メコン圏関連の趣味実用・カルチャー書 第10回「ベトナム雑貨と暮らすVietnamese Style」(石井 良佳 著)


「ベトナム雑貨と暮らす  Vietnamese Style」(石井 良佳 、2002年7月発行、河出書房新社)

<著者略歴>石井 良佳(いしい・よしか)
ベトナムの魅力にとりつかれ東京外国語大学在学中の1992年よりホーチミン市総合大学に留学。引き続き当地で総合商社に勤務し日本企業の誘致などを手掛ける。また学術調査や料理、美術などの取材を通訳コーディネート。その間1997年末に帰国するまで、ベトナム人家庭で生活。現在、日本、ベトナムをはじめアジア諸国の習慣、言語の繋がりに関する研究にたずさわるかたわら翻訳者として活動中。東京外国語大学ベトナム語学科卒業。九州大学法学部修士課程修了。(本書著者紹介より:発行当時)

 世界の熱い視線が注がれているベトナム雑貨の魅力を、「食のスタイル」「衣のスタイル」「住のスタイル」と、アオザイ、バッグ、ミュールなど身に付けるものから、箸、漆器、グラスなどの食器やインテリアまで、ベトナムスタイルの雑貨を3編に分けて紹介。この3編のベトナム雑貨紹介以外にも、コラム、エッセイ、ベトナムスタイルについて3人のインタビュー記事も掲載。とにかく掲載されているたくさんの各種ベトナム雑貨や、ベトナム雑貨が配されている生活空間のたくさんの写真が素敵で、優美で心地よいベトナムライフスタイル文化の魅力が非常に良く伝わってくる。更に巻末には、2002年発刊当時ではあるが、ベトナム現地取材協力店情報だけでなく、ベトナム雑貨を扱う日本全国各地ショップリストまで付いている、

「part 1  食のスタイル」では、青花(hoa lam ホアラム)と呼ばれている安南染付【 gốm hoa lam】、赤、緑、黄などで上絵付毛を加えた「紅安南」は16世紀に盛んに海外に輸出され、日本でも江戸時代の茶人に特に珍重されたという赤絵皿 【gốm hoa vân màu đỏ 】、セラドングリーン 【màu xanh gốm sứ 】、ベトナム南部ホーチミン市から30キロほど郊外に行くと、焼き物の産地として有名なソンべ省ライティウ村のソンべ焼き 【gốm sông bé 】と、4種類の陶器【ベトナム語 gốm】が取り上げられ、大小の皿、カップ、どんぶり、壺、茶器、醤油差しなど、多様な絵柄の様々な食器を紹介。

更に様々な食器の陶器以外でも、漆の技術は2500年程前からベトナムに存在するといわれ、ベトナム漆は季節による収穫差が少なく、野生種のほか栽培したものも多く、黒の光沢が良くでるのが特徴といわれる漆製品の雑貨(漆 sơn )や 本物の素材や美しいフォルム、手の込んだ細工の箸(đôi đũa)・スプーン( muỗng )・フォーク(nĩa)のベトナム雑貨、  刺繍デザインも目を見張るテーブルクロス( khăn trải bàn)やナプキン( khăn ăn  )、更には、 卵スタンドやナプキンホルダー、鍋敷きなどのキッチンアイテム( đồ dùng nhà bếp)や、竹やココナツの木の葉を編んだような台所用品(dụng cụ làm bếp )まで採り上げられている。

「part 2 衣のスタイル」では、当然ながら、アオザイ(áo dài)をはじめ、アオザイ風シャツとして、市場などでベトナム女性が一般的に着ている長袖で前開き、襟のない上着のアオバーバー(áo bà ba)や、襟の高いくるみボタンのついたチャイナ風のアオタオ(áo tàu )と呼ばれているシャツの衣服に加え、美しいデザインのハンドバック(túi xách tay) やサンダルのような履物のミュール(giày dép)も、それぞれ6頁ずつと、少し多めのページ数が割かれている。シルクを贅沢に上質な商品が豊富にあるストール(khăn choàng)や、アクセサリー(đồ trang sức)にも触れている。

「part 3  住のスタイル」では、ランプ(cái đèn)、クッション( gối đệm )、デスクトップアイテム( đồ trang trí trên bàn)と3アイテムしか登場してこないが、それ以外に、建物や部屋、庭先などの写真が、とにかく素敵で、その住環境と、それにぴったり合うベトナム雑貨・インテリアを揃えた暮らしへの憧れが止まない。ベトナムのライフスタイルに関する、究極のフュージョンスタイルという視点や、他3本のエッセイ、2本のコラムも面白かったが、「ベトナムスタイルの人」と題した3人のインタビュー文章も面白い。

