メコン圏が登場するコミック 第1回「サンクチュアリ」(原作: 史村 翔、作画: 池上遼一)

メコン圏が登場するコミック 第1回「サンクチュアリ」(原作: 史村 翔、作画: 池上遼一)


カンボジア関連が登場
本物の”飢え”を知る2人の若者が、無気力日本の表社会と裏社会に殴り込みをかける長編大河ロマン

「サンクチュアリ」 原作 史村 翔、作画 池上遼一【My First WIDE版】 第1巻~第5巻,小学館、【BIG COMICS 全12巻】、【BIG COMICS WIDE  全6巻】

「いつまでもジイさんたちの時代じゃねえ! 日本の社会はオレたちふたりが仕切る」 「戦いに生き残るための方法はたったひとつ喰うか喰われるか、それがオレたちのルール」 「野望達成のためにはキレイごとはいらない ジャマ者は踏みつけ、乗り越えるしかない」 「平和ボケした日本人を目覚めさせるには、オレたちふたりがトップに立つしかない!」 「オレたちの生き方を決めるのはオレたちだけ。『聖域』の実現はだれにもジャマされない!」と、各巻表紙に書かれている言葉だけでも熱くなれるが、内容も期待を裏切らないスケールの大きい型破りなストーリー展開の長編大河ハードロマン。

 表社会での頂点を目指し、国会議員秘書から政治家へのステップを登り始める浅見千秋。裏社会でのしあがり、六本木暴力団組長から関東相楽連合トップをもくろむ北条彰。この二人の若者が主人公。本物の”飢え”を知るこのふたりの男が、無気力日本の表社会と裏社会に殴り込みをかける。東京地方区から連続7期当選の大物政治家である民自党代議士・佐倉秀一の第一秘書を務める浅見千秋は、日本の未来を変えるべく固い意志を胸に、政界へ乗り出そうと行動を開始。既成の政党からはじき出された浅見は衆議院当選に向かって新党を結成し国会議員に当選、過激な言動で政界に荒波を巻き起こす。

 一方、「(ヤクザになった理由を)普通の人間が30年かかるところを一日でやれるから」と答える、関東を仕切る相楽連合・北彰会の若き組長の北条彰は、高2で中退後たった一人で極道をのしあがってきて、相楽連合二代目になり、関東トップの座、更に極道社会の全国制覇を目指していた。「人間の創れなくなった今の日本をひっくり返す」という目的には、「今の日本で若くして政治家になれるのは二世かタレント。今のシステムでは若い人間は政界に入れない。頭の固くなったジイさん達が国を動かしている。何もバックにない人間が20代で政治家になるには、30年の道程を一日でクリアする人間が裏に必要なんだ!」という浅見の存在があった。

 平和大国日本を根底から覆すという夢を共有し固い絆で結ばれている北条と浅見には、少年期にポルポトの暴政虐殺の時代をカンボジアで生きたという共通の悲惨な過去があった。北条の父親は医者、浅見の父親は貿易商として、同じプノンペン郊外の住宅街に住んでいたが、ある日、銃を構えたクメール兵士グループに襲われ、それぞれ家族と引き離され家族とは別のキャンプに送られる。そして過酷な状況の中を生き延び、1年後、北条と浅見の2人の少年は、同じキャンプの仲間達とタイ国境へ向かって脱走を図って生き抜いてきていた。

 日本に戻ったふたりは、無気力そのものであった日本人の姿を見て、日本社会の変革を決意する。浅見のセリフがある。「オレが日本に帰ってきて・・初めて日本人を見た時・・・ こいつら”生きる”って事をどう考えているんだろう・・・ まずそう思った・・・」。またこうもいっている。「オレ達がカンボジアから帰って初めて日本人を見た時、日本人に希望が見えなかったんだ。何が欠けているのか。何が必要なのか。生きた人間を創る。それが二人が出した結論だ!」。六本木署刑事の尾崎も、「オレはね日本に住み日本で生きているから・・今の日本に無性にイラ立つ事があるんスよ!!」と叫んでいる。また選挙活動をする北条が、大勢の人の前でつっかかってきたある酔っ払った選挙民を殴り、「あんた、弱いモノに対しちゃ徹底的に強く出る・・反面、強いモノにゃおそらく媚び、へつらうだろう・・ あんたの姿が、今の日本人、日本という国の姿だ」と語る場面にも、日本や日本人の現状への批判が強く訴えかけられている。

