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北東インド旅行記 ~「辺境」の地を訪ねて~ 第6回 ナガランド編(6)(中園琢也さん)
- 2024/4/20
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北東インド旅行記 ~「辺境」の地を訪ねて~ (中園琢也さん)
第6回 ナガランド編(6)
中園琢也:
都内在住の一般企業勤務。学生時代よりアジア各地を旅行。旅先での関心領域は食文化を中心とした生活文化全般、ポップカルチャー、釣りなど。
1.はじめに
(1)北東インド7姉妹州(セブンシスターズ)
(2)旅程
2.ナガランド州
(1)基礎情報
(2)ナガランド州と周辺地域の地図情報
(3)ナガランド州概要 ①ナガの人々 ②言語 ③宗教 ④歴史 ⑤文化 ⑥食 ⑦産業 ⑧観光業 ⑨自然環境 ⑩その他
(4)ナガランドの玄関口 ディマプル
(5)コヒマへの移動
(6)コヒマの宿
(7)戦跡 ①インパール作戦 ②コヒマの戦い
(8)コヒマの地形 ~階段と坂道だらけの街~
(9)キリスト教
(10)市場
(11)コヒマでの外食事情と食文化
(11)コヒマでの外食事情と食文化
ナガランド州やマニプール州では、食堂のことを「ライス・ホテル(Rice Hotel)」と呼ぶ。宿泊するホテルと区別されるが、時々「Hotel」の看板のみの食堂もあったりするからややこしい。ちなみに南インドなどでもレストランや食堂のこともホテルと呼ぶそうだ。コヒマの街は、外食産業も観光産業も盛んでないからか、街の賑わいのわりには、レストランや食堂はあまり見かけなかった。旅行者はホテル内で食事を済ますのが一般的らしい。
ナガ料理の食堂は、豚肉(一部の店は鶏肉や魚なども)とタケノコや納豆などの煮込み料理が2~3種類、それをセットにしたターリー(定食)が一般的で、バラエティに富んでいるとはいいがたい。なお、ベジタリアンはインド本土ほど一般的ではなく少数派。
また、日曜日は、レストランや食堂は閉店しており、恐らくキリスト教徒ではないチベット人の路上屋台とホテル付属のレストランくらいしか営業していなかった。
チベット人屋台は、街の中心地にあるチベタン・マーケットというビルの前の路上に数軒あった。夕刻のみ数時間営業し、ほとんどの店がチベット料理のモモ(チベット式小籠包)と血入りソーセージしか取り扱っていなかった。サモサ屋台も1軒見かけた。市場など街中では屋台はめったに見かけなかった。
ファストフード店は、ドミノピザが1店、バスキン・ロビンス(サーティーワン)が1店、あとは現地ローカルが数軒。他には韓国料理を提供する店を数軒見かけた。あとはカフェが数軒あるらしい。こだわりのナガランド産コーヒーを提供する店もあるようだが、残念ながら時間がなかった。
ナガの人々は、食材に禁忌がなく、可能なものは何でも食用とすると聞いていたので、レストランでも野生生物や昆虫、キノコ類など山の幸の料理が食べられるかと期待していたが、全く見かけなかった。聞いた話によると、ハチの子などの昆虫類は、非常に高価なもので、レストランなど外食ではなく祝日など親戚一同集まるようなイベント時に家庭で食するものらしい。
あとは、特徴的なのは発酵食品が多いこと。かつて、塩は貴重品だったからか無塩発酵によるもので、乳酸菌やアミノ酸に富んでおり、料理に旨味をもたらしている。特にタケノコの漬物が普及している。タケノコは、そのまま生のものだけではなく、漬物にしたり、乾燥させたりなど、様々な形で利用する。「アクニ」という名の納豆は、日本のような藁ではなく葉でくるんでつくられる。日本のような糸を引くものではないが、納豆特有の臭いがする。ペースト状に粒を潰したり、粒が残った状態で使用したりして、煮込み料理やスープなどに使われる。また、ヤムイモの葉は万能食材で、パテにして燻製し乾燥させたものをアニシ、発酵させてパテにしたものをヌオシと呼び、煮込み料理で味噌のような使い方をする。
