBert氏は、1997年のカンボジア内戦でタイに移り住んでしまい、今は別の人が同じ場所でゲストハウスを経営している。(名前も変わってしまっている)
カンボジアの行政区画
19の省と2都
<東北部>
・ラタナキリ州(州都バンルン)
・ストゥン・トレン州(州都ストゥン・トレン)
・クラチエ州(州都クラチエ)
・モンドルキリ州(州都センモノロム)<中部>
・プノンペン都
・コンポンチャム州(州都コンポンチャム)
・コンポントム州(州都コンポントム)
・コンポンチュナン州(州都コンポンチュナン)<南部>
・シハヌークヴィル都
・プレイヴェン州(州都プレイヴェン)
・スヴァイリエン州(州都スヴァイリエン)
・カンダル州(州都タクマウ)
・タケオ州(州都タケオ)
・カンポット州(州都カンポット)
・コンポンスー州(州都コンポンスー)
・コッコン州(州都コッコン)<西部>
・プリヤヴィヒヤ州(州都トゥベンミヤンチェイ)
・シアムリアップ・オッドーミヤンチャイ(州都シアムリアップ)
・ポーサット州(州都ポーサット)
・バッタンバン州(州都バッタンバン)
・バンテアイミヤンチャイ州(州都シソフォン)