メコン圏の写真集・旅紀行・エッセイ 第16回「ミャンマー東西南北・辺境の旅」(伊藤京子 著)

メコン圏の写真集・旅紀行・エッセイ 第16回「ミャンマー東西南北・辺境の旅」(伊藤京子 著)

「ミャンマー東西南北・辺境の旅」(伊藤京子 著、株式会社めこん、2002年11月発行)

〈著者紹介〉伊藤 京子(いとう・きょうこ)
米国ジョージア州の短大を卒業後、画廊の企画広報、編集プロダクションを経てフリーランス・ライター&フォトグラファーに。旅や育児に関しての記事を多く手がける。ミャンマーに1年半滞在し、各地の取材のかたわらビルマ舞踏を学ぶ。2児の母。一般旅行業務取扱主任者。(本書紹介文より)ー本書発刊当時ー

メコン圏をはじめとするアジアに関する良質な書籍の出版活動を続けるめこん社が、2001年7月発行の第1弾『雲南・北ラオスの旅』(樋口英夫 著)で新たに「くろうとの旅」シリーズを始めたが、本書はこのシリーズの第2弾。ミャンマーの特に地方部に関する詳しい旅情報の本がほとんどないこともあって、ミャンマーの各地方部を深く知り旅をしたいと考えていた人にとっては待望の書であろう。また「くろうとの旅」とはあるが、ミャンマーにまだ行ったことのない人やミャンマーについてまだあまりよく知らない方にも、十分に楽しく読みやすい内容になっている。本書のカバーする範囲は下に記した目次で明らかなように、ミャンマーの南部、東部、中央部、北部、西部とかなり広範囲に多数の土地を著者が旅し紹介している。

南部のモン州では、ゴールデンロックで有名すぎるチャイティヨーだけでなく、かつてのモン王国の都タトンや、モン州の州都でジュエゴーティという柑橘系の果物の名産地でもあるモーラミャインとその周辺の町々が詳しく取り上げられている。小説『ビルマの竪琴』に出てくるムドン収容所があった場所のムドン、泰緬鉄道の終点だったタンビュザヤ、水中寺院(イェレペヤー)で知られるチャイッカミなどだ。モン州南部のイェーや最南部のタニンダーリ管区は取り上げられていないが、モン州の東隣りに位置するカイン(カレン)州については、州都パアンとタマニャ山について書かれている。

 東部ミャンマーとして、インレー・タウンジー周辺とシャン州東部のチャイントン、中部ミャンマーとして、マンダレー、パガンとマンダレーからのショートトリップとしていくつかの町がとりあげられているが、これらは本書の中でも多くのページが割かれている。北部ミャンマーではミャンマー最北のカチン州から、州都ミッチナー、エーヤワディ川の始点ミッソン、エーヤワディの河港町で大戦中リド・ロードの要衝であったバモーが載っている。西部ミャンマーでは、チン州の町はまだないが、ベンガル湾に面したラカイン州(アラカン)のガパリやカンターヤとビーチリゾートが紹介されている。

 単なる旅情報ガイドにとどまらず、著者自らが各地を旅した旅体験談やいろんなエピソード、コラムなどを交えた旅紀行エッセイでもある。見開きページから小さいものでも半ページサイズの130枚近くもの写真でいっぱいで旅の写真集ともいえる仕上がりとなっている。しかも文中の写真はすべて2002年に撮影したものと、本書で詳細に掲載されている各種情報ともども新鮮だ。それぞれの町についてやや広域な地図からローカルな市街地の地図が用意され、詳細なアクセス情報から宿泊先や価格情報など、情報は詳細にわたり大変親切で実用的だ。

 文章や写真で紹介されているのは、いろんな旅のスポットだけでなく、ミャンマーの人のいろんな表情もある(著者のお子さんを写した写真もあるが、キャプションに明記はないのでどの写真かは普通にはわからない)。歴史に関する紹介記述もたくさんあり歴史好きの人も楽しめるが、食べものに関する文章や写真も少なくなく、食好きの人には嬉しいはずだ。タマニャ巡礼のための精進料理、柑橘系の果物ジュエゴーティ、マンダレー土産にかかせないラーモンというお菓子、メイミョのイチゴ製品、食べるお茶のサラダ(ラペトウッ)、カチン料理、ミッチナー名物の極上米カッチョー米を使った麺などなど。タンドウェ(ラカイン州)のダマテッサという寺院のミイラ化した僧の死体の写真などまである。

 著者のご主人が日本で出会ったミャンマー国籍のビルマ人で、夫や家族、親戚、また親友の夫妻らとミャンマー国中を旅しており、現地の人たちと一緒の旅からか、日本人だけでは得がたい話もあり、ミャンマーの人々との会話やミャンマーの人々の感じ方や声なども数多く文章に盛り込まれている。インレー湖のパウンドウー寺院に同行の信心深いビルマ人夫婦とともに泊まり、日中とは異なる夕焼けのインレー湖の美しい情景を味わえたことや、日本人観光客には余り馴染みがない、タウングー王朝の王都であったタウングー(バゴー管区)も取り上げられているが、著者の親戚がおられ著者自身以前一時出家をし指導を受けた僧侶の僧院がここにあるとのことだ。一般に余り知られていないミャンマー各地のいろんな町や多彩な魅力を、本書はよく紹介してくれている。それだけに、まだ諸事情により安全で自由な旅ができないミャンマー各地の更なる「辺境」や各方面の国境に近い地帯についての旅の本についても、いつか同じ著者に著してもらえないかと、勝手ながら期待してしまう。

