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メコン圏に関する中国語書籍 第3回「云南境内的少数民族」(主编: 谢蕴秋、副主编: 李先绪,民族出版社)
- 2003/8/10
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メコン圏に関する中国語書籍 第3回「云南境内的少数民族」(主编: 谢蕴秋、副主编: 李先绪,民族出版社)
「云南境内的少数民族」(主编: 谢蕴秋、副主编: 李先绪,北京: 民族出版社, 1999年4月発行)
1995年、雲南省社会科学院の重点課題として、「雲南境内少数民族」のデータベース構築作業と専門書発行が取り上げられ、本書は、この課題に取組む7名の研究員による3年余りの作業の成果をとりまとめた書籍で、北京の民族出版社から1999年5月第一版が刊行された。760頁にわたる書籍で、文字通り雲南省に居住する少数民族について各民族別に、人口、自然、経済、風俗民情、宗教、文化、衛生、教育など各方面の多種の情報やデータが収められている。
よく知られるように雲南省は、いろんな少数民族が多数住む多民族の省であるが、本書によれば、現在中国の56の公定民族(漢民族を含めて)のうち、雲南省には52の民族が住み、そのうち、人口が4,000人以上で、且つ一定の集住が見られる民族は26の民族、更にこのうち雲南省特有の少数民族は15の民族で、雲南省は中国全国で省区特有の民族が最も多い省区となっている。ただ雲南省特有の少数民族といっても、中国内での雲南特有ということであって、中国を越えてミャンマー、ベトナム、ラオス、タイなどメコン圏各地に散らばる民族も少なくない。雲南省に居住する26の民族のうち、中国外のメコン圏諸国にも居住する民族は、タイ族、チンポー(景頗)族、ワ族、プーラン(布朗)族、トールン(独龍)族など16の民族に及ぶ。
■雲南省に居住する26の民族と、雲南省特有(中国内)の15の少数民族(赤字表記)
漢族、イ族、ペー(白)族、ハニ(哈尼)族、タイ族、チワン(壮)族、ミャオ(苗)族、リス族、回族、ラフ族、ワ族、ナシ(納西)族、チンポー(景頗族)、プーラン(布朗)族、アチャン(阿昌)族、プミ(普米)族、ヌー(怒)族、ヤオ(瑤)族、チベット(蔵)族、ドアン(徳昂)族、ジノー(基諾)族、スイ(水)族、モンゴル(蒙古)族、プイ(布依)族、トールン(独龍)族、満族
本書掲載の内容については、各少数民族ごとに、人口概況、民族簡況(自称他称、族源支系、語言文字、分布、歴史)、自然概況(地域状況、気候条件、自然資源、地方物産)、経済概況(伝統生産方式、産業構造)、文化民俗(伝統文化、名勝古跡、観光景勝地、宗教信仰、現代文化体育施設)、教育衛生(教育概況、医療衛生)と広くあらゆる分野に及んでいる。しかも各データは、単に民族ごとだけでなく、それぞれの民族の分布地区、民族自治地方行政区分ごとに分けられてもいる。文化民俗の伝統文化の項も、その説明は服飾、飲食、建築、婚姻家庭、生育習俗、葬俗、祝祭、文学芸術、民族体育と多岐にわたっている。
社会経済データや民族誌も詳細に広く書かれているが、各民族の歴史の記述で、”反帝反封建闘争”の項が設けられており、あまり知られていない各少数民族の武装闘争についての紹介がある。哀牢山イ族反清起義、杜文秀起義と大理革命政権、1817年の紅河地区ハニ族武装起義、1659年の元江タイ族人民抗清闘争、ミャオ(苗)族の咸同起義などといった清朝に抵抗した各民族の闘争の歴史も大規模なものだけでなく取り上げられているが、馬嘉理事件(1875年)など西側諸国の帝国主義侵略への反対闘争についても触れられている。
雲南省特有の15の少数民族について重点的に取り上げているとあとがきに書かれているが、割かれた頁数でいえば、漢族以外で雲南省に住む民族で人口が一番多い(419.56万人:1995年)イ族についての説明が62頁と一番多い。イ族は四川省や貴州省にもいるが、雲南イ族は雲南省内では楚雄イ族自治州、紅河ハニ族イ族自治州を中心に居住地域は各地に分散している。雲南省に居住する25の少数民族の中で、一番人口の少ない民族は、約6千人(1995年)のトールン(独龍)族で、中国内では雲南省特有の民族で、大部分が雲南省西北部の怒江州貢山独龍族怒族自治県に居住。ただ中国から移住したとみられるトールン族がミャンマー北部にいて、その数は約2~3万人と推定されている。
