メコン圏に関わる写真家:青柳健二さん (1958年 山形県河北町生まれ)

雲南省、メコン河の魅力にとりつかれている写真家。1958年5月山形県河北町生まれ。写真集『メコン河ーアジアの流れをゆく』(NTT出版、1995年)、エッセイ『メコンを流れる』(NTT出版、1995年)などの著者。

〈2000年9月掲載〉

雲南省、メコン河の魅力にとりつかれている写真家がいる。1958年5月山形県河北町生まれの青柳健二氏だ(今年42歳)。このメコンプラザでも『メコン・フォトギャラリー』として「メコン悠々・源流から河口まで」の連載シリーズを担当していただいている。メコン圏に関心をお持ちの方であれば、写真集『メコン河ーアジアの流れをゆく』(NTT出版、1995年)を始め、いろんな雑誌での彼のメコン河やメコン圏に関する作品をご覧になった方も少なくないであろう。

青柳氏は、高校卒業後、地元の山形大学工学部に進み、大学4年生の5月の末、初の海外旅行としてヨーロッパにでかけた。当初は2ヶ月間の予定でおり、夏休み前までに帰ってくれば、当時は就職活動には十分、間に合うはずだった。しかし結果的には8ヶ月もアルバイトをしながら、ヨーロッパに滞在することになってしまい、1年留年する羽目になった。日本を出た途端、今まで自分を縛りつけていた何者かから解放されたような気分がし、旅先でいろんな人と出会い話をしているうちに、大学を卒業しそのまま周囲があたりまえのように考える道を就職という形で進むことに、疑問を感じ簡単には受け入れることが出来なくなっていた。それで大学のことも就職のことも忘れ、アルバイトをしながら旅を楽しみ続けたわけだ。

青柳氏が最初に写真に興味を持ったのは、実はこのヨーロッパ旅行中であった。パリにアルバイトをしながら滞在していた時、書店に立ち寄り、フランス語が読めなくても見れる写真集を手にとってみたら、それが非常に印象的であったという。しかもそのエジプトのシナイ半島を取材した作品は日本人の手によるものであったことが、青柳氏をより一層、写真は言葉を越えて世界共通語になるんだと意識させることになる。

しかし、すぐに写真を撮り始めたわけではなく、日本に帰ってからも、もはや普通に就職する気は全然なくなっていた。大学は1年留年後とにかく卒業だけはしたが、かといって何をやりたいのか、将来どうやっててべていくのかも何ら見えていなかった。ただ何となく、ビジュアルな世界に惹かれだし、デザイン専門学校に通ったり、写真教室に通ったりし始めた。そして、ある写真教室で、先生に自分の写真を見せたところ、えらく誉められ大変気を良くしてすっかりその気になってしまったことが、今の今まで写真をとりつづけることにもなった一因かも知れないと青柳氏は振り返っている。(後でわかったことに、その写真教室の先生は、誰でもやたら褒める人だったらしいのだが)

旅の魅力として移動すること自体がわくわくするという彼は、1984年の新疆ウイグル自治区の旅行の時から、本格的に写真を撮り始めている。そして翌1985年に、なんら事前知識のなかった雲南省大理を訪れた。この旅で、雲南が大好きになり、以後雲南に通うことになり、更にはメコン河流域国にはまりこんでいくことになる。

写真で仕事をというより、旅をし、旅で印象に残った光景をビジュアルに捉えたい、そしてそれを他の人にも見てもらいたいという気持ちでこれまでやってきたが、今後も人が生きている環境を撮りつづけたいという青柳氏だが、メコン圏の中でも、特に雲南省等の内陸部が最高という。きっと故郷の山形の盆地風景と素朴な風情に通じるものがあって落ち着きを感じるのではなかろうか?

そもそも大学4年の就職活動前になって、海外に出たいと思ったのは、こうするのがあたりまえとか言う古臭い日本社会内での「常識」とか「世間」、さらにはうわべだけやわずらわしいだけの日本での人間関係などが、重苦しく感じられ、そういったものから抜け出たかったのであろうと思うが、ヨーロッパ、アフリカ、中東、アジアなど海外を色々旅した上で、雲南やメコン河流域に惹かれつづけるというのは、ただ「海外」という大学卒業前後の時点とは違う何か魅力を見出したのであろう。そしてそれを大切にしているがために、今では日本国内の地方の魅力にも目を向けている。

尚、ホームページの運営も、数多い海外・国内出張にもかかわらず、精力的に続けており、今年1月からは、従来のメコン館・雲南館に加え、新たに「オリザ館」を開設した。これは棚田、稲作、コメをキーワードにアジアの稲を紹介するもので、稲の学名をホームページ名に冠している。

青柳氏が運営しているホームページ

             「電網写真館」(メコン館)http://www.geocities.co.jp/SilkRoad/8486/

           「電網写真館」(雲南館)  http://www.tky.3web.ne.jp/~asiage/

      「オリザ館」

http://www.ne.jp/asahi/aoyagi/kenji/oryza/oryzamenu.html

 

 

 

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