本書の目次

南部ミャンマー
ヤンゴン ヤンゴン
ヤンゴンからモーラミャインヘ
バゴー チャイティヨー ★コラム:列車の旅 タトン パアン タマニャ山
モーラミャイン
モーラミャイン ムドン タンビュザヤ チャイッカミ サッセ

東部ミャンマー
インレー・タウンジー
ニャウンシュエ  インレー湖  タウンジー  ピンダヤ
チャイントン
チャイントン ★コラム:飛行機での移動

中部ミャンマー
マンダレー マンダレー ★コラム:長距離バスの旅
マンダレーからのショートトリップ
サガイン  ミングン  モンユワ ★コラム:ミャンマーの超天然化粧品・タナカ
ピンウーリン(メイミョ) チャウメ ★コラム:飲むお茶・食べるお茶
バガン
ニャウンウー バガン ポパ山 メイッティラ タウングー

北部ミャンマー
ミッチナー
ミッチナー バモー ★コラム:エーヤワディ川の船の旅

西部ミャンマー
ガパリ
ガパリ タンドウェ(サンドウェイ) カンターヤ ●列車のタイムテーブル

本書掲載の主な写真
《ヤンゴン》
シュエダゴン・パゴダ境内
●中華街の豚のモツ屋
●スーレ・パゴダを中心に東西に伸びるマハバンドゥラ通り
●スーレ・パゴダからヤンゴン中央駅へと伸びるスーレ・パゴダ通り
●ボージョーアウンサン・マーケット

  《南部ミャンマー》
バゴーのシュエターリャウン寝釈迦仏
●バゴーのチャイプーン・パゴダ
海抜1100m近いチャイトー山頂にあるゴールデン・ロック
●チャイティヨー・パゴダ
●チャイトー山麓の町キンプン
●タマニャ山
●モーラミャインのマハムニ・パゴダ
●モーラミャインの市場のジュエゴーティ
●モーラミャィンのダウンタウン
●ムドンの寝釈迦ウィンセイントウヤ
タンビュザヤ共同墓地
チャイッカミの水中寺院
サッセの浜にあるレストラン

《東部ミャンマー》
ピンダヤとパオ族
●カウンディンにある天然温泉の露天風呂インレースパ
ニャウンシュエ郊外
●インダー族の漁師
●インレー湖上のインダー族の水上集落
●インレー湖畔最大のナンパン市場の船着場
●シャン州南部の仏教徒の信仰を集めるパウンドウー寺院
●インレー湖半のガーペー僧院の名物の猫の輪くぐり
●タウンジー・ホテルに隣接するシャン州の迎賓館
●ピンダヤ洞窟
●チャイントンの僧院Wat Pha That Jom Mon
●チャイントンのノントーン湖とWat Jong Kham
●チャイントンに花売りに来ていたアカ族の女の子
●チャイントンのマーケット

《マンダレー》
水かけ祭り
●マハムニ・パゴダ
マリオネットショー
●”月の菓子”という意味のラーモン
●シュエナンドー僧院
●マンダレーヒルの中腹にある「予言を与え給う仏陀」の像
●アマラプラのウペイン橋

《中部ミャンマー》
サガインの丘の頂
●サガインのカウンムードー・パゴダ
サガインのウミントンゼ・パゴダ
●ミングンのシンビューメー・パゴダ
●ミングンの鐘
●ミングンのパトゥードージ・パゴダ
●漆器が有名なモンユワ郊外のチャウッカ
●モンユワ郊外のタンボーディ・パゴダ
●タバコが有名なエーヤワディ河岸のパコック
●ピンウーリン(メイミョ)のティリミャイン・ホテル
●ピンウーリンのガンダマーミャインホテル
●ピンウーリンの洞窟寺院ペイチンミャウン
●国立カンドジー植物園
●食べるお茶の「ラペソー」と飲むお茶「ラペチャウ」の一大集散地チャウメの町
●ポパ山
●メイッティラ市街
●メイッティラで有名なビルマ料理の店シュエオンピン

《パガン》
ニャウンウーのバスターミナル
●ミンガラーゼーディ・パゴダ
タビンニュ寺院の入り口の土産屋
●タラバ門
●アーナンダ寺院
●ダマヤンジー寺院
●ガドーパリン寺院
●グービャウジー寺院
●ミンカバ村の漆工房
●かつて王の妃はプワソー村からと言われるほど美人が多かったというプワソー村
●スラマニ寺院
●ペヤトンズ寺院

《北部ミャンマー》
ミッチナーの教会Geis Memorial Church 1897
●エーヤワディ川の始点ミッソン
●ミッチナーの寝釈迦仏
●バモーの港
●バモーの一角で出会ったシンピュ(得度式)の男の子
●バモー~マンダレー間最大の景勝地、切り立った岩壁が間近にせまるドゥディヤミッチン

《西部ミャンマー》
ガパリ・ビーチ
●ガパリの中級ホテル Silver Beach Hoterl
●カンターヤの浜

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