「シャン州東部(チェントン・モンラー)旅行記」(森 博行さん)第2編「チェントン到着初日」

シャン州東部(チェントン・モンラー)旅行記」(森 博行さん)
第2編 チェントゥン到着初日

森 博行:
京都府京都市在住(寄稿時)。ビルマ(現ミャンマー)シャン州を訪れる(2002年4月)。「消え去った世界 ~あるシャン藩王女の個人史」(ネル・アダムス著、森 博行 訳、文芸社、2002年8月発行)訳者

第1編:チェントゥン到着までの途
第2編:チェントゥン到着初日
第3編:チェントゥンの市場
第4編:博物館と寺院
第5編:チェントゥン郊外の山岳民族
第6編:中国国境の町モンラーへの道
第7編:モンラーの町と中国とのかかわり
第8編:モンラーからタチレークを経てタイへ出国

タチレークから40分ほどで、チャイントン(チャイントンはビルマ名、旧英語表記はKengtung、現地音はチェントゥン)着。滑走路は新しいが、空港ビルは無く、イミグレーション事務所の小さなビル以外は木造小屋。イミグレーションで何処に泊まるか訊かれる。後でわかるが、外国人は町ごとのイミグレーションオフィスに到着と出発を報告しなければならない。とりあえずチェントゥンホテルと答える。「他にもホテルが有るか」尋ねると、チェントゥンホテルは高級で一泊US$24から、外国人用ゲストハウスはUS$5から有るとのこと。今回は初めてだし、何よりチェントゥンホテルは旧ソーボワ宮殿を潰して、その敷地に建てたものなので、泊まるつもりをしていた。イミグレーションも、高級ホテルに泊まることで受けが良い。
写真:チェントゥン飛行場の外

番人小屋を抜けて空港の外に出ると、店が数軒あり、トラックタクシーがいる。町まで2000チャット(約320円、1US$=820MKT=130JPYで概算)。車は日本製中古、道路は右側通行でハンドル位置が逆になる。バイクは多い。空港からの道はまずまず、車の数が少ないので快適。チェントゥンは2000メートル級の山に囲まれた盆地で、四方に山が重なる。高度は海抜数百メートルあるはずだが、暑季の日中は40℃近くと思える。
写真:チェントゥンの町へ

町の中心部、チェントゥンホテルは二つあった。同じ敷地内だが、バンガロー風のオールドホテルと、四階建てのニューホテル。地形から、ニューホテルが建っている場所に旧ソーボワ宮殿があったと見える。オールドホテルから値段と設備を確認。まあまあだが、エアコンは旧式の窓付け型、TVは衛星受信無し。値段はUS$18まで下げると言う。ニューホテルは、窓サッシや水まわりなど細かいところに安普請があるが、全体としては近代ホテルの標準。エアコンはセパレート型、衛星TV有り、朝食付きUS$24と言うのでこちらにする。但し、電気が来るのは夕方からで、電力が弱いとエアコンには給電しないことが、あとでわかった。とはいえ、部屋からの眺めはまずまず。

写真:チェントゥンホテル

写真:部屋から

 

時間は午後4時前で、ホテルで地図(手書きのコピー、200チャット)を手に入れ歩いてみる。中庭のプール(中国人客らしい家族の子供が遊んでいた。翌日からは水が抜かれ、空の状態だった)の脇を通り、横道に出て湖に下がる。           

これが町の中で一番大きいノントゥン湖。対岸に金色の仏陀立像と、カトリック教会が見える。湖では竹の筏に乗って魚を獲る若者。湖の岸から古い住宅地を抜けて、中心部のロータリーへ歩く。家の中には、三階建てに改装し衛星受信アンテナを付けたものもある。道路沿いの店では、理髪店、バイク屋、裁縫屋、古い治療用の椅子ひとつに足踏み式ドリルの歯医者なども。
写真:ノントゥン湖。ホテルから

