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日本の有意義な国際協力関与が求められる大メコン圏地域開発

タイの高度経済成長と冷戦構造崩壊を背景に、1988年のチャチャイ首相(タイ)による『インドシナを戦場から市場へ』のメッセージが生まれ、タイを中心とする新しい経済圏の誕生として『バーツ経済圏』という言葉が使われた。一方、19世紀半ばにフランスにより始められ、第2次世界大戦後、国連主導の下に進められたメコン河下流域開発計画は、インドシナ諸国の政情激変で停滞していたが、1995年に下流4カ国にてメコン河委員会が発足した。河川開発利用の国際協力が再開することになり、近い将来、ミャンマー、中国の加盟も期待されている。

またアジア開発銀行(ADB)が中心となり、1992年から6カ国を開発対象に、河川流域開発のみならず地域開発として、大メコン地域開発計画を策定し推進しようとしている。域内協力分野としては、交通・運輸、エネルギー、人材開発、環境、観光等が挙げられ、交通・運輸については、ADBにて動脈道路建設・改善(左図参照)や、鉄道網整備、空港整備等が計画されている。鉄道についてはマレーシアの提唱で、1995年アセアン首脳で承認されたトランス・アジア鉄道プロジェクトが話題を呼んだ。これはシンガポールから雲南省・昆明間での鉄道計画で、複数ルートが検討されている。更に超高速列車が導入されれば、バンコクから2時間以内でプノンペン、ヴィエンチャンに、3時間以内ではホーチミン、ヤンゴンまで往来できることになる。

ただ、メコン圏地域開発は関係機関・国の調整が容易ではなく、それぞれの計画が整合され検討の成果が共有される必要があることや欠乏がちのデータの整備の問題が、当初から指摘されている。加えて昨年(1997年)からのアジア通貨・経済危機により、関係国の予算計上や、期待されていた民間資本の積極参加に大きな困難が生じてきている。

経済・社会インパクトが大きく、地域の安定・発展をもたらすことが期待されるメコン圏地域開発に、日本は、資金・技術面で当事国・地域より強い期待を持たれている。日本は、単なる資金援助や、開発関係者だけに益がある形では無くて、この多国間の地域圏開発に、広く農業基盤・社会基盤・環境・人材開発までも視野に入れた建設的な協力関与が、どう展開していけるか、今後の推移が注目される。

再度期待されるアジア企業家による地域経済発展推進の役割

メコン圏の各国は、昨年(1997年)のアジア通貨経済危機の余波もあり、外貨準備高減少、通貨価値下落、外国投資減少など、厳しい経済運営を強いられている。一方、米をはじめとする農産物や水産資源などの国際輸出市場では、タイ・ベトナム・ミャンマー間で競合しあい、また低廉労働力を売り物とする外資誘致についても各国間で競合となる。

一方、当該圏内の国境貿易は各国の開放経済政策もあり、これまで順調に数字を伸ばしてきたが、厳しい経済状況のために、特に入超にある国では輸入制限を課すとともに、外貨管理も強化する方向に動いている。特に外貨準備がかなり減少しているミャンマーでは、昨年(1997年)11月よりの国境貿易制限、更に外国製消費物資の輸入禁止などの措置が取られている。また昨年7月(1997年)の武力政変より国境付近で武力衝突が起こっているタイ=カンボジア国境でも、合法な貿易額は減少しており、密輸と言う形ではない国境貿易の正常な回復が求められている。

同圏内の投資については、日・欧米からの投資もさることながら、やはりタイをはじめマレーシア、シンガポール、韓国、台湾等のアジア資本のこれまでの存在を抜きにできない。数年前から最後の投資の楽園とか残された処女地などと称されて、インドシナ諸国・ミャンマーが騒がれ、各国より多くの投資・経済視察ミッションを誘った。しかし、効率の悪い官僚主義、蔓延る汚職、不整備な法制度とインフラなど、投資環境のマイナス面も語られるようになり、投資フィーバーもすっかり冷めたようだ。昨年(1997年)からの自国通貨・経済危機で、特にタイ・韓国企業の同地域からの撤退・事業規模縮小が相次いでいる。

しかし、アジアの企業は、今回のアジア経済危機でその強固ではない経営体質や過信気味の積極体質、甘い事業計画見通しなどが浮き彫りになった感はあるが、企画創造、情報収集、人脈網、迅速で金のかからない対応・決断・推進などの点では過少評価すべきではないと思う。メコン圏での事業展開を積極的に図ってきたタイ企業はこれまでも少なくなかったが、強いミッションとパッションを持った一味違った起業家的企業人もいた。メコン圏での地域経済発展には、進取の精神のあるアジア企業家の再度の活躍が待たれる。

更にメコン圏も遅れて組み込まれるアセアン自由貿易圏のCEPT・AICOの特恵関税協定の実効が注目される。またグローバルな事業展開をする個々企業の視点からは、メコン圏ひいては東南アジア地域全体のオペレーションセンターをどう設定し、アジア地域全体での生産分業や市場・販売・人材活用・サービス体制での戦略をどう練っていくか、各企業の対応が見ものだ。

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