メコン圏の写真集・旅紀行・エッセイ 第27回「ラオス 全土の旅」(川口正志 著)


「ラオス 全土の旅」(川口正志 著、めこん、2016年3月発行)

<著者紹介> 川口正志(かわぐち・まさし)
1963年東京生まれ。フリーランスフォトグラファー。
1995年初めてラオスに行き、その後毎年1~4回ラオスを旅行。すべての県を歩いて、人々の暮らしや風景を撮り続けている。2002年に東京と大阪で初の個展{LAO BREEZE ~ラオスの風に吹かれて」を開催。その後、愛・地球博やラオスフェスティバルなどでも写真を展示。JICAやH.I.Sなどでも写真展を開いている。ラオス関係の著書としては2011年に配信が開始された電子書籍「のんびりラオスに癒されて」(I.OS版、Kindle版)(アドレナライズ)があるほか、「ラオス概説」(めこん、2003年)など、ラオス関係の書籍への写真提供多数。またラオスの邦人向けのフリーペーパー、ラオス観光日本語マガジン「LAO SKETCH」にフォトエッセイ「ファインダーのつぶやき」を連載中。<本書著者紹介より。本書発刊時>

目次
はじめに
ラオスの旅の基本情報
第1章 首都ビエンチャン
第2章 古都ルアンパバーンを訪ねて ー国道13号線の旅ー
第3章 壺の平原とラオス愛国戦線の故地へ -国道7号線と6号線の旅ー
第4章 ルアンパバーンからメコン西岸を南下する ーサイニャブーリーヘー
第5章 少数民族地帯と川旅の魅力 ーボーケーオ、ルアンナムターへ
第6章 中国に接する最北部 -ウドムサイ、ポンサーリーへ
第7章 中部からベトナム国境へ ーボーリカムサイ、カムムアンヘ
第8章 サワンナケート、パークセーを起点として、さらに南へ 
第9章 南部の秘境へ ーボーラヴェーン高原とアッタプー、サーラワン、セーコーンヘ
第10章 カンボジアが近い ーワット・プーとシーパンドーンヘ
あとがき

上述の本書目次に目を通すだけで、ラオスの最北部から、西部、東北部、中部、中南部、最南部まで、ラオス1都17県全ての地域を、本書が網羅し、書籍タイトル通り「ラオス全土の旅」と分かるが、更に後述の本書の詳細内容を知り、ラオス全土のほとんどありとあらゆる場所や移動ルートが隈なく、きっちりと取り上げられていることに、なんと、ラオス全土の旅情報という挑戦的で、尚且つ多大な時間や熱意を要するとともに現地の交通事情や情報収集も容易ならざる困難を伴う書籍企画に驚嘆する。著名な観光地スポットに多少のマニアックな地域やテーマ情報が加わっているというレベルではなく、文字通り、ラオス全土を、それこそ、隅から隅まで網羅したラオスの旅情報が、360頁以上にわたり、2008年から2013年までの取材がもとに、ぎっしり詰まった書籍だ。

1995年に初めてラオスに行き、その後毎年1~4回ラオスを旅行し、すべての県を歩いて、フォトグラファーとしてラオスの人々の暮らしや風景を写真に撮り続けてきた著者が、”周辺の国と違って、ラオスには観光地と呼ばれるところが極めて少ないが、ラオスの旅の魅力は、観光地を回ることだけではなく、ラオスの人たちの生活圏に限りなく近いところで、ラオスの人たちの暮らしの様子を垣間見たり、交流したりできるということ”と語り、そういうラオスの旅を楽しんでもらいたいという思いから、ラオスの隅から隅まで旅をした著者自身の目線で、点ではなく線でラオスを紹介しようと、通常のガイドブックのように都市ごとに情報をまとめるのではなく、旅するルートに沿って旅の紹介が行われている。

