メコン圏に関する中国語書籍 第4回「腾冲史话」(谢 本书 著,云南人民出版社)

メコン圏に関する中国語書籍 第4回「腾冲史话」(谢 本书 著,云南人民出版社 )


云南名城史话丛书「腾冲史话」(谢 本书 著,云南人民出版社 昆明, 2002年1月発行)

本書は、雲南人民出版社から刊行されている”雲南名城史話叢書”の騰冲(Teng Chong)編。この雲南名城史話シリーズでは、約·100頁強のハンディサイズで、雲南名城各地の古代から現代にいたる歴史読み物を1話数頁以内に収めていて、気楽に読みやすいものとなっている。この騰冲編では、下記の目次のように全部で22の史話が用意されている。騰冲は、雲南省の西部国境近くに位置し、昆明からは約700kmの距離にあり、怒江(サルウィン河の上流)の西岸側にある街で、現在は保山地区に属する(新中国建立後、保山地区に属していた騰冲県は1956年に徳宏タイ族ジンポー族自治州に属するも1963年に再び保山地区に属することとなった)。

この地は、前漢時代には”乗象国”の滇越と呼ばれ、武帝の時に、前漢の版図に組み入れられ、滇越は益州郡管轄に属した。後漢時代には、永平12年(紀元69年)に新設された永昌郡哀牢県に属し、中国からビルマやインドへ抜ける古代”西南シルクロード”上での要衝の地であった。この地に”騰冲”の名称が使用されるのは、元代の至元14年(1277年)、大理路管轄下に騰冲府が置かれた時だ。それ以前の大理期、元初には軟化府、藤充府、藤越州、藤越県が置かれてきた。騰冲の地理的位置から、仏教がインドから中国に伝わる陸上交通路の一つにあたり、南詔大理時期の騰冲の仏教寺院遺跡7ヶ所や仏教芸術の紹介についても1話が充てられている。

 騰冲の建城(唐代騰充城)は唐の得宗時期(779~780年)に、現在の県城西北1キロの地に築かれた土城であったが、明代の正統年間(1436~1449年)に、現在の騰冲県城に石城が建てられ(1445年建設開始、1448年に竣工)、”極辺第一城”と称された。この騰冲石城の築城をきっかけとなったのが、明代の正統年間に起こった現在の徳宏州地区を中心としたタイ族(明王朝から任命された麓川平緬宣慰司宣慰使)の反乱で、明王朝は王驥率いる大軍でこの反乱を征圧しようとした”三征麓川”で、騰冲は明軍の戦略基地となり、双方の争奪地となった。王驥による建議で築城された”極辺第一城”と謳われた騰冲石城は、約500年後の1944年、1942年5月騰冲を占領していた日本軍に対する中国滇西遠征軍の反抗で城壁ともども破壊されている。

 明代、清代の城の様子や文化についての紹介もあるが、騰冲の町が、中国の歴史的事件にどう関わったかという史話も大変興味深い。明代正統年間の三征麓川と騰冲だけでなく、明王朝の残存勢力が清朝に対抗し南方各地で政権を建てた南明政権で最も影響力が大きかった桂王永歴帝が清軍に追われ昆明から騰冲を経てビルマに逃げる時の話とか、1856年、蒙化(現在の雲南省巍山)一帯で蜂起し大理に16年もの間革命政権を樹立した杜文秀が自害した後も清軍に抵抗していた杜文秀起義軍の最後の拠点が騰冲であったこと、更には清朝末期イギリスがビルマから中国西南部への侵略を進める過程で起こったマーガリー事件や片馬問題での騰冲の関わりといった史話だ

 清代には、この地に騰越州が置かれ、後に騰越直隷庁、騰越庁に改められ、辛亥革命で清朝滅亡後の中華民国元年(1912年)、騰越が騰冲に改められ、騰冲府、さらに府県合併で騰冲県が設けられている。辛亥革命では、武昌決起(1911年10月10日)の後、革命機運の高かった雲南省でも昆明で重九起義(1911年10月30日)が起こっているが、昆明より先に雲南省で一番最初に勃発したのは騰越(騰冲)であった。これが張文光(1882~1914年)が中心となった騰越起義(辛亥滇西起義)で、1911年10月27日に実行され、一昼夜の戦闘後、起義軍の勝利に終った。騰冲は1942年5月、日本軍に占領され、同年6月6日には傀儡の騰冲県政府の設立が宣布され、日本軍の統治下に入るも、中国滇西遠征軍の反抗で、1944年9月14日、騰冲城が中国軍により取り戻されている。その後の国共内戦の結果、1949年12月15日、中国解放軍による騰冲の解放が宣布された。

 ”騰冲的歴史文化名人”では、騰冲は特に近代以来、著名人を数多く輩出しており、李珍国、左孝臣、劉輔国、寸開泰、李学詩、李曰垓、伍集成など約20人の名前が挙げられているが、そのうち5人の人物について詳しく紹介している。その騰冲出身の5人とは、艾思奇(1910~1966年)、李根源(1879~1965年)、楊青田(1879~1980年)、梁正中(1890~1950年)、寸樹声(1896~1978年)。最後の話は”騰冲火山地熱風景名勝”と題し、史話というより、騰冲の風景名勝案内となっている。中国3大地熱地区の一つである騰冲の県城郊外西南20kmにある熱海という約9平方kmの広さを持つ温泉郷、県城周囲100キロ余りの範囲内だけでも大小70余りの火山が分布しているという騰冲火山群に加えて、”杜鵑花の世界”が紹介されている。このツツジの花【杜鵑花(dujuanhua)】については、世界植物学界を驚かせた騰冲県大塘村の大ツツジにまつわる話が大変興味深い。

目录
极边第一城概论 
/1
从考古资料看腾冲  /5
“乘象之国”的滇越 
/8
汉代五铢钱在腾冲 
/12
从藤充到腾冲 
/14
南诏大理时期的腾冲佛寺 
/19
三征麓川与腾冲 
/24
明代建筑的石城 
/28
南明永历帝西逃过腾冲  /32
徐霞客笔下的腾冲  /35
清代的腾越城  /38
马嘉理事件  /44
明清之际的腾越文化  /50
杜文秀起义军的最后据点  /55
片马风云中的腾越  /59
辛亥滇西起义  /64
民国初年的腾冲  /70
腾冲的沦陷及其敌后斗争 /78
腾冲的光复 /87
腾冲的重建及其解放  /91

腾冲的历史文化名人  /95
腾冲火山地热风景名胜  /113
后记  /121

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