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メコン圏に関する英語書籍 第5回「THE CAMBODIA LESS TRAVELED」(Ray Zepp 著)(2)
- 2000/5/10
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メコン圏に関する英語書籍 第5回「THE CAMBODIA LESS TRAVELED」(Ray Zepp 著) (2)
「THE CAMBODIA LESS TRAVELED」【英語】(Ray Zepp 著、BERT’s BOOKS(プノンペン)、1996年10月発行) (2)
前回のカンボジア南部紹介に続いて、今回は本書よりカンボジア東北部・東部を紹介する。
まず、北はラオスに接し東はベトナムに接するカンボジア最東北部ラタナキリ州だ。鉱物資源が豊富であるといわれている地域だ。本書発行の1996年までは、ラタナキリ州そのものはそんなに危険ではなかったが、陸路・水路でアクセスする場合その途中がクメールルージュや強盗が出没しており、著者のアクセス方法は、プノンペンからラタナキリ州の州都バンルンまで空路で向かっている。カンボジアの多少古い地図(1996年発行の日本のある出版社からのガイドブックでも同様)には、このバンルンの町の名前が無く、代わりにベトナム領からメコン河に流れ込むスレポク川沿いにロンバットという町の名を見つけることがある。このロンバットは州都バンルンから南に車で約2時間ほどであるが、かつての州都であったところだ。
州の人口の8割が山岳民族であることや豊かな森林があることも紹介されているが、バンルンのレストランで知り合ったアメリカの兵士グループの話も興味深い。ラタナキリ州、特に北部はホーチミンルート上にあり、ベトナム戦争時には重点的にアメリカの爆撃を受けた地域であるが、このアメリカの兵士達は、ベトナム戦争での米兵行方不明者(MIA)を捜索する任を帯びている。山岳民族の言語に精通したスペシャリストや特殊機器を備え、毎日2機のヘリコプターで飛び回っているようだが、著者が話しかけた兵士は、とてもアメリカ兵の遺品などを見つける希望は持っていなかったという。この金がかかるオペレーションも、アメリカ国内では非常に政治的なセンシティブな問題でありつづけているわけだが、本書ではこのアメリカのミッションに絡んでくる村人の様子についても説明している。
バンルンから東に向かうとベトナムに通じるわけだが、著者がボケオで見る限り、交通量も多くなく、市場でのベトナムの商品もまだ少ないようだ。他には鉱山やゴム園、それに山岳民族のものと思われる奇妙な墓地について触れている。他の旅行者情報としてバンルンの北、車で2時間のセサン川附近のベネサイの村には300年間カンボジア領内に住んでいていまだに中国語を話している中国人村があるとのことだ。
ラオス国境、ラタナキリへのアクセスポイントやメコン河とその支流セコン・セサン・スレポクの合流地点という交通の要綱たるストゥントレンにも、著者は飛行機で向かっている。本書発行時までは、クラチエ=ストゥントレン間の水路が政府の完全なコントロール下に無く、強盗やクメールルージュによく襲撃されており、加えて急流もあって転覆事故もあったとのことで、水路を勧めていない。(地元の人が安全に利用しているからといって、財産価値の高い外国人の場合も安全とはいえないと注意を促している。1996年当時)
ストゥントレンの町そのものについては、余り書くべきものは多くないとして、ストゥントレンから他へのアクセスの説明が為されている。メコン河を遡行してラオス国境まで行った様子に加え、ラオスやラタナキリまでの道路、さらにメコン川支流を利用しての水路の説明がある。ストゥントレンは野生動物交易で知られているところらしく、外国人の好み・需要に応じ地元の村人たちが動物達の親を殺して子供を乱獲しているそうだ。ストゥントレンから上ったメコン上流でも川イルカが絶滅の危機に瀕しているといわれている。
クラチエについては、プノンペンからスピードボートでメコン河を遡行し6時間で到着する(途中のコンポンチャム間では3時間)。クラチエについては近郊のサンボール遺跡も含め、本書ではあまり紹介がない。
それに代わって、最東部のモンドルキリ州は、本書の各州の中でも一番多くのページが割かれている。著者が旅した当時、プノンペン=モンドルキリ州の州都センモノロム間のフライトが週1便で、他のアクセス方法が困難であったため、1週間滞在せざる得なかったからでもある。スヴァイリエン州がベトナム人で人口過密となっているといわれているのに、このモンドルキリ州の人口は3万人にも満たず、カンボジアの主要民族クメール人はその3割にも満たない。この州の最大山岳民族はプノン族が約半数を占め、次にスティエン族、クラオル族となっており、同じ山岳民族が多いといってもラタナキリ州(トゥムポン族、クレウン族が主)とは民族構成を異にしている。この州のエコツーリズムやコーヒーをはじめとする産業経済についても著者は一考している。センモノロムのバー・レストランで、ベトナム語で書かれたラベル付の南中国・南寧のビールを見つけ、センモノロム・コーヒーと共に、プノンペンに旅のお土産として著者は持ち帰っているのだが、同地のベトナムとの国境交易がどうなっているのかもっと知りたいものだ。(続く)
カンボジアの行政区画
19の省と2都
<東北部>
・ラタナキリ州(州都バンルン)
・ストゥン・トレン州(州都ストゥン・トレン)
・クラチエ州(州都クラチエ)
・モンドルキリ州(州都センモノロム)<中部>
・プノンペン都
・コンポンチャム州(州都コンポンチャム)
・コンポントム州(州都コンポントム)
・コンポンチュナン州(州都コンポンチュナン)<南部>
・シハヌークヴィル都
・プレイヴェン州(州都プレイヴェン)
・スヴァイリエン州(州都スヴァイリエン)
・カンダル州(州都タクマウ)
・タケオ州(州都タケオ)
・カンポット州(州都カンポット)
・コンポンスー州(州都コンポンスー)
・コッコン州(州都コッコン)<西部>
・プリヤヴィヒヤ州(州都トゥベンミヤンチェイ)
・シアムリアップ・オッドーミヤンチャイ(州都シアムリアップ)
・ポーサット州(州都ポーサット)
・バッタンバン州(州都バッタンバン)
・バンテアイミヤンチャイ州(州都シソフォン)