細部にわたり、親切丁寧すぎる詳細情報やアドバイスも満載で、各章に、詳細な地図や、視覚でも確認できる膨大な関連の写真も収録掲載されているので、詳細な地図と写真を見ながら本文を読み、ラオス各地の旅ルートを一緒に辿ってみるのは、とても楽しいし、旅のルートの計画もあれこれ考えたくなってくる。ラオス全土の旅するルートについては、陸路が主ではあるが、ラオスならではの川旅のルートも、陸路や橋の整備で段々利用が減っていく可能性はあるが、メコン川本流、数多くの支流を利用する舟旅ルートも取り上げている。点ではなく線でラオスを紹介しようというコンセプトのお陰で、大きな県都や有名な観光地だけでなく、陸路移動ルート沿いの郡都の町、さらには、道の分岐点、バスの休憩地点の村、集落なども本書には数多く登場している点が非常にユニークで希少。

インドシナ半島の中央に位置する南北に細長い内陸国のラオスは、周りを中国、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマーの5か国に囲まれ、ラオス全土1都17県のうち、特別に設置されたいきさつのあるサイソンプーム県以外は、全て国境を接し、2か国との国境を接する県も少なくない。多彩で美しく豊かな自然環境やラオスの人々の気質などに加え、この地理的環境が生み出したラオスの歴史・民族・文化的背景があるがために、小国ではあるものの、地域ごとに異なる魅力に富む国土があり、色褪せない旅の魅力に溢れているのではと感じる。

本書での紹介ルートと紹介地
ラオスの旅の基本情報に続き、第1章は首都ビエンチャン、第2章は、ビエンチャンから古都ルアンパバーンを訪ねる国道13号線の旅の紹介と、非常にポピュラーな旅のルートからスタートするものの、第3章以降、最終章の第10章まで、後述の通り、驚くほどに詳細でほとんど知られていない旅ルートや町・集落などの紹介満載となっている。

第1章 首都ビエンチャン
ビエンチェン (ビエンチャン都)

第2章 古都ルアンパバーンを訪ねて ー国道13号線の旅ー
●ビエンチャンのバスターミナルからスタート ■Km52 (ビエンチャン都) ▼KM52 → ポーンホーン (ビエンチャン県) → ターラート (ビエンチャン県)→ ナム・グム湖 ■ナム・グム湖  ■ポーンホーン → ヒンフープ (ビエンチャン県)→ ターフーア(ビエンチャン県)▼ターフーア → バンビエン  ■バンビエン(ビエンチャン県)▼バンビエン → カーシー■カーシー (ビエンチャン県) ▼カーシー → ナムウーン ■ナムウーン ▼ナムウーン → サーラープークーン ■サーラープークーン(国道13号線とシエンクアーン県方面へ行く国道7号線の分岐点にあるルアンパバーン県内の集落)▼サーラープークーン → ルアンパバーン ■ルアンパバーン(ルアンパバーン県都)

 第3章は、石で造られた巨大な壺がごろごろ転がる観光名所としても有名なジャール平原のあるシェンクアン県(県都はポーンサワン)と、ラオスの現政権の基盤となったラオス愛国戦線(パテート・ラーオ)が結成されたビエンサイの町があるラオス北東部に位置するフアパン県(県都はサムヌア)が主な対象。国道7号線の終点近くはシエンクアン県のノーンヘートの先にあるベトナム国境のナム・カンで、この国境は外国人旅行者にも開放されていて、ベトナムのビン(Vinh)方面に抜けることができる。フアパン県のサムヌアからもベトナムへ抜ける国境ルートがあり、ラオス側ナム・ソーイ⇔ベトナム側ナーメーオ、ラオス側パーハーン⇔ベトナム側モクチャウのルートに言及。

主な紹介ルートは、サーラープークーン(ビエンチャン県)からポーンサワンを経由し、ベトナム国境のナムカンまで延びる国道7号線と、ムアンカム(シェンクアーン県)から始まるサムヌアへと延びる国道6号線だが、ポーンサワンからビエンチャンを経由せずにメコン河沿いのパークサン(ボーリカムサイ県都)まで南下する国道1D号線だが、サムヌアから西に向かうルートとして、プーラオ(ファパン県)から始まる国道1C号線で、ビエントーン(フアパン県)、ビエンカム(ルアンパバーン県)、ノーンキヤウ、ナムパークなどを通って、ルアンパバーン方面へと向かうルートも紹介。