 尚、タイトルの”サンクチュアリ”という言葉については、最終章も含め度々使われているが、巻頭のVol.1でさっそくこの言葉が登場する。まず北条を慕う組員の田代が、クラブ”美々”のママが北条彰を評していた事を、「会長(北条)には絶対に他人に見せない部分がある・・・誰の力も及ばない自分だけの世界・・・聖域(サンクチュアリ)を持っているって・・」と、北条に語るシーンだ。巻頭のVol.1では、更に国会議事堂を見下ろす東京タワー展望台で、「オレは、必ずおまえをあの赤絨毯の上に立たせてみせる!どんなことをしてでもな!そしてオレ達の聖域(サンクチュアリ)を作ってやる・・」と、北条が浅見に語っている。

 東大卒後、国家公務員上級職に合格、年齢27という、六本木署副署長の石原杏子と、北条彰との関係がどう展開するのかも一つの楽しみであるが、なんといっても北条の兄貴分の渡海という、”極道は力”のハチャメチャな爆弾男が最高に魅力的だ。他にも、チンピラ時代に北条と接点があった武山連合・宮村組組長の宮村政伸や「力の前に尾を振るのは簡単だ。振りたくなくても振ってしまえば生きられる。だがな、それは生きているんじゃねェ。生かされているんだよ。力に翻弄され、てめえの意志とてめえの手足で動けなきゃ、屈辱と後悔しか残らねぇ」と叫ぶ沖縄一の極道・中城規介、10年先を見て動く男、神戸山王会4代目を託された伊吹をはじめとする個性的な登場人物には事欠かない。ストーリー展開も、誰一人逆らえる者のいない政界のドン・伊佐岡という民自党幹事長が非常に手ごわく、浅見たちの政界変革の動きも、そう順調には物事が進まないが、今までの政界を取り巻き政治の流れを作り乗っかってきた人たちがいろいろと生々しく描かれ、政治の在り方への関心を高めてくれるはずだ。

 尚、主にポルポト時代のカンボジアでの様子が、左記のように本書の中で度々回想シーンの中で描かれているが、他にも各章の表紙の絵には、カンボジアでのシーンが多く使われている。

メコン圏関連登場シーン
◆第1巻 Vol. 19「難民」
・石原杏子(六本木署副署長)と尾崎(六本木署の刑事)が、浅見と北条の高校時代の担任を見つけ訪ねる場面:英字雑誌に載っていた1976年のタイのカンボジア難民キャンプの写真
◆第1巻 Vol. 20「カンボジア」
・石原杏子と尾崎が、カンボジア関連書籍を調べ、ポルポト政権時について語る場面;
・デパートのオモチャ売り場をオモチャの銃を手に走り回る子供の様子から、北条と浅見のカンボジア時代の回想。

◆第2巻 Vol. 23「ジャンケン」
・石原杏子が、浅見と北条が雑誌に載ったタイのカンボジア難民キャンプの写真を、北条に見せ、北条と浅見との関係についての説明を求める場面:北条が石原杏子に、カンボジアでの少年時代に何が起ったかを語る

◆第3巻 Vol. 52「約束」
・六本木警察署前で狙撃された北条が、現場を偶然通りかかり駆け寄ろうとした浅見(代議士)に対し、2人の約束のサインを右手で示す場面:1970年代後半のカンボジアの強制労働キャンプ時代の回想

