メコン圏が登場するコミック 第15回「加治隆介の議」(弘兼憲史 著)

メコン圏が登場するコミック 第15回「加治隆介の議」(弘兼憲史 著)

「加治隆介の議」(【ミスターマガジンKC】、著者 弘兼憲史(ひろがね・けんし)、第6巻(1994年3月発行)、講談社 

「加治隆介の議」は、講談社の男性コミック誌「ミスターマガジン」(2000年初に廃刊)に、1991年1号から1998年23号まで、約8年間にわたり連載された本格政治漫画。コミック単行本としては、講談社より1992年1月スタートのミスターマガジンKCの第1号として、「加治隆介の議」の第1巻が刊行され、1999年1月に、最終巻となる第20巻が刊行された。著者は、代表作「島耕作」シリーズをはじめ、「人間交差点」「黄昏流星群」などのシリーズの著者である1947年(昭和22年)生まれの弘兼憲史(ひろがね・けんし)氏。

 主人公の加治隆介は、一流商社、丸講物産の食料品本部農産部のエリート課長で、東大法学部卒の39歳、元建設大臣、加治元春の次男でもあったが、父・加治元治の死を契機に政界入りを決意。会社を辞め、父の遺志を継ぎ、鹿児島から出馬し、衆議院議員となる。議員となった加治隆介は、超党派の政策グループ「桜嵐会」を設立。その後、いろいろな経緯を経て、最後は総理大臣になったところで話は終わりとなり、最終巻の最後の章は、「議その175:日本の議」で終わっている。詳細は次のとおりだが、「加治隆介の議」全20巻は、175の章と加治隆介の学生時代の話の番外編から成り立っている。

政治家としての加治隆介がほぼ全編を通して描かれ、永田町をはじめ日本の政界が本書ストーリーの主舞台であるが、全20巻中、第6巻と第7巻は、カンボジアがストーリー展開舞台となっている。第6巻の「議その45:文民警察官」では、カンボジアで日本人初の文民警察官の犠牲者が出る。そして1年前に国会議員に初当選したばかりだが、防衛問題に関して国連と如何に関わるかという問題を重視する加治隆介は、カンボジアでの総選挙が終わるも今だ危険なカンボジアにUNTACの視察に出かける。プノンペンに到着した加治隆介は、UNTAC本部、タケオの日本施設大隊を訪問した後、コンポンソム(シアヌークビル)のボランティア事務所に向かう途中のカンポト州の国道2号線沿いで共産ゲリラグループに拉致されてしまう。

 「議その47:カンボジアへ」で始まる加治隆介のカンボジアの旅は、共産ゲリラのアジトに監禁され処刑直前の危機からカンボジアのジャングルを抜ける壮絶な脱出を経て、タイの病院に運ばれ、「議その55:『深夜の訪問』」で終わっている。本書では、文民警察官が殺害された直後のテレビ公開討論会、加治隆介がカンボジア行きを考える段階、カンボジアでUNTAC代表との会談の時、加治隆介を監視する共産ゲリラの少年兵との会話の場面、カンボジアより帰国直後などの各シーンで、加治隆介がPKO、国連平和活動、日本の外交に対しどういう考えを持っているかや、カンボジアの政情や抱える問題が紹介されている。

 尚、本書では、カンボジアで亡くなる文民警察官は、鹿児島県警の山本剣吉警部補で、山本警部補の父親が、国会議員の加治隆介の後援会長でもあった、という設定になっているが、現実に起こった事件は、1993年5月4日昼過ぎ、タイ国境に近いカンボジア北西部のバンテアイミアンチェイ州アンピル村で、同村に駐在している日本人文民警察官がパトロール中に武装集団に襲われ、高田晴行・岡山県警警部補(33)が亡くなった。また作品ではボリビアの兵士の護衛となっているが、現実の事件では、UNTACオランダ海兵隊部隊の護衛を受けていた。

 日本の政情が大事なときにカンボジアに行く事に周囲から反対されていた加治隆介が、カンボジア行きを決断するのは、一ノ関鮎美という女性がボランティアでカンボジアのタケオ駐屯地で働いている事を知ったからであるが、この一ノ関鮎美という女性は、加治隆介の商社時代の部下で恋愛関係にあった女性だ。議その1から昼と夜で最初から登場する加治隆介にとって重要な女性だが、加治隆介が国会議員になる際に劇的な別れ方をしていた女性で、カンボジア・タイ編でも彼女の存在がドラマチックな演出を飾っている。「加治隆介の議」のその後も続く長いストーリー展開で、一ノ関鮎美がばったり登場しなくなるが、また最後に悲しく切ない演出が用意されている。

「加治隆介の議」第6巻、第7巻
◆主な登場人物等(第6巻・第7巻の一部に限定)
・加治隆介(主人公、国会議員)
・山本真喜男(加治隆介の後援会長)
・山本剣吉(山本真喜男の息子)
・山本トミ子(山本剣吉の妻)
・山本俊幸(剣吉の小学3年生の長男)
・露木(外務省事務官)
・赤石功典(UNTAC代表)
・染谷(フリーカメラマン)
・西(鹿児島錦江クラブ)
・クミール(パルパト派の少年兵)
・バンコク市立総合病院の医者
・渦上三郎(民政党議員)
・敬子(田名網の女将、渦上の愛人)
・稲川欽蔵(相場師)
・谷崎健吾(国会議員、加治元春の元第一秘書)
・井原七郎総理
・浅海恒太郎代議士(大臣経験のある大物)
・筒見修(社会平和党)
・倉地潤(加治隆介の友人で、外務省のエリート高官)
・大森陽一郎(加治隆介の友人で、大日新聞政治部)
・加治由紀子(加治隆介の妻)

◆ストーリー展開場所(第6巻・第7巻の一部に限定)
・カンボジア プノンペン、タケオ、カンポト、コンポンソム
・日本東京、鹿児島、熱海)
・タイバンコク)

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