「祈りの環~ミャンマー」(後藤修身さん)

  第1回「祈りの姿」

ミャンマーへ毎年行くようになって6年。この国にこれほどのめりこむとは思ってもいなかった。何がそうさせたのだろうか。6年前の出会いを思い出した。
それはミャンマーへの2回目の旅、1994年であった。仏教遺跡が数多く残るバガンで知り合いの老女と連れ立って歩いていた。道の先に小さなパゴダがあった。

「私は毎朝あのパゴダへお祈りに行くんだよ」
「何を祈ってるかって?」
「世界中の人たちが幸せに暮らせるように祈っているんだよ」

世界中の人?  のために?  祈る?

予想していなかった答えに私は戸惑い、次の言葉が見つからなかった。彼女は口元にかすかな微笑みを浮かべ、目は遠くを見ているかのようだった。その姿を見て、ふと気がついた。

人のために祈る、自分のために。
自分のために祈る、人のために。
祈りは環のようにまわっている・・・

この祈りは仏教の中だけでなく、人々の生活全てを覆っているかのように思えた。私がミャンマーへ通って写真を撮り続けるのも、この祈りの姿を確認する作業かもしれない。

(写真・文:後藤修身さん) 2000年7月号掲載

夜のパゴダで祈る。インドージ湖のシュエミーズパゴダにて。

黄金の岩に祈る人々。チャイティヨにて。

瞑想中の僧侶。人々がお布施を置いていく。チャイティヨの参道にて。

パゴダは憩いの場であり祈りの場。ヤンゴンにて。

時間があると瞑想する人が多い。バゴーにて。

ろうそくを灯して祈る人々。ヤンゴン、シュエダゴンパゴダにて。

関連記事

おすすめ記事

  1. メコン圏現地作家による文学 第16回「田舎の教師」(カムマーン・コンカイ 著、冨田竹二郎 訳)

    メコン圏現地作家による文学 第16回「田舎の教師」(カムマーン・コンカイ 著、冨田 竹二郎 訳) …
  2. メコン圏を舞台とする小説 第50回「バンコク喪服支店」(深田祐介 著)

    メコン圏を舞台とする小説 第50回「バンコク喪服支店」(深田祐介 著) 「バンコク喪服支店」(…
  3. メコン圏対象の調査研究書 第29回「日本をめざしたベトナムの英雄と皇子 ー ファン・ボイ・チャウとクオン・デ」(白石昌也 著)

    メコン圏対象の調査研究書 第29回「日本をめざしたベトナムの英雄と皇子 ー ファン・ボイ・チャウとク…
  4. メコン圏関連の趣味実用・カルチャー書 第10回「ベトナム雑貨と暮らす Vietnamese Style」(石井 良佳 著)

    メコン圏関連の趣味実用・カルチャー書 第10回「ベトナム雑貨と暮らすVietnamese Style…
  5. メコン圏を描く海外翻訳小説 第18回「ヴェトナム戦場の殺人」(ディヴィッド・K・ハーフォード 著、松本剛史 訳)

    メコン圏を描く海外翻訳小説 第18回「ヴェトナム戦場の殺人」(ディヴィッド・K・ハーフォード 著、松…
  6. メコン圏題材のノンフィクション・ルポルタージュ 第31回 「アキラの地雷博物館とこどもたち」(アキ・ラー 編著)

    メコン圏題材のノンフィクション・ルポルタージュ 第31回 「アキラの地雷博物館とこどもたち」(アキ・…
  7. メコン圏が登場するコミック 第23回「密林少年 ~Jungle Boy ~」(著者:深谷 陽)

    メコン圏が登場するコミック 第23回「密林少年 ~Jungle Boy ~」 (著者:深谷 陽) …
  8. メコン圏と大東亜戦争関連書籍 第8回「神本利男とマレーのハリマオ マレーシアに独立の種をまいた日本人」(土生良樹 著)

    メコン圏と大東亜戦争関連書籍 第8回「神本利男とマレーのハリマオ マレーシアに独立の種をまいた日本人…
  9. メコン圏の写真集・旅紀行・エッセイ 第31回「メコン川物語 ー かわりゆくインドシナから ー 」(川口 敏彦 著)

    メコン圏の写真集・旅紀行・エッセイ 第31回「メコン川物語 ー かわりゆくインドシナから ー 」(川…
ページ上部へ戻る