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メコン圏の写真集・旅紀行・エッセイ 第15回「ミャンマー憧憬」【祈り篤き人々の素顔】(写真・文: 加藤 敬、文:ドウ・キン・イー)
- 2002/11/10
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メコン圏の写真集・旅紀行・エッセイ 第15回「ミャンマー憧憬」【祈り篤き人々の素顔】(写真・文: 加藤 敬、文:ドウ・キン・イー)
「ミャンマー憧憬」【祈り篤き人々の素顔】(写真・文: 加藤 敬、文:ドウ・キン・イー、平河出版社、1995年7月発行)
≪著者紹介≫ 加藤 敬(Kei KATO)
1936年、北海道和寒町生まれ。幼年期より高等学校まで美瑛町ですごす。道立旭川西高等学校卒業。1960年、東京写真短大技術科卒業。毎日新聞社に入社。札幌勤務を経て東京本社写真部へ 。金大中事件(1973年)、ルバング島の小野田少尉(1974年)、サイゴン陥落(1975年)などの取材に当たった。小野田少尉の取材で東京写真記者協会「特別賞」を受賞。1978年、毎日新聞社を退社し、フリーの写真家となる。1980年、写真展「マンダラ展」を西武美術館にて開催。1981年『マンダラー西チベットの仏教美術』(毎日新聞社)を発表。1984年『マンダラ群舞ーラダックの仏教仮面世界』(平河出版社)を発表。1985年『マンダラ蓮華ーアルチ寺の仏教宇宙』(平河出版社)を発表。写真展「マンダラ展」を韓国ソウル市中央日報社にて開催。
1990年、アジア民俗写真叢書①ー『万神ー韓国のシャーマニズム』(平河出版社)アジア民俗写真叢書②ー『拜拜-台湾の民衆道教』(平河出版社)アジア民俗写真叢書③ー『タンキーー台湾のシャーマニズム』(平河出版社)アジア民俗写真叢書④ー『韓国の家具装飾』〔平河出版社)。1991年、アジア民俗写真叢書⑤ー『マンダラの里ーラダック、冬に生きる』(平河出版社)を発表。写真展「マンダラの里」をドイフォトプラザ渋谷にて開催。1992年、アジア民俗写真叢書⑦ー『下北・神仏との出会いの里』(平河出版社)を発表。1993年、アジア民俗写真叢書⑪ー『巫神との饗宴』(平河出版社)を発表。1994年、『聖なる饗ー西チベット少数民俗の祈り』(平河出版社)を発表。写真展「立体マンダラ・聖なる空間」をドイフォトプラザ渋谷にて開催。1995年、『タンカ』(平河出版社)を発表。(本書紹介文より)ー本書発刊当時ー
本書は、1990年にスタートした平河出版社発行のアジア民俗写真叢書シリーズの第14弾。取り上げられている民俗的なテーマや、素晴らしい写真家によるたくさんの写真掲載とあって貴重なシリーズ企画だ。メコン圏関連では本書以外にも、樋口英夫氏による『タイ・黄衣のゆらぎー戒律の知恵』や、鎌澤久也による『雲南ー西南中国の人びと』『藍の里ー西南中国の人びと』が刊行されている。本書は本シリーズの多数を担当されている加藤敬氏による著作で、著者にとって、ミャンマーは旧ビルマ時代から一度は訪れてみたいと憧憬し続けた国で、1991年に最初のミャンマー取材の機会が訪れたとのことだ。
本書も本シリーズの他の本に劣らず、素晴らしい写真満載で、下記の項目に従い約150ページにわたって掲載されている。
●「黄金の釈迦像」 (Golden Images of the Buddha)
熱心な仏教徒によって寄進された黄金の釈迦
●「パガン遺跡」 (Monuments at Pagan)
崩壊寸前の危機にあるアジア3大仏教遺跡の一つパガン。
●「精霊ナッ信仰」 (Nat Spirit Worship)
民間信仰としてのミャンマー特有の精霊ナッ信仰とその祭り
●「人々の生活と行事」 (Daily Life and Annual Events)
貧しさにもめげず生活の中に喜びを見い出す人たちと明るい子供たち。
