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メコン圏に関する英語書籍 第3回「Hmong Voices」(Jon Boyes / S.Piraban 著、Trasvin Publications, Chiangmai)
- 2000/3/25
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メコン圏に関する英語書籍 第3回「Hmong Voices」(Jon Boyes / S.Piraban 著)
「Hmong Voices」A Collection of interviews with the people of a White Hmong village in northern Thailand (Jon Boyes / S.Piraban 著、Trasvin Publications, Chiangmai、1990年発行)
本書は、北タイ・チェンライ県のチェンコン近くのKiew Khan村(チェンコンの北西にあたり、メコン河にも近い)に住む白モン族へのインタビューをとりまとめたものである。著者はこの村にも住んだ英国人男性と、チェンライ県で生れ育った女性である。
このkiew Khan村は、20年前(本の発刊当時)に、近くのドイ・ルアン山(60~70年前にラオスからこの山の附近に移住)から7家族のモン族が移り住んだのが始まりで、今では(本の発刊当時)100家族以上に村人が増えている。これらの住人の多くはもともとラオスに住んでいた人たちだ。住民の80%は仏教徒だが、アニミスト信仰を保持しており、病気の治療や夢占い、生活上でのタブーに色濃く影響を及ぼしている。
モン族についての一般的な説明ー歴史、衣服、村、住居、家族、結婚、出生、死、宗教、シャーマン、農業、経済、土地所有、富ーが最初にまとめられており、これはこれで有用であるが、本書は、やはり、一つの村に住む14人(組)のいろいろなモンの人々が語る生身の生活記録が貴重だ。
23歳の既婚男性が語る自分の父や母の話からは、いつどこからどうして移住してきたかというモン族家族の生身の歴史が知れ、また42歳の既婚男性の語る自分の一族の話では、もともと中国に住んでいたという曽祖父母の代からラオス王党派の将軍であった祖父の代に触れ、ラオス内戦とモン族の深いかかわりが身内の話として語られている。
13歳の少女が語る精霊(ピー・コンコイ)の話も興味深い。母親が住んでいたラオスではカム族の死者から出て来る精霊が多いと語りつがれており、モン族と違ってカム族は、死者に来世への食べ物を供えないため、死者の霊が空腹であるために人間への悪さを行うとその理由が説明されている。他にもヘルスワーカーとして働く男性の仕事上での話や、モン族男性の花嫁の見つけ方の話、薬としてケシ栽培を行っていた男性によるアヘンの話、42歳の狩人の話、シャーマンによる祈祷の話などが掲載されている。
タイの少年と付き合う15歳の少女、ラジオがあったら毎日タイの音楽を聞いて歌いたいという13歳の少女、ラオスで生まれ一時チェンコン近くのバーンゲー難民キャンプにいた23歳既婚女性の周囲に大反対された初恋の話、更にギャンブルや浮気にはしる亭主に苦労させられている41歳の既婚女性、周囲の女性を見てきて結婚をしたがらない24歳の女性などと、いろんな女性の話も紹介されている。
尚、本書の最後には、モン族の村を訪れる場合の「してはいけないこと」と「したほうがよいこと」のアドバイスもついている。
モン族
中国南西部、ベトナム、ラオス、ミャンマー、タイ北部を中心に分布する民族。自称モン(Hmong)は、中国では苗(ミャオ)、タイではメオと呼ばれるが、メオとう蔑称を嫌う。ミャオと呼ばれる中国では、湖北、湖南、貴州、四川、雲南、広西壮族自治区を中心に約738万人(1990年)が居住する。