「シャン州東部(チェントン・モンラー)旅行記」(森 博行さん)第8編「モンラーからタチレークを経てタイへ出国」

シャン州東部(チェントン・モンラー)旅行記」(森 博行さん)
第8編 モンラーからタチレークを経てタイへ出国

森 博行:
京都府京都市在住(寄稿時)。ビルマ(現ミャンマー)シャン州を訪れる(2002年4月)。「消え去った世界 ~あるシャン藩王女の個人史」(ネル・アダムス著、森 博行 訳、文芸社、2002年8月発行)訳者

第1編:チェントゥン到着までの途
第2編:チェントゥン到着初日
第3編:チェントゥンの市場
第4編:博物館と寺院
第5編:チェントゥン郊外の山岳民族
第6編:中国国境の町モンラーへの途
第7編:モンラーの町と中国とのかかわり
第8編:モンラーからタチレークを経てタイへ出国

(2002年)4月27日、ホテルをチェックアウト。茶店でビルマ風の麺スープと、マレー半島ならロティと呼ぶ薄いパンケーキとティーの朝食。どれも悪くない。近所の屋台を見ると、タイ風の米麺を食べている。モンラーの市場を見る。外側は新しい建物になっているが、店舗の数や品目はチェントゥン市場のほうが多い。焼き豆腐、納豆、こんにゃくなど発見。
写真:モンラー、朝 の麺屋台

写真:市場、米

写真:市場、豆腐と焼き豆腐
                                       
写真:市場、納豆

手持ちの現金が少なくなり、今日中にタイに出国することに決める。これからチェントゥンに戻り、タイ国境まで行く別の車を探すことにする。まずモンラーのイミグレーションオフィスに寄って、出発の連絡が必要。イミグレーションオフィスの人間が途中の検問所まで同乗させてくれと言うので承諾。外国人の動向チェックも兼ねているかと想像するが、断わる理由はない。
写真:タイ・ルーの寺院

通り道のシャン(タイ・ルー)の村で写真を撮る。ワのチェックポイントの傍で売っていたパイナップルを買い、ミャンマー軍のチェックポイントに隣接した茶店で切って食べる。壁にポスターが貼ってあるが、ミャンマー政府の公衆衛生部局がビルマ人モデルを使って作ったカレンダー。他に、シンガポールのタイガービール(ミャンマーで製造しているらしい)と、インレー湖の近くにある日本・ミャンマー合弁会社のポスターだと言う日本の着物姿が写ったもの。ここからまた、途中のアカ族の村まで乗せてくれと言う別のイミグレーション関係者を同乗させる。
写真:タイ・ルーの村

 チェントゥンに午後1時前に着き、イミグレーションオフィスに直行して出発許可を取る。イミグレーションは、タイ国境に向かう車を決めて運転手と一緒に来いと言う。タイ行きの車を走らせる運転手の家に行き、交渉。基本的に4人相乗りで、今2人客がいるから2人分払ってくれたら直ぐ出発できると言う。タイ側の国境閉門(午後6時、ミャンマー時間で午後5時30分)までに確実に着けるならと承諾する。運転手の話では3時間で着くとのこと。一人あたり350バーツ(タイに向かってはバーツ圏)で、二人分だと700バーツ(約2200円)。
写真:チェントゥンのイミグレーションオフィス

この運転手と再度イミグレーションに出頭。建物は旧ソーボワ宮殿敷地に隣接する植民地風の造りで、元はソーボワの役所か英国行政官の役所だったと思える。車で待っていても良いのだが、建物の中に入ってみる。手入れがされていない古い建物の薄暗い室内に、書類を積んだ机がいくつかあって数人が事務作業をしている。薄暗い階段を上がった二階の部屋で、パスポートを確認する係官が運転手の名前を控え、何か指示する。

ここで、ガイドとモンラーまで出かけた運転手と別れ、タイ行きの車で出発。運転手は町のコピー屋で、パスポートと書類の写しを数枚とる。更に、初日に散策した旧市門の近くで客と荷物を載せる。待っていると、赤トンボのメロディーがどこからか聞こえてくる。ちょっと考えて、日本の歌のはずだから何事かとあたりを見回すと、東京都清掃局と書かれたゴミ収集車が回っている。日本の中古車をそのまま使っていて、音楽もそのまま流れている。
写真:チェントゥン旧市門