●「インレー湖の祭りと生活」 (Life in Inle Lake and Its Festival)
ミャンマーで一、二と言われるインレー湖の浮き畑農業と筏祭り。
●「パゴダと祈りの国」 (A Land of Pagodas and Prayers)
上座部仏教を厳守する僧侶。子供たちの得度や功徳の証しであるパゴダ群。
まず著者による「まえがき」に続き、上座部仏教、灯明祭、水祭り、パガンの遺跡、精霊ナッ信仰、インレー湖についての紹介がある。最初の写真は、いろんな釈迦像が黄金色に輝きまばいばかり。そのうえパガンのゴードーバリィン寺院の釈迦像の顔のアップや、タビィニュ寺院の大釈迦像の右手のアップ、ヤンゴンのチャウッタッジー・パゴダの巨大寝釈迦像の巨大足裏のアップなどと迫力ある写真が巻頭を飾っている。
インドネシアのボロブドゥールやカンボジアのアンコール・ワットとともにアジア3大仏教遺跡にあげられるパガン遺跡の写真も印象的だが、精霊ナッ信仰とその祭りの写真は強烈だ。特にカラフルな衣装で派手な化粧のいでたちのナッカドゥの姿や踊りの様子は初めての人にはびっくりするかもしれない。本書の表紙の写真も、精霊ナッ信仰の祭りであるタウンビョン祭での兎献上の儀式を撮ったもの。
どのコーナーも素晴らしい写真でいっぱいであるが、個人的にはなかでも、「人びとの生活と行事」に収められている写真が大変気に入っている。水祭りでの子供たちや田植えをしている女性たちの写真は何度見ても見飽きず気持ちがなごんでくる。片足を器用に使って櫓をこぐインダー族の筏祭りも勇壮だ。
書巻末には、日本在住の東京外語専門学校教師ドゥ・キン・イー女史による「パゴダと祈りの国」と題した解説文(日本語・英語)が載っている。その内容は、歴史、ミャンマーの諸民族、宗教、パゴダ、祭、儀式と儀礼、ナッ、ポパ山、日々の生活、お茶に及び、ミャンマー理解の資料としても有用だ。
本書掲載の寺院パゴダ関連写真
《パガン》
●ゴードーパリィン寺院
13世紀ナラパティシードゥ王建立の、高さ約55メートルと、パガン遺跡で2番目に高い。
・釈迦像
・黄金の釈迦坐像に金箔を貼り、一心に祈りを捧げる仏教徒の姿
・夕焼け空に姿を見せる寺院
●タビィニュ寺院
パガンで高さが約61mと最も高い寺院で12世紀半ばアラウンシードゥ王が建立
・2階に鎮座する大釈迦像の右手
・暗闇の中に浮かび上がる寺院のライトアップ(1992年から開始)
・椅子に坐る珍しい黄金の釈迦像
・2階正面に鎮座する、大きな釈迦の座像
●シュエズィーゴォン・パゴダ
11世紀アノーヤター王が着手し、チャンシッター王で完成。11世紀中頃、アノーヤター王がタトン国から持ち帰った釈迦の歯と骨が納められている。シュエは金、ズィーゴォンは砂の川岸という意味。
・大小様々な黄金の釈迦像
・境内の4隅にあるストゥーパに祀られている約4メートルの黄金の釈迦像
●アーナンダ寺院
パガン王朝の黄金期、1091年チャンシッター王建立。高さ約51メートル。初期寺院建築スタイルの最高傑作といわれる
・入口正面に建つ、約10メートルの黄金の釈迦像
・黄金の尖塔
●ザマヤンジー寺院
父と長兄を暗殺したナラトゥー王が12世紀に建立。
●ティローミィンロー寺院
13世紀ティローミィンロー王の名にちなんで付けられた大寺院の一つで、4対の仏像や壁画などがある。
●ミンガラーゼディ・パゴダ
ナラティハバテェ王が1248年に建立。パガン王朝時代最後の大パゴダ
●アベヤダナ寺院
44代チャンシッター王の妻アベヤダナ妃が夫の安息所として建立
●シュエサンドー・パゴダ
パガンの黄金期アノーヤター王(1044-1077)の建立。金色の遺髪と言われるとおり、パゴダの中心に釈迦の遺髪を安置する。
●チャウッタッジー・パゴダ (ヤンゴン)
・ミャンマーで最も大きい巨大寝釈迦像の巨大足裏
●シュエダゴォン・パゴダ(ヤンゴン)
・境内にある釈迦の弟子像