元ファッションエディターで、フランスで出会った夫のホーチミン駐在に付き添い、ベトナムの鉄加工の技術や刺繍の技術に注目してから最初は自分自身の楽しみのために、いろんな雑貨をデザインして制作。それが周囲に話題となり、本格的にビジネスとしてスタートし、ブランドオーナー兼デザイナーとして大成功を収めたフランス人女性。古き良きベトナムのノスタルジックな空間を再現しベトナムスタイルをより魅力的なものとして蘇られせている元法律事務所などで働いていたフランス人男性。ベトナムでの有名な画家の娘で、ベトナムでフランスの木材会社に就職し、ベトナム各地の手工芸を見る機会からベトナム雑貨のショップ展開のオーナー&デザイナーとなったベトナム人女性の3人で、それぞれの経歴やベトナム雑貨の活かし方の思考や視点がなかなか興味深い。

本書の目次 

part 1  食のスタイル
美しく暮らしになじむ 安南染付 gốm hoa lam
食卓に彩りを与える 赤絵皿 gốm hoa vân màu đỏ
モダンでスタイリッシュな セラドングリーン màu xanh gốm sứ
ほのぼのとした魅力の ソンベ焼き gốm sông bé
スタイリッシュかつカジュアル使いの うるし sơn mài
優美で本物志向の カトラリー  đôi đũa  muỗng  nĩa 
食卓が華やぐ テーブルリネン  khăn trải bàn khăn ăn 
美しく心躍る キッチンアイテム đồ dùng nhà bếp
素朴でダイナミックな 台所用品 dụng cụ làm bếp 

part 2  衣のスタイル
アジアンテイストあふれる ハンドバック túi xách tay
繊細な手仕事がぜいたくな ミュール giày dép
コーディネートをドラマチックに変える ストール khăn choàng
優雅でスタイリッシュな アオザイ áo dài cách tân
ナチュラルで着心地の良い アオザイ風シャツ áo sườn xám
ワンランクアップの ホームウェア áo mặc trong nhà
美しく機能性に富む トラベルアイテム đồ đạc mang theo khi đi du lịch
繊細でキッチュな アクセサリー đồ trang sức

part 3  住のスタイル
部屋の印象をガラリと変える ランプ cái đèn
洗練されたテイストの クッション gối đệm
仕事が楽しくなりそうな デスクトップアイテム đồ trang trí trên bàn

Column
ベトナムの人々の生活と占い
女性を美しく見せる菅笠
Interview  ベトナムスタイルの人

カトリーヌ・ドヌーアル CATHERINE DENOUAL
ルーク・レジュヌ LUC LEGUNE
ユイ・ミー・チャン DUY MY TRAN
essay
持たないスタイル
遅いといくスタイル
いい加減というスタイル

ベトナム 究極のフュージョンスタイル
あとがき

関連記事

おすすめ記事

  1. メコン圏題材のノンフィクション・ルポルタージュ 第24回 「激動の河・メコン」(NHK取材班 著)

    メコン圏題材のノンフィクション・ルポルタージュ 第24回 「激動の河・メコン」(NHK取材班 著) …
  2. メコン圏を舞台とする小説 第41回「インドラネット」(桐野夏生 著)

    メコン圏を舞台とする小説 第41回「インドラネット」(桐野夏生 著) 「インドラネット」(桐野…
  3. メコン圏現地作家による文学 第11回「メナムの残照」(トムヤンティ 著、西野 順治郎 訳)

    メコン圏現地作家による文学 第11回「メナムの残照」(トムヤンティ 著、西野 順治郎 訳) 「…
  4. メコン圏に関する中国語書籍 第4回「腾冲史话」(谢 本书 著,云南人民出版社)

    メコン圏に関する中国語書籍 第4回「腾冲史话」(谢 本书 著,云南人民出版社 ) 云南名城史话…
  5. メコン圏の写真集・旅紀行・エッセイ 第19回「貴州旅情」中国貴州少数民族を訪ねて(宮城の団十郎 著)

    メコン圏の写真集・旅紀行・エッセイ 第19回「貴州旅情」中国貴州少数民族を訪ねて(宮城の団十郎 著)…
  6. メコン圏を描く海外翻訳小説 第15回「アップ・カントリー 兵士の帰還」(上・下)(ネルソン・デミル 著、白石 朗 訳)

    メコン圏を描く海外翻訳小説 第15回「アップ・カントリー 兵士の帰還」(ネルソン・デミル 著、白石 …
  7. メコン圏が登場するコミック 第17回「リトル・ロータス」(著者: 西浦キオ)

    メコン圏が登場するコミック 第17回「リトル・ロータス」(著者:西浦キオ) 「リトル・ロー…
  8. メコン圏対象の調査研究書 第26回「クメールの彫像」(J・ボワルエ著、石澤良昭・中島節子 訳)

    メコン圏対象の調査研究書 第26回「クメールの彫像」(J・ボワルエ著、石澤良昭・中島節子 訳) …
  9. 調査探求記「ひょうたん笛の”古調”を追い求めて」①(伊藤悟)

    「ひょうたん笛の”古調”を追い求めて」①(伊藤悟)第1章 雲南を離れてどれくらいたったか。…
  10. 雲南省・西双版納 タイ・ルー族のナーガ(龍)の”色と形” ①(岡崎信雄さん)

    論考:雲南省・西双版納 タイ・ルー族のナーガ(龍)の”色と形” ①(岡崎信雄さん) 中国雲南省西双…
ページ上部へ戻る