メコン圏が登場するコミック 第5回 「サイボーグ 009 黄金の三角地帯 編」(石ノ森章太郎 著)

メコン圏が登場するコミック 第5回 「サイボーグ 009 黄金の三角地帯 編」(石ノ森章太郎 著)

「サイボーグ 009 17.黄金の三角地帯編」 【Shotaro World】著者 石ノ森 章太郎、 1999年10月発行メディアファクトリー)

「サイボーグ009」は、短編、長編数多くの作品を残された石ノ森章太郎氏(1938年~1998年)の代表的作品の一つで、特殊な能力を持つ9人の改造人間(サイボーグ)の活躍を描く作品。1964年の週刊「少年キング」30号(7月19日発売)で連載開始後、いろんな雑誌に長期に渡って掲載され、テレビアニメ・ビデオや映画化もされていて、広い世代にわたって多くのファンを集めている。「サイボーグ009 黄金の三角地帯編」は、サイボーグ連載開始から15年後の1979年に発表されたもので、『週刊少年サンデー』(小学館)の1979年第13号(3月25日号)から第19号(5月6日号)【1話7回連載】まで本格新連載の1作目として初出掲載された。

 「サイボーグ009」コミックスは、秋田書店、講談社、小学館からいろんなシリーズが出版されているが、本書は、著者自らの監修・編集による選集・完全版で掲載順に全編収録されている、メディアファクトリー社の【Shotaro World】シリーズ全28巻中の第17巻。(「黄金の三角地帯編は、同じくメディアファクトリー社の【MFコミックス】シリーズでは全36巻中の第22巻)

 「黄金の三角地帯編」は、サイボーグ009・島村ジョーがアメリカに向かうギルモア博士を空港に送った帰りに立ち寄ったサイボーグ006・張々湖が東京・新宿で経営する中華飯店に、麻薬を買う金ほしさに強盗を働く麻薬患者が押し入ってくる場面からスタートする。ストーリーは、麻薬の中毒患者が人質をとり銀行にたてこもる凶悪事件が起こる日本だけでなく、同様に麻薬禍がひろがり、他のサイボーグ戦士たちが住むアメリカやヨーロッパでも平行して展開する。

 やがて、従来のフレンチ・コネクションやアジア・コネクションとは異なる第3の勢力たる何者かによる組織が、世界中に、純度の高い”麻薬”を大量に流し始めているだけでなく、その結果冒された若者達を大量に、「黄金の三角地帯」へ誘拐輸送するといったことまでやっていることが、世界各地に散らばるサイボーグ戦士たちの調査や情報で判明していく。

 その何者かの正体を究明し組織を壊滅させ、なんらかの邪悪な謀略を食い止めるべく、9人のサイボーグ戦士たちは、再び、世界の各地から一旦、日本のギルモア研究所に集り、「黄金の三角地帯」に向かうことになる。日本から黄金の三角地帯へ向かうサイボーグ戦士の乗り物は、海中を進み飛行できるドルフィン号だ。その行程中、集結したサイボーグ戦士たちに、ギルモア博士が、「黄金の三角地帯」とはどんなところか、麻薬とはなにか、ということを簡単にブリーフィングする場面があり、

 「ビルマを中心にしてタイ、ラオス、そして中国などの国境が接しておる、この山岳地帯に、『黄金の三角地帯(ゴールデン・トライアングル)』という呼称がつけられたのはまさにーそのものズバリ・・・金(きん)-金(かね)をうみだす場所だったからなのじゃ・・・! -それはもちろん・・・麻薬売買を業とする輩にもたらされる膨大な ー汚れた黄金なのじゃが -その富をうみだす原料であるケシの栽培畑がある場所だから いや・・・! -この周辺はいろんな国の接点でもあるだけに -それぞれの国の政府の思惑やら国際政治情勢やら -あるいは時の流れの中で現在では -その成立の意味も不明になった革命軍やら・・・ ・・・あるいは単なる麻薬による利潤追求が目的の無法者の群れなどが -複雑に入り乱れ暗躍をしている -といった場所なのじゃ! -さよう このケシ畑が栽培しうみだしたものは・・・栽培する一部地域住民の微々たる生活費 ー 戦争屋どもの武器弾薬といった殺しの道具・・・麻薬組織 マフィアやニッポンのやくざなどの資金源・・・ -そして世界じゅうにあふれるすごい数の患者たちと彼らの犯す罪が -害毒なのじゃて!! ・・・たまりかねた世界じゅうの麻薬撲滅をさけぶ声にもかかわらず -『黄金の三角地帯』はいまだに・・・黄金色の毒をうみつづけている というわけじゃ -!」

