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「シャン州東部(チェントン・モンラー)旅行記」(森 博行さん)第7編「モンラーの町と中国とのかかわり」
- 2002/6/10
- 「シャン州東部(チェントン・モンラー)旅行記」(森 博行さん), 手記投稿等, 旅行記
シャン州東部(チェントン・モンラー)旅行記」(森 博行さん)
第7編 モンラーの町と中国とのかかわり
森 博行:
京都府京都市在住(寄稿時)。ビルマ(現ミャンマー)シャン州を訪れる(2002年4月)。「消え去った世界 ~あるシャン藩王女の個人史」(ネル・アダムス著、森 博行 訳、文芸社、2002年8月発行)訳者
第1編:チェントゥン到着までの途
第2編:チェントゥン到着初日
第3編:チェントゥンの市場
第4編:博物館と寺院
第5編:チェントゥン郊外の山岳民族
第6編:中国国境の町モンラーへの途
第7編:モンラーの町と中国とのかかわり
第8編:モンラーからタチレークを経てタイへ出国
ミャンマー政府のイミグレーションオフィスに寄って到着を報告し、ホテルにチェックイン。名前は孟拉賓館と漢字で標示(正確には孟の字は孟が篇で旁に力で、モンの音。西双版納の泰族の地名のモンにこの字を当てる)、1泊180人民元、部屋は典型的な中国の地方都市ホテル。旧市街にワ政府の建物があり、中国風の看板に、ミャンマー国家平和発展評議会のキン・ニュンと握手するウ・サイ・リン(ワ・ステートの首領、シャン人、中国名林明賢)が描かれている。この町はお金があるようで、黄色のトヨタセリカとかセルシオなどの新車が走っている。
写真:左がウ・サイ・リン
写真右:特区政府事務所
中国国境は町の北東の端で、門があり、傍に中国の標識が立っている。ミャンマー側の車はこれ以上入れないが、100メートルほど先に中国側の検問所がある。ここに並んだ土産物屋のなかに中国の銀行の出張所があり、クレディットカードのマークも付いているのでキャッシングできるか尋ねるが、中国の銀行発行のクレディットカード以外扱わないと断わられる。
写真:中国国境標識
丘の上に建つビルマ寺院の仏塔に上がると中国側の町Daluo(打洛)が見える。ここからシプソンパンナー(西双版納)の主邑Jinghong(景洪、ツェンフン)まで車で3時間とのこと。寺院には中国人観光団が次々と訪れ、靴を脱げとか女性は塔の上に登るなとかの注意が中国語で標示してある。更には参観順路が指定してあって、脇の土産物屋に導かれるようになっている。
写真:中国、打洛の町を望む
寺院の下に、芥子栽培博物館なるものが造られている。中には、1992年のワ軍とミャンマー軍の和睦以前はどのように芥子が栽培され、アヘンに精製されていたかを示し、今は国連の援助もあって芥子栽培を止め、立派に更正しましたというストーリーが展示されている。
写真;芥子栽培博物館
現在のモンラーの町は、4年ばかりで造られたようで、中国人観光客用の新しいホテル、24時間営業のカジノ、オカマショー(タイの観光地にあるもの。中国人は「人妖」と呼んで人気が高い見世物)、ロシア人ダンスショー、食用珍獣市場(中国人が珍重する動物を売っていて、傍の中華料理店に持ち込むと料理してくれる)、カラオケ、ディスコが並ぶ、中国人向け観光歓楽都市なのである。
写真右:モンラーの町
カジノを覗くと、ゲームはほとんどバカラ(トランプを使った、親が勝つか子が勝つかの単純なゲーム)で、大部屋の最高賭け額が3万元(約40万円)だから、貴賓室とかの賭け額は推して知るべし。こういったカジノが、新市街の中心以外に各大型ホテルにも設けられている。珍獣市場に並んでいるのは、スッポン、蛇、アルマジロ、山猫、梟、鹿、その他、乾したムササビのようなものとか、蝙蝠のようなものとか。ホテルの脇に止まった車のナンバープレートに「蒙」の文字があるから、内蒙古からの車両か。
写真:珍獣市場
夕食後、ポイの会場を見に行くがほとんど仕舞いかけ。その後、カラオケ・ディスコを見に行く。入り口付近には、女の子が何人かいる。午後9時まではカラオケタイムで、中国語のカラオケ。飲み物は缶ビール、缶コーラ等、一杯10元。客にはシンガポール人の団体がいたりするから、雲南観光の途中に組み込まれているのだろう。昼間、珍獣市場のあたりには香港人客もいた。マンダリン(普通話)のカラオケに辟易するが、広東語ポップスも普通話で歌ってしまう。ひとりだけ広東語で歌う人間がいた。
写真:カジノ
ここにいると、まるで中国の植民地にいるような気になる。特にシンガポール人などが、大中華の思いに酔った様子で、この中国人用歓楽租界とも言うべき町で、勇ましい中国歌謡などを絶叫する姿を見ると複雑な気分になる。危ない感じも受ける。ホテルの部屋に戻ると、ドアーの隙間から中国語のバーの名刺が投げ込まれていて、「24小時熱誠服務」とかのキャッチコピーに携帯電話の番号が載っている。場所が「紅灯区」としてあるのがわかりやすい。
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