バンテアイ・スレイ

2000年9月掲載

「女の砦」を意味する格調高い美しさを持つクメール遺跡

アンコールワットから東北方向約35キロの地点にあり、アンコール遺跡の中で最も格調の高い美しさを誇る寺院。バンテアイ・スレイという名は、「女の砦」を意味し、967年に建立されたと言われる。この寺院は規模は大きくないが、興味深いヒンドゥ神話の場面を描いた彫刻が各所に散りばめられている。

東正面から第1境内の内門まで延びた石畳の参道の途中、北側に1つ、南側に3つ、建造物の壊れた跡がある。その北側には、恐ろしい形相をした怪物の胸と、人間の胸が上下に相接し、怪物の両腕と仰向けにのけぞった人間の両腕が堅く絡みあっている彫刻がある。

参道北側建物のレリーフ

第2境内の西裏門の彫刻では、「ラーマヤナ物語」に登場する猿王スグリーヴァとその王位と妻を奪った兄ヴァーリンとの決戦の場が描かれている。右手に弓を引くのは物語の主人公でスグリーヴァに同情し加勢するラーマ王子である。

第2境内・西裏門のレリーフ

中心境内にある各塔の4周の壁面は、神々の像や神話の場面の彫刻が埋められている。北経蔵の東切妻壁には、3頭の神象に乗ったインドラ神が慈雨を万物に恵む様子が上部に描かれ、その下には、鳥が空を羽ばたき森の中を動物たちに囲まれてクリシュナ神が、兄と散歩している場面となっている。

当遺跡までは舗装された道路とは行かないが、治安については心配しなくても良くなり、アンコールワット見学の折には是非足を伸ばしたいスポットである。ただ今年(2000年)は、バンテアイスレイへの道が、川の増水により一時通行できなくなったりと、雨季が終わる10月下旬頃までは増水による影響を受けることが心配される。

主な参考文献:『現代 眞蠟風土記』(今川幸雄 著、KDDクリエィティブ、1997年11月)

建設年代:967年
建築者:ラージェンドラヴァルマン2世、ジャヤーヴァルマン5世
宗教:ヒンドゥ教

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