メコン圏の写真集・旅紀行・エッセイ 第23回「メコン街道」母なる大河4200キロを往く(鎌澤久也 著)

メコン圏の写真集・旅紀行・エッセイ 第23回「メコン街道」母なる大河4200キロを往く(鎌澤久也 著)

「メコン街道」母なる大河4200キロを往く(鎌澤久也 著 〈写真・文〉、水曜社、2004年7月発行)

〈著者紹介〉鎌澤 久也(かまざわ・きゅうや)
日本写真家協会(JPS)会員。写真家。アジアを中心に人々の日常、祭り、遺跡などを撮り続けている。『メコン街道』はじめ全国で写真展を開催。著書に『雲南』『藍の里』『玄奘の道・シルクロード』など。駒澤女子大学にて、2004年度より「写真の研究」と題して集中講義を開始。(本書紹介文より。本書発刊当時)「アジアングラフィティ」 (鎌澤久也氏のホームページ) 「メコン街道」 (週刊ヤングジャンプのサイト内)

プロ写真家の鎌澤久也氏は、集英社の『週刊ヤングジャンプ』に、フォト&エッセイ企画として、本書と同名の「メコン街道」と題し1996年から2000年にかけ全20回、不定期連載されていたが、この原稿をベースに、その後何度も取材を重ね大幅に加筆修正を行い、2004年夏、水曜社から単行本化されたのが本書。週刊ヤングジャンプでの連載だけでなく、「メコン川」「メコン街道」と題した写真展も各地で開催されてきたため、既に著者のメコン川やメコン圏地域に関する写真をご覧になった方も少なくないだろう。

 著者の写真家・鎌澤久也氏は、『雲南』『藍の里』など、雲南を中心に西南中国の写真集でもよく知られているが、アジア、とりわけ中国雲南省の少数民族にひかれ、彼らの衣食住を中心に、日常や祭りを撮り続け、近年はメコン川や長江など大河をテーマに、人と川との関わりを追い続けている。鎌澤氏のメコン川や雲南省とのかかわり・きっかけについては、「本書はじめに」に記されているが、1980年代前半、タイ北部でメコン川とはじめて出会い、タイ北部の少数民族の生活にひかれたことから雲南に関り、少数民族を追いかけているうちに、自然とメコンと再会し、「母なる大河』と呼ばれ流域諸国で親しまれているメコンを次第に意識し始め、そしてメコン全域を見てみたい、その大自然を体で受け止めてみたい、と強く思いはじめたそうだ。

 見開き頁や片頁サイズのカラー写真満載の写真集&紀行エッセイという本書は、メコン川流域を下流域、中流域、上流域と3つのパートに分かれ、ベトナム南部の河口から中国・青海省の源流までと、幅広く写真・文が収められている。メコン川源流地域まで本書では取り上げていることもあってか、下流域には、ベトナム南部の河口デルタやカンボジアだけでなく、ラオスやゴールデン・トライアングルあたりも本書では含めていて、改めてメコン川の壮大さを意識させられる。

 また、本書で取り上げている地域は、メコン川やその流域に限定されてはおらず、広くメコン圏が取り上げられ、多彩なメコン圏の魅力をわかりやすく伝えている。メコンデルタ、サイゴン、プノンペン、アンコール遺跡群、コーンの滝、ビエンチャン、ジャール平原、ルアンパバン、バンコク・カオサンロード、タイ=ラオス友好橋、ゴールデントライアングル、バガン、インレー湖、西双版納、大理などといったメコン圏の代表的な都市や観光スポットから、瑞麗や畹町といった雲南とミャンマーの国境の町、チベット自治区の昌都、青海省の玉樹、といった旅行通が喜びそうな町までと盛りだくさんであるが、普通ではまず行けない源流付近の写真と旅の報告は大変貴重だ。

 川についても、川そのものの写真だけではなく、川と人々の暮らしの様々な関りを映し出しているが、それにしても、同じ一つの川でありながら、国際河川で大河であるだけに、河口部のデルタ地帯と、源流付近や上流部での風土や民族・人々の暮らし・川の広さなど、その様相はあまりに違いすぎる。掲載写真についても、懐かしく思うもの、心暖まるもの、活気づけられるもの、力強さ・たくましさを感じるもの、美しさに感動するものなど、色鮮やかで旅情をかきたてられる写真ばかりだ。河口での大勢の人たちによるハマグリ採り、ナムグムダムでの大ナマズ、日本の観光化されたものとは異なる洱海での鵜飼い、中甸での巨大マツタケ、自然が生み出した棚田状の石灰岩が山腹を覆う中甸郊外の白水台、メコン源流付近での青いケシの花、源流付近での遊牧民の男性の豪快な機織り姿など、驚いた写真も少なくない。

 著者の飾らない率直な感想や現地の人たちとの関りを綴っている文章も楽しく読める。国境検問所で年配の係官に詰問された畹町での話やシーサンパンナでの夜這いの話などは著者と同じ気持ちになったし、また「メコンデルタで、ボートに揺られながら思ったことがある。源流の一点に指をあてて流れをせき止めたら、この広大なメコンも涸れるのだろうかとー。」という思いもよくわかる。それにしても、著者は職業がらということもあるのだろうが、現地の人たちと親しくなるのが上手なのか、本書に記載あるだけでも現地の人たちから度々、食べ物を勧められたり家などに誘われ宿泊したりしている。