◆第4巻 Vol. 68「生き残り」
・民自党幹事長の伊佐岡が外務大臣としてタイの難民キャンプを視察した時の回想
◆第4巻 Vol. 80「勝算」
・浅見と大江との会話の中で、浅見のカンボジア時代の回想
◆第4巻 Vol. 82「真理」
・北条彰がTV出演。カンボジアの日本のPKO参加についての意見を求められる。また、真の意味でのカンボジアという国家の独立を考えた場合何よりも優先して考えなければいけない根本的な問題が教育だと主張。
◆第4巻 Vol. 84「苦闘」
・カンボジアの強制キャンプからタイへの脱出を回想

◆第5巻 Vol. 97「時間」
・カンボジア時代の回想
◆第5巻 Vol. 104「意地」
・カンボジア時代の回想
◆第5巻 Vol. 108「聖域」
・現在のカンボジア

■主たる登場人物
・北条 彰
・浅見千秋
・石原杏子(六本木署副署長)
・尾崎(六本木署刑事)
・大江有紀(浅見の後輩)
・伊佐岡紀元(民自党幹事長)
・佐倉秀一(大物政治家)
・佐倉千代(佐倉秀一の妻)
・佐倉由香(佐倉秀一の娘)
・海野正一 (大東信用金庫六本木支店長)
・松下(区議)
・社民党委員長
・池内(元通算官僚)
・民自党望月総理総裁
・原口賢二(政界のカメレオンの異名を持つ野心家議員)
・鯨井隆(社民党書記長)
・坪田条一(公正党幹事長)
・岡崎三男(民生党委員長)
・大沢晴男(民自党旧金沢派会長)
・法務大臣・河井俊輔
・検事総長・蜂谷義孝
・郵政大臣・鹿浜勇介
・相楽(関東を仕切る相楽連合総長)
・渡海と妻・悠子
・田代と妻子(妻の優美と息子の光一)
・村田
・石塚
・赤間
・木村
・水口
・市島(極道会の陰の支配者)
・塚原(北彰組組員)
・足立(”)
・黄 志陽(香港マフィア)
・今井睦男(関東武山連合総長)
・河津清介(東日本土門会理事長)
・中城規介(沖縄一の極道)
・松田守隆(武山連合松田組長)
・加藤辰巳(武山連合加藤組長)
・宮村政伸(武山連合宮村組長)
・徳田貞幸(武山連合徳田組長)
・飯田(土門会の直系若頭)
・亀井修一(東日本土門会副理事長)
・大西英二
・緒方(神戸山王会3代目)
・岩田浩徳(小倉岩田組総長、九州連合会理事長)
・伊吹英明(神戸山王会No.2で神戸山王会4代目)
・熊谷(警視庁四課長)
・平山 隆(兵庫県警四課長)
・長崎重好(神戸山王会直系長崎組組長)
・大島悠大(神戸山王会直系大島組組長)
・武藤昇一(神戸山王会直系 武藤会会長)
・青木(ブルーワールド会長。若干28歳で巨万の富を手に入れた異才)
・水沢相談役(北都銀行)
・仙石慎一郎(北海道選出の二世議員)
・仙石辰巳(仙石慎一郎の父)
・吉川秀丸(高知選出新人議員)
・狩谷久雄(団塊の世代の代議士)
・ビセット女史(米国大統領補佐官)
・クリフ米国大統
・朝間(先代の仙石代議士の元第一秘書)
・五木(社民新党を結成)
・宗(社民新党)
・武井(法務省の官僚)
・大島浩介(東京地検特捜部部長)
・石垣和義(東京地検特捜部副部長)
・金沢静夫元首相の未亡人
・瀬川(北海道の若き組長)
・ウラジミール・ソロコフ(旧ソ連政府の元高級官僚のロシアンマフィア)
・ザミャーチン(ロシアの若手政治家)
・江 東輝(江一族の総帥で、世界中の華僑の頂点)