NOUVA Restaurant (Hotel Lavisto)
コヒマ到着の日曜夜、どこの食堂も休みで、夕食が食べられる店が見つからず。Google Mapを頼りに街中を彷徨いつつ、旅行者向けでローカル料理はあまりないかもしれないが、ホテルのレストランなら営業中だろうということで、訪れたお店。想定通り、メニューは洋風や中華、インド料理ばかり、ナガ料理は2品だけ。豚肉・鶏肉・魚のタケノコ煮込のターリーセット、スペシャルローストポークのターリーセットのみ。せっかくなのでスペシャルな後者(499ルピー、約900円)を注文。1泊6000円程度のお高めのホテルなので、レストランも値段は高め。
写真:ホテルのレストランで旅行者向けなので、メニューはお洒落で豪華。
写真:数ページあるメニューの中で、ナガ料理はこれだけ。
写真:店内の風景。ナガランド滞在中6日間で、唯一ここで外国人旅行者を見かけた(2~3人のグループ1組でタイ人のようだった)。
写真:レストランの名を冠したスペシャルセット。ローストポークと茹で野菜のターリーセット。
写真:ローストポークは、生焼けを心配したが、表面は焦げ、中まで火がしっかり通って、パサパサを越えてカチカチになるほどだった。若干の獣臭がした。
写真:ナガ料理定番の豚肉と発酵タケノコの煮込。具が少なめ。
写真:インドではどこの地方でも出てくるダル(豆カレー)
写真:青唐辛子のアチャール?
The Bamboo Shoot
地元の若者達に人気のナガ料理の食堂。Google Mapでしらみつぶしに探して見つけた(Razhu Point交差点近く、ドミノピザ向かいのビル3階)。レビューが非常に高評価(恐らく市内ではトップクラス)。燻製豚肉とタケノコ、干し魚の煮込セット(280ルピー、約500円)にオプションで、豚の内臓とタケノコ煮込み(150ルピー、約270円)を追加。セットは、ダル(豆カレー)、(メニューによると)豚の汁だとか。どれも美味しかったけど、連日似たような料理ばかりで飽きてきた。レジカウンターにお持ち帰り用のアクニ(納豆)の袋詰めが売られていたので購入。Rs180(約330円)もしたが、貴重な買い物。
写真:食べた料理の記録としてメニューの写真にマーカーを引いた。
Smoked Pork with Bamboo Shoot and dried Fish(豚の燻製肉、タケノコ、魚の干物の煮込の大皿セット) Rs280
Pork Innards with Bamboo Shoot (豚の内臓とタケノコの煮込) Rs150
写真:写真は閉店間際だったので空いているが、入店時は小奇麗な格好をした現地の若者グループ客でほぼ席は埋まっていた。コヒマは大学など高等教育機関が多いので、学生なのかもしれない。グループ客は男性のみ、または、女性のみのどちらか。東南アジアに近いとはいえ、男女同席せずというのは、やはりインドっぽいのかも。
写真:燻製豚肉とタケノコ、干し魚の煮込セット(右端)に、オプションで豚の内臓とタケノコ煮込み(左端)を追加。セットで付いたのはダル(真ん中左)、メニューによると豚汁?(真ん中右)。
写真:豚バラブロック肉の脂身が燻製によって固くねっとりした食感に。干し魚らしき旨味もあって美味しかった。
写真:豚モツとタケノコの煮込み。日本のモツ煮込みが辛くなったような感じで、思ったより臭みがなくて美味しかった。
写真:ダル。一般的なダルより固形分が残ってドロッとしていてボリュームがあった。
写真:メニューによると「Pork Broth」なので豚汁、豚肉スープ? ダルみたいな印象だった。
写真:ブロッコリーやトマト、人参などの胡麻和え?