 尚、ギルモア博士が南シナ海を進むドルフィン号の中で説明する場面では、シャン州を中心に中国やラオスといった周辺国まで含む地図を使用しているが、地図に表示されている国名・州名・町名が全て細かくビルマ語と英語表記になっている。本作品には、この地図以外に、メコン圏地域がおさまる地図が別に登場するが、本作品が石ノ森章太郎氏によって発表されたのは1979年であるが、この地図上ではベトナムは南北に分かれベトナム民主共和国と、1975年に消滅するベトナム共和国の名前が日本語で表示されている。

 サイボーグ 006・張々湖は、そのコミカルなキャラが楽しいが、ビルマ山岳地帯小村では、最初、香港から来たアヘン商人に扮している。そこでは、麻薬商売で武器弾薬を買って軍隊組織を作っていたKMT国民党の兵士たちも登場するが、ビルマ政府がKMT国民党に銃口を向けるとともに麻薬撲滅運動を始めケシ畑はつぶされているのに、前より多量に”麻薬”は世界中にあふれ出始めており、だれがどこでどうやって作り運び出しているか、という謎があった。加えて周辺の農民たちも次々と姿を消していた。こうした謎に挑みサイボーグ戦士たちが敵と戦う場面をはじめとする様々な場面で、超人的な動きの速さ、空を飛べる、口から火を吹く、怪力、全身に武器を装備、変身能力、といったサイボーグ戦士たちの各自の特殊能力が、本作品でも遺憾なく発揮されている。

 【Shotaro World】 『サイボーグ009 17.黄金の三角地帯 編』 目次
■北の巨人コナン 編 初出:「週刊少年サンデー」(小学館)1979年第9(2月25日)号に掲載
■黄金の三角地帯 編  初出:「週刊少年サンデー」(小学館)1979年第13(3月25日)号~第19(5月6日)号に掲載
■サルガッソー異次元海 編  初出:「少年ビッグコミック」(小学館)1979年第7(4月10日)号に掲載
資料  解説、トビラ絵集、イラスト&カット集       

「黄金の三角地帯編」
◆主な登場人物等
サイボーグ 001   イワン・ウイスキー
サイボーグ 002   ジェット・リンク
サイボーグ 003   フランソワーズ・アルヌール
イボーグ 004   アルベルト・ハインリヒ
サイボーグ 005   ジェロニモ・ジュニア
サイボーグ 006   張々湖
サイボーグ 007   グレート・ブリテン
サイボーグ 008   ピュンマ
サイボーグ 009   島村ジョー
・ギルモア博士
・中華飯店「張々湖」に押し入る麻薬患者
・中華飯店従業員
・枝川(五菱銀行新宿支店銀行強盗犯)
・警察官たち
・銀行強盗の人質たち
・ハルヴァ神父
・マックス
・ジム
・ハリー
・トム
・ドクター・コヤナギ
・シアタークラブの踊り子
・巨大麻薬組織フレンチ・コネクションの幹部
・KMT国民党の隊長と兵士たち
・影の軍隊
・段茂修(ビルマ山岳地帯の現地の少年)
・ビルマ山岳地帯の村人
◆ストーリー展開場所
・東京(新宿)
・ギルモア研究所(日本)
・ニューヨーク
・ロンドン
・アフリカ
・ビルマ山岳地帯小村

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