写真:魚獲り

市場は午前中だけで、午後は閉まっている。二階建ての木造タウンハウス(タイやマレーシアなどの古い町と同様の造り)が多い通りを歩いて、バイクタクシーの運転手が集まっているティーハウスに寄る。空き瓶の蓋を使ったボードゲーム(弾いて落とすような遊び)をしている。椅子が低い(20センチほどの高さ、他のティーハウスでも同じ)のがこの地域の特徴か?ティー1杯60チャット(約10円)。経営者は華人。タイ語を話す人間がひとり。(翌日、ガイドの某君から聞いた話では、シャン人はあまりティーハウスに寄らない。従って、ビルマ人か華人が主な客とのこと。シャン人が入るのは麺屋)ティーは、マレー半島と同じでコンデンスミルクに濃い紅茶を入れたもの、美味い。
写真:出家式の行列

 鳴り物が聞こえてきて、子供を僧院に送る出家式の行列が通る。これは、タイ王国のシャン人(タイヤイ)社会でも重要とされている習慣で、男の子が10歳になると僧院に入れる。それなりの費用がかかり、裕福でない子供には後見人がついて擬制的親子関係を作るようである。やや高台の道を散策し、旧市門を見に行く。民家の敷地内にマンゴーの自生が多い。地図によると、チェントゥンはかなり広い範囲を市壁で囲んだ城市であった様子。現在は、壁は無く、市門だけが残る。近くの民家の一階で、子供が中国語を勉強している。黒板に書かれた漢字を、声を出して(マンダリン)読む。
写真:中国語教室

地図に示されたソーボワの墓というのを探す。インド風の円蓋がかかった墓は、市の創建期のかなり古いソーボワを祀るらしいが詳細不明。メインストリートらしい道をホテルに戻る。ホテルの傍、旧ソーボワ宮殿敷地の横に、シャン寺院と、マハミヤムニ寺院(20世紀初頭のソーボワ、サオ・コン・キャオ・インタレンが建てたもの)が在る。ホテルのレセプションで、手書きの英文観光案内(チェントゥンの見どころを紹介したもの)を借りて読む。英語の文章は、しっかりしている。
写真:シャン寺院

写真:マハミヤムニ寺院

ホテルで、「レストランは何処が良いか」尋ねると、中華料理店が一般的で、先ほど通った市門の近くの店を薦められた。ゴールデンバニヤン(金蓉樹飯店)という看板が上がり、外人客も一組いた。鶏の炒め(宮保鶏丁)と野菜スープ(青菜が入った単純なスープ)と白飯と中国茶で、1400チャット(約220円)。鶏の炒めはカリッと揚げてあってなかなか良いできだった。TVにはタイの番組が映り、店の娘はタイ語を話す。

帰り道、通りは暗いが、麺屋にはそこそこ人が入っている。途中のティーハウスに寄る。ここは昼の店より10チャット高くて紅茶一杯70チャット(約11円)、やはりメインストリートだからか?夜10時頃、外からディスコ音楽のような響きがあって、様子を見に行く。ホテルの直ぐ近くに聞こえるのだが、ぐるっと回り道をして湖の岸のそれらしい場所に着くと、もう音楽は止まっていて中古の機械を並べたゲームセンターが店を仕舞いかけたところだった。湖の岸の少し先に、カラオケ屋らしい建物があるので覗く。中国語のカラオケで、客が一組。店番をしているのは若い子供で、コーラを置いているから値段を訊くと500チャットだと言う。タイバーツを受け取るか訊くと、1バーツ=20チャットの計算。50バーツ札(1000チャット換算)を出して、500チャットの釣を受け取る。対岸に灯りが点いたビールを飲ませそうな施設があるが、歩くには遠い。もう一箇所、鼓と鉦のような音が対岸からするが、これは明日の朝僧院に向かう準備らしい。月明りのなか、ホテルに戻る。

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