写真:ナガ料理定番の茹で野菜。これはオクラと瓜の蔓らしきもの。
写真:チャツネ。ピーマンのような青唐辛子など。
写真:会計時のレジカウンターにお持ち帰り用のアクニ(納豆)の袋詰めが売られていたので購入。Rs180(約330円)もしたが、貴重な買い物。帰国後早速、これを使って豚肉との煮込みを作ったが、なかなか上出来だった。中身は、大豆、唐辛子、生姜、ニンニク、油、塩、各種スパイス類。「Pickle」ということだが、確かにそのまま食べると唐辛子やスパイスで和えた干し納豆みたいな感じだったので、おつまみにもいいのかも。
Sumi Rice Hotel
宿の妹氏に近所にナガ料理を食べるのに良い店がないか聞いたところお勧めされたお店(オキング病院向かいのビル3階)。南インドなどではレストランや食堂のこともホテルと呼ぶそうだが、この地では食堂のことを「ライス・ホテル」と呼ぶ。
この辺りの飲食店は閉店時間が20時までと早く、19時過ぎに行ったら、既にいくつかのメニューは売り切れ。主要メニューのPork Bamboo Shoot(220ルピー、約400円)とGreen Tea (20ルピー、約36円)を注文。
今回はフレッシュなタケノコを使っていたようで(お店によって発酵したものや乾燥したものなどを使うこともある)、シャキシャキな食感、豚肉も脂身が程よい量で、非常に辛かったものの美味しかった。ドリンクがお茶しかなく、熱い緑茶を頼んだが、辛さを和らげるものではなく、ダル(豆カレー)と茹で野菜で箸休めならぬ舌休めしつつ食べることができた。
写真:シンプルなメニュー。いろいろ頼んでみたかったが、「Pork Bamboo Shoot(豚肉とタケノコ煮込)」しか残っていなかった。
写真:店内の雰囲気。閉店近くだったので、空いていた。
写真:緑茶(20ルピー、約36円)
写真:Pork Bamboo Shoot(220ルピー、約400円)
写真:フレッシュでシャキシャキしたタケノコがたくさん。
写真:ダル(豆カレー)
写真:チャツネはゴーヤと青唐辛子など。
写真:茹で野菜は青菜。
写真:トマトチャツネ
ファストフード店
街をブラブラ歩いて見つけたのは、ドミノピザとバスキン・ロビンス(サーティーワン)。バスキンの方は、大手銀行も入居する立派なビルのテナントだった。内観も先進国の店舗と変わらない様子だった。
チベット屋台
宿の近く、チベタン・マーケットというビルの前の路上に、チベット人屋台が数軒あった。キリスト教徒でないからか日曜も営業していて重宝した。チベット人屋台は、街の中心地にあるチベタン・マーケットというビルの前の路上に数軒あった。夕刻のみ数時間営業し、ほとんどの店がチベット料理のモモ(チベット式小籠包)と血入りソーセージしか取り扱っていなかった。サモサ屋台も1軒見かけた。市場など街中では屋台はめったに見かけなかった。
コヒマにおけるチベット人コミュニティについて調べたところ、初期のチベット人入植者は1970年代にやってきて古着を売って生計を立てていたとのこと。1959年のチベット蜂起およびダライ・ラマ14世の亡命以降、多くのチベット人がインドやネパールに亡命しており、その一部がコヒマに定住したと思われる。2014年時点の記事では、約20家族が居住しているとのことで、数年前までは50家族以上いたもののビジネスの減少により減ったとのことだった。現在は、コロナ禍もあったので、更に減っているかもしれない。
写真:どの店もチベット人女性が切り盛りしている。
写真:取り扱う料理はモモ(チベットの蒸し餃子)とブラッドソーセージ。
チベットではソーセージの肉はヤク肉、羊肉、牛肉が一般的だが、コヒマのそれは不明。モモの具はスパイシーで何の肉かはよくわからなかった。
写真:チベタン・マーケットという名前のビル。
写真:ビル廊下の案内。衣料品、靴、バッグ、アクセサリー類が売られている。
写真:2階に登ったが、ほとんどの店舗でシャッターが下りており、営業しているのは一部のみ。