■第1巻「飢え」 《ビッグコミックス「サンクチュアリ」第1~3集収録》
Vol. 1.さんくちゅあり  ・Vol. 2.組織   ・Vol. 3.少女  ・Vol. 4.反撃  ・Vol. 5. 虎を噛む  ・Vol. 6. 光と影  ・Vol. 7. ヒーロー  ・Vol. 8.脅迫   ・Vol. 9.爆弾   ・Vol.10. 痛み  ・Vol.11. 摩擦   ・Vol.12. 夢   ・Vol.13. 命(タマ)  ・Vol.14.飢え  ・Vol.15.意志   ・Vol.16. 二代目   ・Vol.17.牙    ・Vol.18 日本    ・Vol.19. 難民  ・Vol.20.カンボジア ・Vol.21.制覇   ・Vol.22. 圧力

■第2巻「戦いの序章」 《ビッグコミックス「サンクチュアリ」第3~5集収録》
Vol. 23.ジャンケン  ・Vol. 24.開国   ・Vol. 25.香港 ・Vol. 26.共存共栄  ・Vol. 27. 王座  ・Vol. 28. 解散  ・Vol. 29. 遭遇  ・Vol. 30.戦いの序章  ・Vol. 31.敵  ・Vol.32. 胎動  ・Vol.33. ケンカ  ・Vol.34. 符牒   ・Vol.35. 総理  ・Vol.36.首  ・Vol.37.抗争   ・Vol.38. 力   ・Vol.39.極道    ・Vol.40 想い    ・Vol.41. 終結  ・Vol.42 決意

■第3巻「カラクリ」 《ビッグコミックス「サンクチュアリ」第5~8集収録》
Vol. 43.狙い  ・Vol. 44.ビセット   ・Vol. 45.号泣 ・Vol. 46.神戸山王会  ・Vol. 47. 五合目 ・Vol. 48. カラクリ  ・Vol. 49.恩讐  ・Vol. 50.ウジ虫  ・Vol. 51.斧 ・Vol.52. 約束 ・Vol.53. 確率  ・Vol.54. 盃事  ・Vol.55. 四分六  ・Vol.56.戦略  ・Vol.57.再編成   ・Vol.58. 覚醒   ・Vol.59.再生    ・Vol.60 魔手   ・Vol.61. 意地  ・Vol.62 襲撃 ・Vol.63 老い ・Vol 64 偶像

■第4巻「生き残り」 《ビッグコミックス「サンクチュアリ」第8~10集収録》
Vol. 65.力には力  ・Vol. 66.ノド元  ・Vol. 67.神輿 ・Vol. 68.生き残り ・Vol. 69. ネズミ ・Vol. 70. 攻守  ・Vol. 71.追及  ・Vol. 72.正論  ・Vol. 73.四代目代行 ・Vol.74. 10年先 ・Vol.75. 意識革命  ・Vol.76. 旧友  ・Vol.77. 暴露  ・Vol.78.記者会見 ・Vol.79.廉潔   ・Vol.80. 勝算   ・Vol.81.表明   ・Vol.82 真理   ・Vol.83. 離党  ・Vol.84 襲苦闘 ・Vol.85 宣言 ・Vol 86 大統領

■第5巻「聖域」 《ビッグコミックス「サンクチュアリ」第10~12集収録》
Vol. 87.叛旗  ・Vol. 88.破壊  ・Vol. 89.ロシアン・マフィア ・Vol. 90.信念 ・Vol. 91. ルール ・Vol. 92. 追跡  ・Vol. 93.教え子  ・Vol. 94.二時間  ・Vol. 95.当選 ・Vol.96. 新会派 ・Vol.97. 時間  ・Vol.98. 選択  ・Vol.99. 同夢  ・Vol.100.主義 ・Vol.101.改革   ・Vol.102. 銃弾   ・Vol.103.弱肉強食   ・Vol.104 意地   ・Vol.105. GOOD  ・Vol.106 回り道 ・Vol.107 公選制 ・Vol 108 聖域

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