「メコン圏と日本との繋がり」第2回 「元ビルマ国家元首バーモウ氏と新潟県南魚沼郡」

第2回 2000年2月上旬号掲載

メコン圏と日本地方部との繋がり
元ビルマ国家元首と豪雪地帯の南魚沼郡塩沢町との関係は、バーモウ氏が終戦直後、日本に亡命したことに始まる

ビルマ民族運動の先駆的指導者で、第2次世界大戦時、国家元首(国家代表)の地位にあったバー・モウ氏(1893年~1977年)は、群馬県と県境を接する豪雪地帯の新潟県南魚沼郡と関係がある。

バーモウ氏は、反英独立運動の闘士として活躍し、1937年の新憲法下では、最初のビルマ人首相に就任。同内閣が1939年瓦解した後、1940年には逮捕投獄されるが、翌年4月には脱獄を果たす。

そして日本軍政下では行政府長官となり、1943年にはビルマの独立宣言と共に、国家代表(元首)に就任した。しかし、1944年末には、戦時下の反植民地統一戦線が瓦解。アウン・サン氏率いるタキン党が、英国側に寝返り、日本軍はラングーン撤退となる。そしてバー・モウ氏も1945年8月日本に亡命した。

日本への亡命は、サイゴンから台湾経由で東京の立川飛行場に向かい、一旦参謀本部に入っている。重光外相の指示で、日本の外務省がバーモウ氏の面倒を見ることになり、汽車で新潟県南魚沼郡六日町に連れて行き、地元の青年活動家・今成拓三氏に引き合わせている。今成氏等が、新潟県南魚沼郡塩沢町の薬照寺にバー・モウ氏を匿い、いろいろと世話をするのであるが、同年末には、東京の占領軍当局の英国代表部に自首。そして巣鴨拘置所に収容されることになる。

昨年(1999年)5月17日、バーモウ氏の長女ティンサーモウナイ氏(昨年73歳)、長男ザーリーモウ氏(昨年72歳)、次女マラーモウ氏(昨年70歳)の3人が、「父がどん底だった時、力になってくれた人たちやゆかりの地を3人で訪ねたかった」として、来日した。

翌5月18日には、父バーモウ氏が日本亡命中、隠れていた薬照寺を訪問した。薬照寺は、真言宗智山派で1045年僧善寿が創建しのちに現在地に移されたという歴史のある寺で、境内に護摩堂があり、5大尊を安置する。場所は南魚沼郡塩沢町君沢で、湯沢と塩沢の中間点にあり、三国街道から少し脇に入ったところにある。同寺訪問だけでなく、故今成拓三氏の娘婿・康明氏(昨年56歳。新潟県南魚沼郡六日町仲町在住)をはじめ、亡命の唯一人の生き証人となった南魚沼郡六日町田中町の遠藤栄三氏(昨年85歳)との面談やゆかりの地を訪れた。

尚、東京の占領軍当局に自首した後のバーモウ氏は、1946年8月、英国により特赦されビルマに帰国している。

(主たる情報:ザーリーモウ氏 及び99年5月19日付『新潟日報』)

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