第3章 壺の平原とラオス愛国戦線の故地へ -国道7号線と6号線の旅ー
サーラープークーン(ビエンチャン県)→ ムアンスイ(シェンクアーン県) ■ムアンスイ ▼ムアンスイ → ポーンサワン ■ポーンサワン(シェンクアーン県都)■ムアンクーン(シェンクアーン県)▼ポーンサワン → パークサン(ボーリカムサイ県都)▼ポーンサワン → ノーンヘート  ■ムアンカム(ポーンサワンの北東に位置するシェンクアーン県内の小さな町。ベトナム国境編と続く国道7号線と、ここから始まりサムヌアへと延びる国道6号線が交わるジャンクションを中心に広がる町) ■ノーンヘート(国道7号線の終点近く、ベトナム国境のナム・カンから15キロほどのところにあるシェンクアーン県最東部の町)▼ナム・ヌーン → サムヌア ■ナム・ヌーンサムヌア(フアパン県都)▼サムヌア → ベトナム ▼サムヌア → ビエンサイ → サムタイ ■ビエンサイ(フアパン県)■サムタイ(フアパン県)■国道1C号線の旅 サムヌア → パークモン ■ビエントーン(フアパン県ビエントーン郡都。フアパン県西部) ■パークセーン(ルアンパバーン県パークセーン郡都。ルアンパバーン県の東部)■ビエンカム(ルアンパバーン県ビエンカム郡都)■ノーンキャウ(ナム・ウー川と国道1C号線が交差するポイントにあるルアンパバーン県内の町)■ナムパーク(ルアンパバーン県ナムパーク郡都)■パークモーン(プーラオからウドムサイ、ルアンナムター方面まで続く国道1C号線と、ルアンパバーン方面への道が交わる三叉路にあるルアンパバーン県内の村)

ルアンパバーンを起点とするラオス北部の旅は人気が高いのに比し、第4章では、まだよく知られていない、ルアンパバーンからサイニャブーリー県をメコン川に沿って南下するルートを紹介。県都サンニャブーリー、メコン川の西側に広がるパークラーイを経て、タイ国境の町ケーンターオまで南北に縦長の最ニャブーリー県を縦断するルート。サイニャブーリー県はラオスでただ一つ、全体がメコン川の西岸、タイ側に張り出している県。かつてはタイのナーン王国に属していたこともあって、文化的にもタイ北西部に近いと言われている。この章では、メコン河とナム・ラーイ川の交わるパークラーイ(サイニャブーリー県)からサナカーム(ビエンチャン県)、さらにビエンチャンまでのルートが陸路とともにメコン河船ルートも紹介。サイニャブーリー県には、ケーンターオ以外に、タイ側ナーン県と接するムアングーンも外国人に開放されている国境があり、タイのナーンから、ラオス国境のムアングーンを経てウドムサイに北上する陸路ルートも掲載。

第4章 ルアンパバーンからメコン西岸を南下する ーサイニャブーリーヘー
▼ルアンパバーン → サイニャブーリー ■サイニャブーリー県サイニャブーリー(サイニャブーリー県都)▼サイニャブーリー → パークラーイ ■パークラーイ(サイニャブーリー県内ではサイニャブーリーに次ぐ大きな町。メコン川の西側に広がる町で、ナム・ラーイ川の河口に位置)▼パークラーイ → ケーンターオ(サイニャブーリー県南端のタイ国境の町)▼パークラーイ → サナカーム ■サナカーム(ビエンチャン県内。メコン川をはさんでタイのチェンカーンの斜め向かいの町)▼サナカーム → ビエンチャン ▼ナーン(タイ)→ ムアングン → ウドムサイ ■ムアングン(サイニャブーリー県の北部グン郡)

第5章は、中国、ミャンマー、タイに挟まれたラオス西部は多様な少数民族が多いことでも知られ、タイと中国からの入国ポイントを有しタイと中国を結ぶアジア・ハイウェイ(南北回廊)の完成などによって、今後開発が進むと予想される地域で、さらにファイサーイからパークベーンを経由しての古都ルアンパバーンへのメコン下りの船旅なども楽しめることから、外国人旅行者の間でラオス国内では人気の高いエリア。ラオス国内で一番西にあるボーケーオ県(県都ファイサーイ)、ルアンナムター県(県都ルアンナムター)の2県と、ウドムサイ県の一部の見どころと人気のルートを紹介。メコン河下りだけでなく、ルアンナムターからファイサーイ方面へのメコン河支流のナム・ター川を下る船旅ルートも掲載。

