「シャン州東部(チェントン・モンラー)旅行記」(森 博行さん)第6編「中国国境の町モンラーへの途」

シャン州東部(チェントン・モンラー)旅行記」(森 博行さん)
第6編 中国国境の町モンラーへの途

森 博行:
京都府京都市在住(寄稿時)。ビルマ(現ミャンマー)シャン州を訪れる(2002年4月)。「消え去った世界 ~あるシャン藩王女の個人史」(ネル・アダムス著、森 博行 訳、文芸社、2002年8月発行)訳者

第1編:チェントゥン到着までの途
第2編:チェントゥン到着初日
第3編:チェントゥンの市場
第4編:博物館と寺院
第5編:チェントゥン郊外の山岳民族
第6編:中国国境の町モンラーへの途
第7編:モンラーの町と中国とのかかわり
第8編:モンラーからタチレークを経てタイへ出国

(2002年)4月26日、ホテルをチェックアウトして、朝から中国国境の町、モンラーに向かう。車は往復貸切で60000チャット(約9500円)、そのうち約24000チャット(厳密には200人民元)が車一台のワ・ステート(モンラー周辺の特別区)への入域料。市場に寄って人民元に両替する(チェントゥンでは1人民元=120チャット=19円ぐらいになるからかなり高い)。

チェントゥンを北東方向に出る。道路幅は6メートルほどで、最初の10キロ程はアスファルト舗装済み。その後は道路両端のコンクリートによる土止めがされ、ローラーで固められた砂利道。この道路は、ワが資金を出し中国人を雇って人海戦術で造らせたという話。ちなみに昨日、北に向かって走った道路や、タイ国境に向かう道路は、ワがタイの建設会社に施工させているので、道路端の土止めをせずに道路幅を広くする造り方、重機を使って作業するので短い工期で仕上がるということだ。いずれの道路も雨季に使用可能。
写真:山地を抜ける
   

2000メートル級の山間を抜ける。昔はこのルートを馬やロバで交易したわけだが、確かに農民の気質ではなく行商人の気質がなければ超える気にならなかっただろう。タイ族の特性に、山間地の移動を厭わないものがあるのだろう。もちろん中国からの行商人はいたが、タイ族自身各モン(山間盆地の政治社会単位)間の交易を昔からやっているし、現在でも、例えば、昨日昼食をとった村の若者はバイクでこの道を越えてモンラーの祭りに行っている。

山道から、アカ族の村とかタイ・ロイ(山地に住むタイ族)の焼畑地とかが見える。途中、アカ族の集落。ここには寺院(このアカ村は仏教徒)や小学校(ミャンマー政府の派遣教師)がある。1時間強走り、下りになって中規模の川の手前にミャンマー軍のチェックポイントがある。外国人はイミグレーションオフィスの許可を得ているか確認する。これは、ガイドが今朝、小生のパスポート番号とヴィザの内容を控えて行って、チェントゥンのイミグレーションオフィスで許可を取ってきた。
写真:途中のアカ族の村

写真:ワの入境管理処
 

橋を渡るとワ軍のチェックポイントがあって、ピストルを構えた番人が数人、車の外から確認するだけ。更に10分ほど走り、道路がアスファルト舗装になった村に、ワの入境管理ポイントがある。車を降りて窓口の前を歩いて通過する。運転手はここで、車両の入域料を払ったようだ。チェックポイントの表示はビルマ語と中国語で、通貨は人民元になる。

この地域の正式名称は、東部シャン州第四特別区(Special Region No.4 in Eastern Shan State)で、ミャンマー軍政と1992年に和解したワ州連合軍(United Wa State Army)が管理する自治区。北東側は中国国境で、住民は中国側のシプソンパンナー(雲南省西双版納泰族自治区、主邑は景洪)と同じタイ・ルー。

水田や西瓜畑を持った村を過ぎ、山肌を焼いてマンゴーとライチーのプランテーションを始めた地区を通り、立派なゴルフコースを過ぎるとモンラーの町に入る。中国の地方小都市という雰囲気。
写真:水田と水牛

写真:ポイ、サイコロ
     

町に入ってすぐに人だかりがあり、ポイ(祭り)が開かれている。車を止めて歩いてみると、賭け事の屋台がほとんどで、着飾った住民が集まっている。子供の僧がトランプゲーム(21)のテーブルを囲んでいたりする。絵柄サイコロの賭けは、二つの絵柄にお金を賭け、三個のサイコロを転がして指定した二つの絵柄が出れば勝ちらしい。

他に、輪投げのような遊びで、輪を転がして倒れた輪が地面に置かれた景品を囲み込んでいれば景品がもらえる。あとは、籤。一枚一元で、番号によって最高100元紙幣が当たるという単純なもの。気合が入って真剣な雰囲気のテーブルは、数字札を合わせてやるようなもので、写真を撮るなと言われた。

鳴り物の一団が先導して、長い竹筒が到着する。火薬を詰めた花火で、後方の田圃に向かって発射する。携帯電話を持った人間が結構いる。ミャンマーにはほとんど無いが、タイ国境や中国国境地帯では、タイや中国で登録した携帯を使用している。当然ここは、中国の携帯電話で、町の電話線も中国の電話回線が来ている様子。
写真:ポイ、携帯電話

(C)森博行 2002 All rights reserved.  

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