論考「遥かなるメコンを越えて ナーンの旅、そしてプーミン寺壁画」⑨

論考「遥かなるメコンを越えて ナーンの旅、そしてプーミン寺壁画」
第5章 ナーンへの道 その2(チェンコン、プア ルート)後編

(蔵屋敷滋生 くらやしき・しげお 投稿時:出版社役員,59歳、千葉県柏市在住)


(写真上:無人の完全舗装された1148号線。
ソンクワェを目指す)

(写真:ソップバーンにすむカム族の親子)
しばらく平地の1148号線の山岳道路が待っています。見事に舗装されたスカイラインをソン・クゥェイに向かう。ソップパーンの山懐にはルー、カムの人達がひっそりと住んでいます。織物や竹細工に興味のある方は思い切って訪れてみたらいかがでしょうか。

(写真:バンマオのビューポイント。走り去った山道を望む)

(写真:ソップバーンに多い高床式のルー族の村)

(写真:アンパー・プア。静かな山間の街)
下り道をターワンパー経由でプアへ。ここまでの景観も一級品です。しかもツーリストもおらず景観を独り占めできます。プアはナーン朝建国の地でもあります。が、王宮はシーラペット付近らしく、現在のプアではワット・タンロン(ラオススタイル。建立年不明)が最も古い寺として紹介されているにすぎない。山間部の静かな街でホットします。

(写真:プアで最古のワット・タンロン)
プアで今日の行程270キロは終了します。メコン、山岳部のラオス国境と3年前に完成したスカイラインでタイ北部辺境の地を巡る超一級の景勝地を走破したことになる。プアにはゲストハウスもありますのでご安心を。夜8時ごろには街の灯りが消える超健全な街でもあります。

仕方がないのでゲストハウスのオーナー夫婦と持参のウイスキーで酒盛りすることに決めている。奥さんがバイクで氷を買いに走ってくれる、のんびりした良い宿です。でもいつの間にか参加者が増えているのもここがタイだからでしょうか。そんな雰囲気も旅の楽しみでしょう。

(写真:ラオス国境・ホォイコン。立派なイミグレーション)

(写真:ホァイコン。ラオスからモン族の人たちが国境を越える)

(写真:ホァイコン。ここが国境。白い道がルアンパバン、昆明、ハノイに続く)
3日目はナーンまであと60キロの地点まで近づきましたが、再び1080号線をラオス国境に向け北上します。逆に南下するとターワンパー。そこからノンブアまではすぐの距離だ。1080号線のどんづまりである国境のホォイ・コンでは、毎週土曜日にボーダーマーケットが開かれている。国境の峠がマーケットの会場。ラオスからの買い物客だけに一日入国が認められ、珍しいラオスナンバーの車で大盛況の風景がみられる。国境にイミグレはあるものの、ラオス人以外の外国人の入出国は出来ません。なお同じ様なボーダーマーケットが他に2カ所ありますが、規模ではホォイ・コンが最大です。品揃えはどこも同じ生活日用品が主流を占める。ラオスからはメコンの魚や織物が多かった気がします。もちろん観光地ではないのでお土産品など

(写真:ホァイコン。土曜日、ボーダーマーケット。ラオスのお坊さんも買い物)

(写真:ホァイコン。藁葺き小屋のボーダーマーケットは小雨でも盛況。)
立派に舗装された道は遥かラオスのルアンパバーン、ベトナムのディエンビェンフーからハノイ、中国はシーサンパンナからクンミン(昆明)、そしてベイジン(北京)まで通じている。「アジア民族の血の通い道」を彷彿されるが、今現在は外国人の通過は、どうしてもダメだった。

「閉ざされたアジアハイウェー」の一つなのだ。ナーンはたしかに辺境の地なのだが、ここから遙かなるメコンを越えて、「タイ族」が南下してきたルートをさかのぼることのできる、そう、中国西南部だけでなく広大なアジアに門戸を開くことが可能な、つまり北に大きく展開することのできる地でもある。

国境の峠に立ち、遠い昔のボーダーレスに思いを馳せながら、どこまでも続く白い道を眺めるのもいいでしょう。メコンを越えた「タイ族」の大いなる移動に思いを馳せながら……

(写真:ホァイコンからナーンへの帰路。絶景の下り山道)
復路は往路の反対側1081号線でボー・クルア、サンティスック経由でナーンに入ります。つまりタイ領がラオス側に突き出た半島のような形をしており、半島の中央を形成する山岳部の反対側が下りの1081号線なのです。ナーンまでの全行程は250キロ。

ホォイ・コンからの帰路、たまに出会う子供たちは車中の私にワイをしてくれた。車の音を聞きつけてワイをしに家から出てくる子供もいる。「なんて行儀のいい子供だ」と思った。しばらくいい気持ちでいたが、この道を車で通過するのは警察官か軍人、国境警備隊しかいないからだと気がついた。検問も何カ所かある。日本人のパスポートを初めてみたような印象を受けた。ボー・クルアでは塩分濃度の高い地下水が汲み上げ塩釜で炊く製塩がみられる。また、この「山塩」の精製もナーンにとって「悲劇」を生むことにつながる。それは後述する。

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