ラオス西部のルアンナムター県の更なる魅力は、中国雲南省西双版納との国境ポイント、ラオス側の国境の町ボーテンを有することと、多くの少数数民族が居住していることだろう。国境の中国側は磨憨(モーハン)で、勐腊(モンラー)を経て、西双版納の中心地・景洪 (ジンホン)に抜けることができる。ラオス西部は少数民族が多く、特に、シェンコック、ムアンシンと、その間にあるムアンローンでは近隣で暮らす少数民族をよく見かけるとのこと。中国国境から10キロちょっとのムアンシンの町の郊外には少数民族の村が点在。多数を占めるのはタイルーとアカで、そのほかにタイダム、モン(Hmong)、ミエン、タイヌア、ヤオ、コー、ランテン、ローローなどの民族が暮らし、ルアンナムターの町の近隣にも少数民族が暮らしていて、タイダム族が最も多く、そのほかにタイルー、ランテン、モン、モン、カム族などの集落が郊外に点在しているそうだ。

第5章 少数民族地帯と川旅の魅力 ーボーケーオ、ルアンナムターへ
ファイサーイ(ラオス国内で一番西にあるボーケーオ県都)▼ファイサーイ → パークベーン ■パークベーン(ナム・ペーン川がメコンと交わる河口にあるウドムサイ県内の小さな町)▼パークベーン → ルアンパバーン ▼パークベーン → ウドムサイ ▼ファイサーイ → シェンコック■シエンコック(ミャンマーのメコン河対岸にあるルアンナムター県内の小さな村。ルアンナムターから来る国道17号線の終点)▼シエンコック → ムアンシン ■ムアンシン(中国国境から約10キロに位置するルアンナムター県内の町)▼ファイサーイ →ビエンプーカー → ルアンナムター ■ビエンプーカー(ファイサーイとルアンナムターの間にあるルアンナムター県内の町)■ルアンナムター(ルアンナムター県都)●ナム・ター川の旅 ▼ルアンナムター → ウドムサイ ▼ルアンナムター → ボーテン(ルアンナムター県内の中国国境の町)

第6章は、東部でベトナム、北部から西部にかけては中国と接するラオス最北の県、ポンサーリーを目指し、ルアンパバーンから陸翔の旅と、ナム・ウー川を行く船の旅を紹介。陸路は、ルアンパバーンから、パークモーン(ルアンパバーン県)、北ラオスの中心的都市、ウドムサイ(ウドムサイ県都)、ムアンラー(ウドムサイ県)、パークナムノーイ(ポンサーリー県)、ブンタイ(ポンサーリー県)、ブンヌア(ポンサーリー県)を経てポンサーリーへの経路。ルアンパバーン近くのパーク・ウーでメコン河と郷数するナム・ウー川の舟旅ルートも、ノーンキャウ(ルアンパバーン県)⇔ムアンゴーイ(ルアンパバーン県)⇔ムアンクーア(ポンサーリー県)⇔ハートサー(ポンサーリー県)が紹介されている、ナム・ウー川は、ハートサーから更にポンサーリー県の北のウータイ、ウーヌアから遡ってはいるが、このルートは舟旅はお勧めではないらしい。

ポンサーリー県は中国雲南省との間に2か所、ベトナム(ライチャウ省)との間に1か所、国境のチェックポイントがあるが、2009年1月現在、外国人が通過できるのは、ベトナムとの国境、ソップフン ⇔ ベトナム側タイチャーン(2007年5月31日付で正式認可)だけで、中国側へは抜けることができなかった。このベトナム国境を超えると、ベトナムのライチャウ省・ディエンビエンフーに抜けることができ、ベトナムのラオカイ省サパとも近く、注目の国境ルート。ポンサーリー県も、中国系も増えてくるが、多彩な少数民族が居住。