本書の目次

はじめに

Ⅰ、下流域
ベトナム
メコンデルタ/水上マーケット/ランブータン/大家族/メコンで舟遊び/河口/サイゴン/カフェ/アオザイ/チョロンの路地裏
カンボジア
ポル・ポトの名残り/アンコール・ワットへの道
ラオス
コーンアイランド/ビエンチャン/ナムグムダム/ルアンパバン/ジャール平原
タイ
カオサンロード/ゴールデン・トライアングル

Ⅱ、中流域
ミャンマー
ゴールデン・ロック/悠久のバガン/インレー湖
中国・中流域
シーサンパンナ/一宿一飯/メコン川/国境のまち瑞麗/畹町

Ⅲ、上流域
中国・上流域
大理/マツタケ市場/昌都/玉樹/青いケシの花/遊牧民/メコンの源流へ

あとがき 

 本書掲載関連ワード
・メコン川 ・「母なる大河」 ・メコンデルタ・水上マーケット ・カントー郊外 ・サポラジ  ・ランブータン ・スターフルーツ ・マングローブ ・スコール ・「モンキーブリッジ」 ・ドイモイ政策 ・ドンコイ通り ・レロイ通り ・サイゴン川 ・トンドクタン通り  ・ファングーラオ通り ・アオザイ ・ホーチミン市(サイゴン) ・チョロン ・ビンタイ市場 ・フォー ・モニボン通り

・プノンペン ・トゥールスレーン博物館 ・ポル・ポト ・セントラル・マーケット ・トンレサップ川 ・シェムリアップ ・トンレサップ湖 ・プノンクロム ・水上生活者 ・アンコール・ワット ・アンリ・ムオ  ・タ・プローム寺院 ・スーリヤヴァルマン2世  ・コーンアイランド  ・イルカ ・コーンの滝

・ビエンチャン ・友好橋 ・ナムグムダム ・ルアンパバン ・入安居祭(ブン・カオパンサー) ・托鉢 ・プーシーの丘 ・ジャール平原 ・ポーンサワン ・ミサイル弾の残骸

・バンコク ・カオサンロード ・ホアランポーン駅 ・ノンカイ ・ゴールデントライアングル ・ケシ ・チェンライ県

・ゴールデン・ロック(チャイティヨー・パゴダ)・モン州 ・バガン  ・イラワジ河  ・タナカ ・ウルシ ・インレー湖 ・シャン高原 ・インダー族

・シーサンパンナ(西双版納) ・西双版納大橋 ・タイ族 ・丟包(タイ族の伝統的な求愛)・瑞麗 ・徳宏タイ族ジンポー族自治州 ・パキスタン人 ・畹町  ・大理 ・洱海 ・蒼山 ・大理王国 ・大理石 ・鵜飼い ・中甸 ・チベット寺院 ・マツタケ市場  ・中甸郊外の白水台 ・梅里雪山(6740m) ・昌都 ・チャムパリン・ゴンパ ・チベット仏教 ・バター茶 ・扎曲(ザチュ) ・玉樹  ・ジェグ・ゴンパ ・マニ石 ・タルチョ ・チベット族 ・青いケシの花(『青いケシの国』白水社キングドン=ウォード) ・ヤク、ヒツジと遊牧民 ・オボ(石塚)  

関連記事

リニューアル公開への準備作業中

2023年2月下旬のリニューアル公開に向け、サイト再構成の準備作業中です。

カテゴリー

おすすめ記事

  1. メコン圏を舞台とする小説 第1回「九頭の龍」(伴野 朗 著)

    メコン圏を舞台とする小説 第1回「九頭の龍」 「九頭の龍」 著書:伴野 朗  徳間文庫、199…
  2. 石寨山古墓群遺跡

    2002年3月掲載 雲南古代の滇王国とその青銅器文化の存在を2千年以上の時を経て実証した王墓群発見…
  3. 馬 登雲

    2001年9月掲載 昆明の回族出身の革命活動家。1927年に共産党に入党し19歳で刑死  (191…
  4. バー・モウ

    2000年10月掲載 ビルマ民族運動の先駆的指導者で、元ビルマ国家元首 バー・モウ 1893年~…
  5. メコン圏を描く海外翻訳小説 第16回「おとなしいアメリカ人」(グレアム・グリーン著、田中西二郎 訳)

    アメリカの対アジア政策を批判したものと受けとめられ世界的に話題となった、第1次インドシナ戦争中の…
  6. 調査探求記「ひょうたん笛の”古調”を追い求めて」①(伊藤悟)

    「ひょうたん笛の”古調”を追い求めて」①(伊藤悟)第1章 雲南を離れてどれくらいたったか。…
  7. 雲南省・西双版納 タイ・ルー族のナーガ(龍)の”色と形” ①(岡崎信雄さん)

    論考:雲南省・西双版納 タイ・ルー族のナーガ(龍)の”色と形” ①(岡崎信雄さん) 中国雲南省西双…
  8. コラム(江口久雄さん)「メコン仙人たより」 第12話 「倭国の遣使」

    コラム(江口久雄さん)「メコン仙人だより」 第12話 「倭国の遣使」 〈前漢末期、倭の百余国によ…
ページ上部へ戻る