チェントゥンの出口で検問所。運転手は車を降りて、事務所にコピーを提出しに行く。通りがかったトラックに乗ったインド系の商人の男は、顔見知りらしい係官と挨拶して手数料を渡していた。道路は未舗装だが、ローラーで固めた4車線は充分とれる幅で、車が少ないから時速60キロ以上出せる。タイ国境への旧道は山頂の英国時代の拠点ロイモイを経由していたが、新道は谷間の登り下りが少ないルートを通る。運転手が、このルートを日本軍がやってきたと、祖母から聞いたと言い出した。日本軍がタイ軍と一緒に来て、今の市場のあたりと病院を砲撃したと聞かされたと言う。それ以上の詳しい話は、知らないとのこと。

いずれにせよ、今日は手持ちの現金が無くなったのでタイに向かうが、次回は陸路で楽にアクセスできるとわかった。数年前に訪れた人の話では、旧道しかなく雨季は通れない劣悪な道で、5~6時間かかるとの情報だった。

チェックポイントがいくつかあり、運転手は車を降りてコピーを提出する。1時間ばかり走ったあたりで、谷が狭くなった数キロだけは未だ工事中。山をダイナマイトで爆破して、パワーシャベルが大きな岩を谷川に落としている。10分ぐらい待って、パワーシャベルが踏み固めた一台分の幅のところを通過。それを過ぎると快調なドライヴ。次の開けた山間盆地がモンパヤッで、中間点。入り口と出口に検問所。盆地部は水田が拡がり、町はタイと同じような感じ。ここでまた、イミグレーションの人間が次の町まで乗せてくれと同乗。道は再び山間に入り、山を抜けると町があって中心部に一本別れ道があるからワンパイあたりか。東に行けばすぐにメコン河で、ラオスと接するところ。

この町を過ぎると高い山は無く、丘陵地を抜ける感じになる。十字架が建って教会があるクリスチャン・アカ族の大きな村を通る。平坦地になったところで、町があるからモンホープンか。ほとんどタイの雰囲気。ここからは、道路沿いの視界に民家が途切れることなく、左手にタチレークの空港を過ぎ、町に入る。ここで午後5時で、町の中は車が多く(タイの車も走っている)、少し焦る。

国境の橋の脇まで行って車を止め、ミャンマー側イミグレーションオフィスに運転手と一緒に出頭。もう帰り支度をしていたが、係官は好意的で、運転手にもう一通パスポートコピーを撮ってくるように指示し、出国スタンプを押す係りの人間が帰ろうとするのを呼び止めて待たせる。
写真:ターキレックの町

 写真:メーサイ

無事、時間ぎりぎりに細い川にかかる橋を渡ってタイ側、メーサイに入国。タイのイミグレーションの係官が、こんな時間ぎりぎりに来るなと軽く文句を言う。チェンライまで行きたいがと尋ねると、バスは終わっているから、フォントンホテルに言えば車を手配してくれるとのこと。ここで、手元の現金は50人民元と200バーツだけ(両方合わせて日本円で1300円ぐらい)だが、タイの各銀行の支店が通りに並んでいてATMから現金が引き出せる。

教えられたホテルで、「チェンライまでの車があるか」と訊くと、700バーツで行くやつが居ると言うのでOKする。やって来たのは、ホンダのCV‐Rの新車に乗った若い兄ちゃん、小遣い稼ぎらしい。道路沿いのバンコク銀行のATMで現金を引き出し、一路チェンライへ。一時間で到着。ミャンマーとは別世界の感がある。

4月28日、午前中、軽くチェンライ観光。ワットプラケオとワットシンの二つの寺院を見てから、店を開けていたエージェントで午後のバンコク行きのチケットが発券できるか尋ねる(日曜日なので、直接空港に行くつもりだった)。OKで、チケットを持って来るから15分ほど待ってくれと言う。その間、店の経営者と話すと、チェンライ発でチェントゥン、モンラー、ツェンフン(景洪)を経由し、ラオスを抜けて戻って来る外人観光客向けのツアーを考えているとのこと。タイから小奇麗なバスで回れれば面白いと思う。

今でも、チェンマイから飛行機でツェンフン(景洪)に飛んでラオス経由でチェンコーン(チェンライから近いメコン河沿いのタイの町)に戻るのと、ラオスをルアンパバーンからヴィエンチャンにまで行って、ノンカイ(ヴィエンチャンからメコン河にかかる橋を渡ったタイ側の町)に戻るツアーは有ると言う。

午後、バンコク着。伝統マッサージに直行、連休で日本人観光客が多く、少し待たされる。

(C)森博行 2002 All rights reserved

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