第6章 中国に接する最北部 -ウドムサイ、ポンサーリーへ
▼ルアンパバーン → パークモーン ■パークモーン(ウドムサイ、ルアンパバーン、ノーンキャウの3方向から来た道が交わるT字路を中心とした村で、ルアンパバーン県内の北西部)▼パークモーン → ノーンキャウ (ルアンパバーン県)→ ムアンゴーイ ■ムアンゴーイ(ノーンキャウからナム・ウー川を遡ったところにあるルアンパバーン県内の小さな集落)▼パークモーン → ウドムサイ ■ウドムサイ(ウドムサイ県都、国道3号線と2号線が交わる位置
)▼ウドムサイ → ムアンラー(ウドムサイ県北東部)▼ムアンラー → パークナムノーイ (ポンサーリー県)→ ブンタイ(ポンサーリー県)▼ブンタイ → ブンヌア ■ブンヌア(ポンサーリー県)▼ブンヌア → ポンサーリー → ウータイ ■ポンサーリー(ラオス最北部ポンサーリー県都)■ウータイ(ポンサリーの更に北に位置)▼ポンサーリー → ハートサー ■ハートサー(ポンサーリーの北にあり、ナム・ウー川に面した小さな村)▼ハートサー → ムアンクーア ■ムアンクーア(ウドムサイからベトナム国境へと伸びる国道2E号線がナム・ウー川と交差するところにあるポンサーリー県内の町)▼ムアンクーア → ムアンマイ → ベトナムへ  ■ムアンマイ(ムアンクーアとベトナム国境の間にあるポンサーリー県内の町)■ベトナム国境(ポンサーリー県ソップフン ⇔ ベトナム側タイチャーン)

第7章では、ビエンチャン県の隣のラオス中部にあたるボーリカムサイ県とカムムアン県を紹介。以前は、北からフアイサーイ、タードゥーア(ビエンチャン)、ターケーク、サワンナケートと、タイへは全てメコン河を船で渡るしかなかったが、メコン河にかかる友好橋が次々に建設され、外国人が船でタイへ入国できるのは、パークサン(ボーリカムサイ県都)のみ。タイの対岸は、ブンカーン。首都ビエンチャンからラオス南部に向かう国道13号線をずっと南下する陸路ルートを、この章では紹介。ビエンチャンから、パークサーン(ボーリカムサイ県都)、パークカディン(ボーリカムサイ県)、ビエンカム(国道13号線とベトナム国境へ向かう国道8号線の交差。ボーリカムサイ県)、ターケーク(カムムアン県都)を経て、セーノー(サワンナケート県)で国道13号線と別れ、国道9号線に入り、中南部ラオス最大の都市、サワンナケートに入る南北縦断ルート。

これに加え、ビエンカム(ボーリカムサイ県)、ターケーク(カムムアン県都)それぞれの町からラオス中部を東西横断しベトナム国境へと延びる道が、国道8号線、国道12号線として紹介されている。ビエンカムからは、バーン・ナーヒーン、ベトナム人も多く暮らすラックサーオを経由してベトナムとの国境の町ナムパーオに至るが、このルート沿いの近くにタム・コーンロー洞窟(カムムアン県)があり、その写真が本書でも頁大サイズで紹介されているが、なかなか迫力がありそうな洞窟。一方、ターケークからの国道12号線の終点がラオス領ナーパオ(カムムアン県)。ベトナム側の国境の町がチャーローで2004年にこの国境開放。国道12号線から分岐して、カムムアン県のニョムマラート、ナーカーイ、更にラックサーオへの至る国道1E号線も紹介。このナーカーイの町が、ナーカーイ高原という高地にあり、近くに、自然・生活環境への影響が懸念されてきたナム・トゥーン第2ダムがある。

第7章 中部からベトナム国境へ ーボーリカムサイ、カムムアンヘ。
▼ビエンチャン → パークサン → パークカディン ■パークサン(ボーリカムサイ県都)■パークカディン ▼パークカディン → ターケーク ■ターケーク(カムムアン県都)▼ビエンカム → バーン・ナーヒーン ■バーン・ナーヒーン ▼バーン・ナーヒーン → タム・コーンロー洞窟 ■タム・コンロー洞窟  ▼バーン・ナーヒーン → ラックサーオ ■ラックサーオ ▼ターケーク → ベトナム国境 ■マハーサイニョムマラートナーカーイ ▼ターケーク → サワンナケート