本書の面白いところは、雲南に居住する上記の25の中国政府公定の少数民族だけでなく、更に未だ族源、族系、族属が確認されず中国政府の公定民族となっていない克木人と芒人についても、他の民族と同じようにそれぞれ独立の章で、民族概況、社会経済概況、文化民俗などについての紹介説明が行われていることだ。西双版納タイ族自治州内に約2,500人強(1987年)住む中国内で”克木人”であるが、中国だけでなく、ラオス、ベトナム、ミャンマー、タイ、カンボジアにも40万人以上居住し、そのうちの主要居住区はラオスだ。ラオス三大族系ラオ・トゥン(中国語では”老听族系”)の中の一つの単一民族として認められているカム族のことだ。約4.2万人が住むベトナムでは1982年3月、”Kho Mu”族と正式に命名されている。また、総人口70万人強の”芒人”については、その主要居住地はベトナム北西部(Muong族)であるもののの、中国領内の芒人は非常に少なく紅河ハニ族イ族自治州金平県に300人(1992年)とされる。
またかつて元朝、清朝の支配民族であった蒙古族、満族も、雲南省に住む25の少数民族の中に数えられているが、雲南蒙古族、雲南満族というのは興味深い。蒙古(モンゴル)族については、雲南省の蒙古族の人口は3,148人(1990年第4次人口調査)。玉溪地区通海県興蒙蒙古族郷が蒙古族の伝統的な居住区で、元朝が南宋を攻略する戦略要地として当時、大理国が支配する雲南に攻め入り大理国を滅ぼし蒙古族が雲南に入植したという歴史沿革に由来する。
各少数民族の多方面にわたる詳細な説明紹介に加え、本書巻頭には、25の雲南少数民族のカラー写真や、付録にデータ・資料類も収められている。7つの地区、8つの少数民族自治州、2つの省轄市、14の地州轄市、80の県(そのうち29は民族自治権)から成る雲南省行政区画(1995年)【付録1】、雲南省民族自治地方行政区画(1995年末)【付録2】、雲南省少数民族自治権分布状況(1995年末)【付録3】、雲南省少数民族自治地方基本情況(1996年)【付録4】、雲南省少数民族人口分布(1990年第4次人口調査)【付録5】、雲南省民族人口数及び全省人口に占める比率(1995年統計データ)【付録6】、雲南省少数民族源流表【付録7】、雲南省少数民族言語系属の説明【付録8】と、巻末の資料データ類も充実している。
本書掲載の関連データ
■雲南省の少数民族総人口
1,323.8万人(1995年)。
雲南省全省総人口の33.18%を占め、少数民族人口は、広西壮族自治区に次いで、中国全国第2位。
漢族以外で雲南に居住する人口4,000人以上の25の少数民族中、
・人口100万人以上は:イ族、ペー(白)族、ハニ(哈尼)族、タイ族、チワン(壮)族、
・人口50万人以上は:ミャオ(苗)族、リス族、回族
・人口10万人以上は:ラフ族、ワ族、ナシ(納西)族、チンポー(景頗族)
その他の少数民族は人口10万人以下
■雲南省の少数民族地方行政区
◆8の民族自治州
・楚雄イ族自治州(1958年4月建立)
・紅河ハニ族イ族自治州(1957年11月建立)
・文山チワン族ミャオ族自治州(1958年4月建立)
・西双版納タイ族自治州(1953年1月建立)
・大理白族自治州(1956年11月建立)
・徳宏タイ族景頗族自治州(1953年7月建立)
・怒江リス族自治州(1954年8月建立)
・迪慶蔵族自治州(1957年9月建立)
◆29の民族自治県
・禄勧イ族ミャオ族自治県 ・路南イ族自治県 <以上、昆明市>
・尋甸回族イ族自治県 <曲靖地区>
・峨山民族自治県 ・新平イ族タイ族自治県 ・元江ハニ族イ族タイ族自治県 <以上、玉溪地区>
・金平苗族瑤族タイ族自治県 ・屏辺苗族自治県 ・河口瑤族自治県 <以上、紅河ハニ族イ族自治州>
・普洱ハニ族イ族自治県 ・景東イ族自治県 ・景谷タイ族自治県 ・墨江ハニ族自治県 ・孟連タイ族ラフ族ワ族自治県 ・瀾滄ラフ族自治県 ・西盟ワ族自治県 ・江城ハニ族イ族自治県 ・鎮沅イ族ハニ族ラフ族自治県<以上、思茅地区>
・漾濞イ族自治県 ・南澗イ族自治県 ・巍山イ族自治県 <以上、大理白族自治州>
・麗江納西族自治県 ・寧 イ族自治県 <以上、麗江地区>
・貢山独龍族怒族自治県 ・蘭坪白族普米族自治県 <以上、怒江リス族自治州>
・維西リス族自治県 <以上、迪慶蔵族自治州>
・双江ラフ族ワ族布朗族タイ族自治県 ・耿馬タイ族ワ族自治県 ・滄源ワ族自治県 <以上、臨滄地区>