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第7信 ラオスの習慣 ほか
- 2002/7/21
- エッセイ(村山明雄さん)「ラオスからの手紙」, コラム・エッセイ
- 村山明雄
(2002年11月号掲載)
2002年7月21日
国連ボランティア 地下水開発エンジニア
村山明雄
皆さんお元気ですか.
10月15日よりUNV(国連ボランティア)のワーク・ショップでビエンチャンに上がって来ています.公費でこの時期にビエンチャンに来れて本当に良かった.ラオスは21日に出安吾(オオグ・パンサー)、22日にメコン川でのボート・レースということで、御祭りの季節です.
ラオスの習慣
日本人がビールを飲みに行った時、おそらく手酌以外だったら相手が注いでくれる時に、自分のコップを掴んでいるのが礼儀なんでしょうか.ラオスの場合は、お客さんでラオス人の家に行くと、ビールがなくなると、またはなくなりそうになると、ホストの人が御客さんのグラスを持っていってビールを注いで、また御客さんに差し上げますよね.
実は昔、ラオス青年が日本に行った時の話です.ある県で歓迎のパーティーがありました.
その時、私も仕事で同席したのですが、パーティーの席でホスト側の日本人が、ラオス青年のコップのビールがなくなったので、注いであげたのです.普通日本人だったら、ホストがビールをついでくれる時、コップに手をつけているのですが、彼は自分の目の前に置かれているコップにビールが注がれているのをじっと見ていたのです.きっと緊張していたのでしょう.それに日本流のマナーを知らなかったからでしょう.僕はその時、青年たちのコーディネーターをしていたので、注意してあげたらよかったのでしょうか.
ビールを注いであげたホストの方が、どうしてコップに手をそえないのか、と不満そうに言ってました.その場でラオス青年に注意してあげたら良かったのでしょうか.だけど楽しいパーティーの席ですから、それも悪いと思いました.また私自身も、それではラオスの場合、こういった場合にどうするか咄嗟に頭に浮かんできませんでした.ちょっとしたことですけれど国が違えば習慣も違うものだと思いました.
ポンサワン
シェンクアンに来て感じた事。
赤ちゃんを御母さんが抱っこするのにこの県の人は、布を使って襷にしてそこに赤ちゃんをいれている.これはビエンチャンでは見たことがない.だけどこうすると両手が空くので御母さんは楽である.
北の人は南に比べて本音を言わない。例えば会議などでも自分は反対でも黙っている事が多いようだ.また人を公然と批判すると根に持つ事が多いようである.南の人は言いたいことを言ってそれで終わり、根に持たないが、北はそうでもない.だから北の人にはあまり公然と言いたいことを言わない方がいいようである.
ただし、一般的にラオス人は本音と建前の世界であるから、会議などでなかなか本音は出てこないであろう.現在、先生についてラオス語の諺を勉強しているけれど、こんな表現がある.
「呼ばれなければ、返事しない.請われなければ、助けない」
これは文字道理に考えると、冷たい個人主義のような人間に思えるがそうではない.つまりあまり差し出がましいことはするなというラオスの昔からの戒めである.会議などで意見を求められていないのにシャシャリ出て発言する、こういった事はよくない、目上の人、身分の高い人について余計な御節介はするなということであろう.ここらへんにはラオス人の他人には干渉しないという個人主義も感じられる.従って西欧式の討論はなかなか難しいであろう.
ラオスの諺、慣用句を勉強するとラオス人の考えがよくわかってくる.ラオスには日本の万葉集の相聞歌のような男女の掛け合いがあり、これをカム・パニャ-という.男女が愛の告白をするのに直接的に言わないで間接的に言うのであるが、これも1つの文学である.ラオスの豊かな表現であり本当に面白い.こういったことを知っているとラオスで生活するうえで不必要な問題もなくなる.
それと感嘆詞であるが、南の方が結構卑猥な感嘆詞が日常会話に使われているようである.シェンクアン人はこのような言い方はしなく「あー」といった感じの表現は「ファー・ウーイ」といった言い方になる.ファーは「空」の意味である.
そういえばベトナム語の感嘆詞にもこのようないい方があると何かの本で読んだことがある.シェンクアンの言葉にはベトナム語もはいっていて御茶もベトナム語と同じく「チェー」という.またグアバもビエンチャンでは「マーク・シダ-」というがシェンクアンでは「マーク・オーイ」といっている.「オーイ」はベトナム語でグアバのことである.したがって表現の仕方と語彙で共通性があるのかもしれない.
国連のワーク・ショップ
前回、国連ボランティアをやっていた時(96年)に比べて、技術的に経験が深まった。ラオス語も上手になった.ということで自分に自信がついてきたのか以前ほど外人に対してビビラなくなったようである.国連ボランティアも技術系の人よりも文科系の人が多いようである.従って自分はエンジニアで英語はあまり上手ではないが自分の技術には自信がある.それにラオス語は君達より上手だよ.という気持ちでいれば彼らとも付き合っていけると思った.国連ということで色々な国の人が来ていて、初対面でもすぐに打ち解けて会話がはずむのは国連のいいところである.日本人同士だとなかなか会話がはずまないし、挨拶しても無視されることもあるから尚更である.
ということで、日本人もどんどんUNVに参加すればいいと思う。英語力が重視されるポストは英語が相当上手でなければ無理かもしれないけれど、技術系のポストなら自分にちゃんとした実力があれば通用すると思う.
とはいうものの英語は難しい.UNVとしてラオスでなら通用するけれど、他の国で活動するのにはもっと英語ができないと.だけど専門があって、ラオス語ができて、英語もできるエンジニアなんてなかなかいないと思う.理想は遥かかなたである.
村山明雄
地下水開発エンジニア
ラオス語通訳
(C)村山明雄 2002- All rights reserved.
村山明雄さん(むらやま・あきお)
(桜ちゃんのパパ、ラオス華僑と結婚した日本人)
シェンクアン県ポンサワンで、地下水開発エンジニアとして、国連関連の仕事に従事。<連載開始時>
奥さんが、ラオス生まれの客家とベトナム人のハーフ
地下水開発エンジニア (電気探査・地表踏査・ 揚水試験・電気検層・ 水質検査)
ラオス語通訳・翻訳、 エッセイスト、経済コンサルタント、エスペランティスト、無形文化財上総掘り井戸掘り師
著作「楽しくて為になるラオス語」サクラ出版、翻訳「おいしい水の探求」小島貞男著、「新水質の常識」小島貞男著