ラオス南部を代表する町で、フランス領インドシナ時代の建物が多く残る、サワンナケートとパークセーは、ラオス南部の交通の中心となっているので、第8章は、ここを起点としたルートを紹介。まずは、中南部ラオス最大の都市サワンナケートからベトナム国境までまっすぐ東に延びる古くからの街道の国道9号線ルートは、サワンナケートから、サワナケート県内の、セーノー、ムアンパラーン、ムアンピーン、セーポーンを経て、ベトナムとの国境、ベトナム人も多いデーンサワンの集落に至る。

サワンナケートから、国道13号線を南下し、ラオス最南部の県、チャムパーサック県都パークセーへ。チャムパーサック県は、西側がタイ、南側がカンボジアと国境を接し、それぞれ陸路での出入国が可能。クメール遺跡のワットプー、メコン河に点在する中州の島々、シーパンドーン、メコン河の滝など、多くの観光地を持ち、パークセーは、それら観光地を訪れる拠点。ラオス=タイ間の多くの出入国ポイントの最南端が、メコン河西岸のワンタオ(チャムパーサック県)で、タイ側の国境の町がチョンメック(ウボンラーチャタニー県)

第8章 サワンナケート、パークセーを起点として、さらに南へ
サワンナケート  ●国道9号線の旅 ■デーンサワン(サワンナケート県内、ベトナムとの国境の手前の小さな集落) ●ベトナムへ(デーンサワン
⇔ ベトナム側ラオバオ)▼サワンナケート → パークセー ■パークセー(チャムパーサック県都)▼パークセー → タイ

第9章は、これまで他の地域に比べ、知られてこなかった、サーラワン県、セーコーン県、アッタプー県の3県へのパクセーからの陸路ルートと、ラオス南部の真ん中に位置する巨大な台地状の山塊のボーラヴェーン高原を紹介している。かつては火山だったポーラヴェーン高原は土質が良く、水が豊かで果物や野菜作り、特にコーヒーの栽培で有名。2008年1月18日には、ラオスのアッタプー県プーボン郡とベトナムのコントゥム省ゴクホイ郡との間に国際検問所が完成し、外国人旅行者の通過も、ラオス側プークーア ⇔ ベトナム側ブーイで可能となったことも取り上げている。

民族的には、ビエンチャンやパークセーなどの平野部に多いラオ・ルム(低地ラオ人)の数は少なく、ボーラヴェーン高原からベトナムと国境を接するセーコーン、アッタプーはラオ・トゥン(山腹ラオ人)と呼ばれるモン(Mon)・クメール系の民族が多く住んでいるということで、メコン河流域のラオス平野部とは民族的にも歴史的にも大きく異なる地域で、地続きのベトナムの中部高原にも同じ民族が住んでいる。セーコー県のダックチューンという集落も本章で紹介されているが、タリアン族が多く住む集落で、その伝統的な家屋も非常に独特(写真掲載あり)。

第9章 南部の秘境へ ーボーラヴェーン高原とアッタプー、サーラワン、セーコーンヘ
ボーラヴェーン高原  ▼パークセーサーラワン サーラワン(サーラワン県都) ▼パークセーパークソーンパークソーン(チャムパーサック県内、ボーラヴェーン高原の町) ▼パークソーンセーコーンアッタプー  ■ターテーン(セーコーン、サーラワン、パークソーンの3方向の道が延びる三叉路付近の集落) ■セーコーン(セーコーン県都) ■ダックチューン(セーコーン県ダックチューン郡の中心となる集落)■アッタプー(ラオス最南東部のアッタプー県都)●ベトナムへ(アッタプー県プークーア ⇔ ベトナム側ブーイ)

