情報DB(現代史)「 1979年1月7日のプノンペン陥落とその後に続く攻防戦」関連記事(三留理男氏のカンボジア領潜入レポ)<毎日新聞1979年1月29日>

情報DB(現代史):「1979年1月7日のプノンペン陥落とその後に続く攻防戦」関連記事(三留理男氏のカンボジア領潜入レポ)<毎日新聞1979年1月29日>

地雷避けつつ・・・カンボジア領へ  三留理男氏が潜入ルポ寄稿
バンコク支局1979年1月28日

(写真)ポル・ポト軍の前線基地跡を調べるタイの民兵
(写真)”戦利品”をかき集めるタイ民兵
(写真はいずれもカンボジア領内で、(1979年1月)28日 三留理男氏撮影)

カンボジアは、ポル・ポト政権を倒し、新国家を宣言したカンボジア民族救国統一戦線(ヘン・サムリン議長)が首都プノンペンを中心に政権の整備に乗り出している一方で、巻き返しに出た旧ポル・ポト政府軍が、各地でゲリラ戦を展開している。これにともない、タイ東部国境沿いにカンボジア西部でも、依然双方の間に激戦が続いている模様。砲声がとどろくこのカンボジア領内に、フリーの報道写真家、三留理男氏は(1979年1月)28日、タイ民兵とともに入り、貴重な写真と現場報告を本紙に寄せてきた。(1979年1月)7日のプノンペン陥落とその後に続いた攻防戦の中で、タイ側からカンボジア国境を越えて潜入したのは、日本人ジャーナリストとして初めてである。(以下は同氏のルポである)

ポル・ポト軍の前線基地か 各所に自動爆発装置
タイ東部国境アランヤプラテートから東北へ約50キロのアンシラー村から、(1979年1月)28日朝、国境を越えてカンボジア領に入った。同村はカンボジア国境へ約3キロしか離れておらず、1975年春、クメール・ルージュがカンボジアを制圧した直後から、しばしば、同軍兵士とタイ警備兵の間にこぜり合いのあったところ。同村の民兵指揮者によると、一両日来、隣接のカンボジア領内に盛んに砲声音が聞こえ、火の手が上がるので、視察に行くという。私(三留記者)は頼んでこれに同行した。

M14型ライフルや手投げ弾で武装したアンシーラ村民兵約30人と一緒に、地雷を避けつつ、時間にして約5時間、10キロ近くカンボジア領に入ると、森林を切り開いたらしい平地に4棟ばかりの建物を集めた区画があり、1棟を残し、いずれも数時間前に火をかけられたらしく、くすぶり続けていた。

民兵指揮者によると、ポル・ポト政府軍前線部隊の司令部の一つで、迫って来る救国戦線軍やベトナム軍の攻撃の前に逃走したのではないかという。民兵が銃を腰だめにして近づくが、内部に人の気配はない。しかし、周囲はとがらした竹を埋め込んだ落とし穴や、手投げ弾を針金でつないだ自動爆発装置が各所に張りめぐらされ、危険極まりない。それらをよけつつ、本部らしい一番大きな建物の焼け跡をのぞくと、地下には大きな壕が掘られており、水をたくわえた大きなかめがいくつか残っていた。石油ドラムカンも6本ほどあったが中身はいずれも空っぽ。

指揮者の話によると、100人ないし10人規模の旧ポル・ポト政府軍兵士がここに居住、前線基地としていた模様。まわりには民家は一軒もないが、近くには畑が耕されて、トマト、キュウリ、タバコの葉などが栽培されていた。

またその近くの林の中には、中身を抜かれた巨大なガソリンタンクが捨てられており、まわりの草がまだ湿っているところから、よほどあわてて撤収したことがうかがわれる。プノンペンから400キロ近く離れたこの前線基地に首都陥落の報がいつとどいたかわからぬが、救国戦線軍の接近を何らかの方法で察知していずこかへ逃げのびたのだろう。司令部跡を民兵たちが調べている間もひっきりなしにまわりで砲声が響いている。再び地雷や落とし穴を用心しつつタイ領内に戻ってきたとき、脂汗で全身はべっとりぬれていた。

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