石寨山古墓群遺跡

2002年3月掲載

雲南古代の滇王国とその青銅器文化の存在を2千年以上の時を経て実証した王墓群発見

石寨山全景、山の西側の滇池の方角から。2002年2月

石寨山(ShiZhaiShan)は、昆明から約40キロ南にある雲南省晋寧県上蒜郷にあり、南北に長さ500メートル、東西に最も広いところで200メートル、高さは33メートルという石灰岩から成る小さな山(海抜1919メートル)。東経102度42分、北緯24度43分の位置で、滇池の東岸にあり、その距離は約1キロという近さ。山の東(滇池から離れる方向)には約5キロ離れたところに晋城の町がある。

石寨山頂から、西に滇池を見下ろす。2002年2月

この滇池の東南部ほとりの小さな山で、1950年代後半考古学上の大発見があり、いちやく石寨山の名前が広く知られるところとなった。この小さな山は北が高く南が低く、山の東側には現在石寨村(約200余戸)があるが、この村の西の山頂で、戦国時代末期から前漢時代初期に全盛時代を迎えた古代雲南の滇王国の王墓群と貴重な数々の出土品が発見された。

『史記』「西南夷列伝」をはじめ、『漢書』「西南夷伝」、『華陽国志』「南中志」、『後漢書』「西南夷伝」などに古代雲南の滇王国の記述はあるものの、その実態については、従来は漢族の文献史料にしか頼るものはなかったが、この石寨山古墓群の発掘調査で、文献史料での記述が実証されるとともに、滇王国の文化の実態が、次第に明らかになった。

発掘は、これまで以下の通り、5回にわたって行われているが、特に大規模なものは、1956年から57年にかけて行われた第2次発掘。この時は、20座の墓を発掘し出土した文物は4,000件以上といわれ、元封2年(紀元前109年)、前漢の武帝が滇王に下賜したとされる「滇王の金印」も、この第2次発掘時の6号墓より発見された。

◆第1次発掘: 時期は1955年3月
2座の墓を発掘(M1-M2)

◆第2次発掘: 時期は1956年11月~1957年11月
20座の墓を発掘(M3-M22)

◆第3次発掘: 時期は1958年冬
12座の墓を発掘(M23-M34)

◆第4次発掘: 時期は1960年4月
16座の墓を発掘(M35-M50)

◆第5次発掘: 時期は1996年5月~6月

この金印以外にも、大型の貯貝器や銅鼓を含む大量の青銅器が発見され、雲南青銅器文化が発達していた事が明らかになるとともに、これらの青銅器などから、当時の滇王国の生活文化や宗教儀礼などを知る事ができた。

この遺跡の発見のいきさつについては、1953年に汪という古物商が何点かの青銅器を、雲南省博物館に鑑定を依頼してきたのが発端。関係者の注目を集め一時はいろいろと調べるも、どの地方から出土してきたものかがわからず、一旦棚上げとなった。それから1年以上経った時、偶然太平洋戦争時、晋寧県で土地の農民が青銅器を発見していたという話を聞き及び、1954年秋、雲南省博物館は研究員を晋寧県に派遣し調査したところ、青銅器の出土地点が石寨山であったことを探し当てた。青銅器の出土地点が明確になったので、雲南省博物館は、石寨山で正式に試掘を行う事を決定。孫太初ら3人のメンバーによる発掘チームで1955年3月、第一次発掘が行われた。

石寨山古墓群は、1965年、雲南省人民委員会により第一級省重点文物保護単位に指定され立入禁止になっており、特に遺跡地としての整備はされていない。2002年2月

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