最終章では、かつてはチャムパーサック王国の王都として栄えたチャムパーサックの町やクメール王朝時代の寺院遺跡群のワットプー、メコン河のラオス領内最南部、カンボジアとの国境付近にあるシーパンドーンと呼ばれる無数の島々などの著名な観光地の紹介とあわせ、チャンパーサック県のライス最南部にあるカンボジアとの出入国ポイントの状況についても言及。最後は、カンボジア北東部にあるストゥントレン州の州都ストゥントレン(Stumg Treng)が登場。ラオスから下ってきたセー・コーン川がメコン河に合流するところにある大きな都市。古くはシエンテーンと呼ばれ、ラーンサーン王国やチャムパーサック王国の一部で、ラオス南部との関係は深く、ラオス内戦時には多くの難民がラオスから避難してきて、町には現在も多くのラオス人が暮らしているという興味深い情報も紹介されている。

第10章 カンボジアが近い ーワット・プーとシーパンドーンヘ
パークセーチャムパーサックチャムパーサック ▼パークセーチャムパーサックシーパンドーン  ■コーン島 ■小コーン島 ■ノーン・ノック・キアン(ラオス最南部にあるカンボジアとの出入国ポイント) ■ストゥントレン(カンボジア北東部にある同名の州の州都)

ラオス全土 1都17県
(1) ヴィエンチャン都(首都ヴィエンチャン)
(2) ポンサーリー県(県都ポンサーリー)
(3) ルアンナムター県(県都ルアンナムター)
(4) ウドムサイ県(県都サイ(ウドムサイ))
(5) ボーケーオ県(県都ファイサーイ)
(6) ルアンパバーン県(県都ルアンパバーン)
(7) フアパン県(県都サムヌア)
(8) サイニャブーリー県(県都サイニャブーリー)
(9) シエンクワーン県(県都ポーンサワーン)
(10) ヴィエンチャン県(県都ヴィエンカム)
(11) ボーリカムサイ県(県都パークサン)
(12) カムムアン県(県都ターケーク)
(13) サワーンナケート県(県都サワーンナケート<通称>)
(14) サーラワン県
(15) セーコーン県
(16) チャムパーサック県
(17) アッタプー県
(18) サイソムプーン県(県都アヌウォン)

外国人に開かれている国境(本書掲載時)
<タイとの国境ポイント>
・第1友好橋 タードゥーア(ビエンチャン県)タイ側ノンカーイ。橋は1994年開通
・第2友好橋 サワンナケート(サワンナケート県)タイ側ムクダーハーン。橋は2006年開通
・第3友好橋  ターケーク(カムムアン県)タイ側ナコンパノム。橋は2011年開通
・第4友好橋 フアイサーイ(ボーケーオ県)タイ側チェンコーン。橋は2013年開通
・ムアングン(サイニャブーリー県)タイ側ファイコーン(ナーン県)
・ケーンターオ(サイニャブーリー県)タイ側ターリー(ルーイ県)
・パークサン(ボーリカムサイ県)【船】タイ側ブンカーン(ブンカーン県)
・ワンタオ(チャムパーサック県)タイ側チョンメック(ウボンラーチャタニー県)
<ベトナムとの国境ポイント>
・ソップフン(ポンサーリー県):ベトナム側タイチャーン
・ナムソーイ(フアパン県):ベトナム側ナーメーオ(Na Meo)  Thanh Hoa方面へ
・ナムカーン Namkan(シェンクアーン県):ベトナム側ナムカン(Nam Can)Vinh方面へ
・ナムパーオ(ボーリカムサイ県):ベトナム側カウチェオ(Cau Treo)
・ナーパオ(カムムアン県):ベトナム側チャーロー (Cha Lo)
・デーンサワン(サワンナケート県):ベトナム側ラオバオ (Lao Bao)
・ラライ(サーラワン県)
・プークーア(アッタプー県):ベトナム側ブーイ(Bo-y)
<カンボジアとの国境ポイント>
・ノーンノックキアン(チャムパーサック県):カンボジア側プラ・プレン・クリアン
・ウーンカーム(チャムパーサック県):カンボジア側ドンクラロー(このルートの状況不明)
<中国との国境ポイント>
・ボーテン(ルアンナムター県):中国側は西双版納・磨憨(モーハン)。景洪方面へ

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