元世祖平雲南碑

2000年7月掲載

1253年モンゴルのフビライによる大理国攻略・雲南平定

雲南省大理市中和峰麓の旧市街西部(西門の外1kmの距離)にあたる三月街広場の中に建つ元の時代の碑刻である。碑は碑額、碑身、碑座の3部分から成っている。上部の半円形の大理石碑額には、篆書の「世祖皇帝平雲南碑」の8つの大文字があり、碑額の下に、2つの黒石が上下に相接していて成る碑身がある。

碑文は1300余りの文字で、第1行だけは、「世祖平雲南碑」(上の石の第1行)、「翰林院臣程文海撰」(下の石の第1行)と上下続くも、その後は、まず上の石に刻まれ、続いて下の石に文が刻まれている。この碑は、元成宗大徳10年(1306年)に建立された。上の石の碑文は計31行、行21字で、雲南征伐の叙述に力点が置かれ、下の石の碑文は、計28行、行26字で、元世祖の功労と徳行を称えている。

この碑文の作者は、翰林院の程文海(1249年~1318年:字は鉅夫)。碑については、元王朝第2代皇帝・成宗(在位1294年~1307年)の時代の大徳8年(1304年)、雲南平章政事(省最高行政長官)が顕彰碑建設を皇帝に建議して出来たもので、その建設時期については諸説あるようだが、一般的には1308年とされている。(碑文の最後に「元憲2年・・」の一行があるが、程文海の原文にはないもので、またこの年号は元代にない)

碑分の前半部分では、「天命を継承し皇朝を建立以来、月日の照らすところ、すべて我々の領土であり、内外の区別なく、雲南ももともと秦漢時代の郡県であったが、地勢が険しいことに頼んで皇朝によく帰順してこなかった」という趣旨の文章で始まり、モンゴル帝国第4代皇帝・憲宗即位の翌年、皇帝の弟・フビライが軍を率い、雲南に進軍するルートの記述がある。大理王国が治める大理都城に迫り、西に蒼山、東に洱海を擁する大理は堅固であったが、ついに攻め落とし、大理国王・段興智は善闡(現在の昆明)に逃亡した。大理国の権力を掌握していた行政・軍事長官の高太祥は、姚州(現在の姚安県)で捕えられ、斬首となった。皇弟フビライは北方に戻ったが、モンゴルのウリアンハダイ大将が引き続き雲南経略を行い、善闡を攻め、大理国王・段興智を捕らえた。ウリアンハダイ大将の雲南平定が続き、大理攻略だけでなく雲南平定の様子や結果も碑文に記されている。

碑文の後半では、大理国王・段興智を釈放し殺さなかったことをはじめ、雲南経営での世祖皇帝の恩徳を称え、漢武帝の西南夷経営や、周穆王の巡遊を引き合いに出している。 尚、碑文の原文そのものと、現代漢語への翻訳を掲載した小冊子が、大理市文物保護管理所から発行されている。

●モンゴル帝国皇帝

①太祖(チンギス・ハーン)
在位1206年~1227年
1206年、クリルタイ(首長会議)で、テムジンはハーンの位に就く。
1227年、西夏滅亡

②太宗(オゴタイ)
在位1229年~1241年
1234年、金滅亡

③定宗(グユク)
在位1246年~1248年

④憲宗(メンゲ)
在位1251年~1259年

⑤フビライ(元・世祖)
在位1260年~1294年

●元王朝皇帝

①世祖フビライ
在位1260年~1296年
1271年、国号を元と称す

②成宗
在位1294年~1307年

③武宗
在位1307年~1311年

④仁宗
在位1311年~1320年

⑤英宗
在位1320年~1323年

⑥泰定帝
在位1323年~1328年

⑦天順帝
在位1328年

⑧明帝
在位1328年~1329年

⑨文帝
在位1329年~1332年

⑩寧帝
在位1332年

⑪順帝
在位1333年~1370年

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