論考「遥かなるメコンを越えて ナーンの旅、そしてプーミン寺壁画」⑫

論考「遥かなるメコンを越えて ナーンの旅、そしてプーミン寺壁画」
第7章 いよいよ  ナーンの地へ  前編

(蔵屋敷滋生 くらやしき・しげお 投稿時:出版社役員,59歳、千葉県柏市在住)


(写真:ナーンのタラート。今日はバレンタインディ。花屋さんが繁盛)
ナーン市内の見所は5カ所。まずのんびりすること。設問と答えの間に関連性がないようにお思いだろうが、そうではない。小さい街だからのんびり散策してください、という意味である。そうすれば急いでいたときと違ったシーンが見えてくる。住む人と同じ歩調で歩くことが大切で、そのことで街にとけ込めるでしょう。商店で話しかけてみたり、少し覗き見しても構わないと思います。もともと「観光」とは人の生活を覗き見する面もあるのだから。自分を街に同化させたらゆっくりと出かけましょう。

(写真:ワット・プーミン。東の正面から。白壁と3層屋根)
さぁ、ワット・プーミンへ。市内の中央にあるので歩いてどうぞ。付近の市役所内にはTATもある。職員はえらく親切です。街中には英語の案内表示が随所に設置されて迷うことはない。プーミン寺は意外と小さいです。大きなチェデイなどありません。入口は四方にあって正門の東にはナーガの頭部、西に尾部が本堂を挟むように長く伸びている。白亜の壁と造形美に驚くはずです。まず扉の彫刻の素晴らしさに目を見張る。繊細にして華麗そして重厚。建立は1592年、オーラチャウ・チェタプトラ・プローミン王の時代、ただし現在の建物は1867年に再建されたもの(案内板に表示)。

(写真:ワット・プーミン。入口扉の透かし彫り)
本堂(布薩堂)には巨大な四面仏が微笑みかけている。お目当ての壁画は四方の壁に。これでようやく壁画に対面できました。堂内の円柱は12本、黒地に繊細な金色、上部は朱に金色模様が目映い。本尊はスコータイ様式の影響が強いといわれる。やや不思議な四面仏はラオスに見られるものだ。

(写真:ワット・プーミン。ご本尊の四面仏、壁画は四方の壁に)
ここまでやって来た甲斐があったとお思いになるでしょう。半日ここにいても飽きないはずです。休日でもないかぎり地元の人はいません。お坊さんも本堂にいることもありません。完全に解放されています。時の流れを忘れゆっくりとお過ごしください。そして壁画の一つ一つを丹念に見ることをお薦めします。せっかくここまでやって来たのですから。時間など気にせず、時空を越えた100年以上前の生活に浸ってください。隠れていた本当のタイがみえてくるはずです。なにも慌てることはありません。あなたはすでにナーンにいるのですから……。

壁画の意味についてはDavid K.Wyatt教授の『Temple Murals as an Historical Source  The Case of Wat Phumin,Nan』を意訳して紹介します。それまではナーンの名勝地巡りにもう少しお付き合いください。

(写真:ナーン川の東岸。ワット・プラタート・チェーヘーンの巨大なナーガ)

(写真:チェーへーンの2つのチェディ。奥が仏舎利塔)
さらにナーン川を渡った対岸にあるワット・プラタート・チェーヘーンも必見です。金色に輝くチェデイまで巨大なナーガが案内役をつとめてくれるでしょう。ボクはこのサイトの目次に登場するナーガはここのものだと思っている。1355年、ンガムムアン王(先述したパヤオと同名です)の時代に創建された仏舎利塔です。本堂の五層屋根も均衡のとれた美しさに首が痛くなるほどです。北タイの寺院を訪れたとき、まず感嘆の声をあげるのは屋根の美しさではないでしょうか。チェデイ、本堂ともラオスの影響がよみとれる。もともとナーン国はラオスのルアンパバーン王国とは強い絆で結ばれていたのでしょうか。そんな気がします。本堂の本尊はラーンナー様式のものです。

(写真:チェーへーンのご本尊。静かに時が流れる)
もう一度市内に戻ってワット・チャンカム・ウォラウィハーンの本堂裏のチェディに注目してください。この寺院の建立は1406年です。基壇に24頭の象をあしらったラーンナー様式のものです。象の数はチェンマイのワット・チェンマン(1298年建立)の16頭よりも多いのです。

(写真:ナーン博物館。ナーン様式のブッダとの説明)

(写真:ナーン博物館。ガルーダがナーンの至宝・黒象牙を捧げる)
その側にナーン国立博物館があります。ナーンの第63代領主パリットデートの屋敷を一部解放したもので、ナーンの至宝・黒象牙が2階の別室に展示されている。板張りの床に趣を感じる。仏像などはスコータイ様式のものが多いのですが、なかにランサン、ラーンナーとかチェンセン様式もあって、ナーンの文化が混在している様がよく分かる。ナーン様式の仏像は見落とさないでください。細面のスリムな仏様です。

(写真:モーンドーイ山に建つワット・カオノーイ)
モーンドーイ山の頂に立つワット・カオノーイ仏塔もお薦めします(ナーン朝はカーオ朝ともいいます)。モーンの様式を残すといわれる。100年以上前に修理されたとのことだが創建時は不明だそうです。

(写真:ワット・カオノーイのハリプンチャイ様式のチェディ)

ここからは徒歩で30日のルアンパバーンにはモーン寺院があるのですから、なんら不思議はありません。むしろ「タイ族」が移住する以前にはモーン文化が栄えていたの知れません。山頂からナーン市内が一望できます。ナーン川の西岸に沿って市内が開けた様がよく分かります。博物館などの詳細は以下のサイトでどうぞ。

(写真:モーンドーイ山に建つワット・カオノーイ)

       メコン圏の地方の魅力・ナーン県 http://www.bangkokshuho.com/articles/mekon/mekon867.htm

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